第5話:初めての距離 ― 心の揺れ ―
朝日が森を染めるころ、リアは小屋の外で小鳥のさえずりに耳を傾けていた。昨日の衝突から一夜明け、心はまだざわついている。あのぶつかり合いの瞬間、レイの無骨な優しさを感じた胸の高鳴りは、思った以上にリアをときめかせていた。
「…ああ、どうしてこんなに胸が苦しいんだろう…」
不器用な自分を、少しだけ責めながらも、リアは小屋に戻る。
その時、背後から足音が近づく。振り返ると、レイが黙って立っていた。彼の表情は昨日の苛立ちよりも、わずかに柔らかい。
「…手伝うぞ」
突然の言葉にリアは少し戸惑う。
「え、あ、ありがとう…」
口ごもるリアに、レイは軽く肩をすくめる。無骨だが、どこか優しい雰囲気を漂わせている。
作業を進めるうち、リアは少し勇気を出して、レイに話しかけた。
「昨日のこと…ありがとう、レイさん。助けてくれて」
レイは手を止めず、ただ微かに眉を上げる。
「…別に、俺は面倒だと思っただけだ」
不器用な返事に、リアの頬はほんのり赤くなる。
その様子を、少し離れたところでガイが観察していた。兄の微妙な表情の変化に気づき、胸の奥がざわつく。
「…やっぱり兄さん、リアのことが気になるんだな」
ガイは小さくため息をつき、思わず目を細める。自分でも気づかぬ嫉妬が芽生えていた。
昼が過ぎ、森の中で休憩する三人。リアがふと、木漏れ日の中でレイと視線を合わせる。互いに無言だが、胸の奥で何かが通じ合ったような気がした。
「…リア、お前、本当に不器用だな」
レイの声には苛立ちも含まれているが、どこか愛情めいた響きがある。リアは照れ笑いを浮かべ、何も言えない。
夜、暖炉の火の前で座る三人。リアは心の奥で、自分が少しずつレイに惹かれていることを自覚する。
そしてガイもまた、兄とリアの距離が縮まるのを黙って見守りながら、複雑な心境に胸を締め付けられるのだった。
森の外に瞬く星々は、三人の微妙な関係を静かに照らしている。甘く、切なく、ときに胸が締め付けられるような時間が、ゆっくりと流れていった。




