第6話:近づく距離 ― 星の導き ―
朝の森は、昨日よりも静かで、朝露が葉先に光っていた。リアは小屋の外で軽く伸びをしながら、胸のざわつきを感じていた。昨日の出来事、レイの無骨な優しさ、そしてその微妙な距離感が、まだ心に残っている。
「…今日もまた、ドキドキする」
小さく呟くリアに、森の静寂が優しく応えるようだった。
その日、森の中で食料を探していた三人は、突然、足元の土が崩れ、リアが滑りそうになる。咄嗟にレイが手を伸ばして彼女を支え、体が近づいた瞬間、二人の視線が絡む。
「…危ないだろ」
レイの声は低く、無骨ながらも心配がにじんでいる。リアは顔を赤らめ、小さく頷いた。
「…ありがとう、レイさん…」
その光景を見たガイは、少し離れた木陰から目を細める。
「…やっぱり、兄さんはリアのことを…」
胸の奥に、微かな嫉妬と複雑な感情が湧き上がる。
森の奥で小さな小川を見つけ、三人は休憩することにした。リアが水をすくおうと手を伸ばすと、またしてもレイが自然に手を添える。二人の手が触れた瞬間、リアの心臓は跳ね、頬は真っ赤に染まった。
「…お前、ほんと不器用だな」
レイの声は苛立ちと優しさが入り混じり、リアは胸をぎゅっと締め付けられる。
ガイはその様子を黙って見守りながら、心の中で葛藤する。
「…俺は兄さんを…? いや、リアに嫉妬してる…?」
初めて自分の感情を認めた瞬間、胸の奥がざわついた。
夕方、森を抜けて小屋に戻る頃、リアは少し勇気を出してレイに話しかけた。
「…レイさん、さっきはありがとう。助けてくれて…」
レイは肩をすくめて無言で微かに笑う。
その笑顔に、リアの心はさらにときめいた。
夜、暖炉の火が揺れる小屋の中で、三人の距離はさらに微妙に変化する。リアの心はレイに向かって静かに傾きつつあり、ガイもまた、その変化に胸を締め付けられる。
星空の下、森の風が三人の運命を優しく揺らす――甘く、切なく、まだ見ぬ恋の予感を残して。




