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第2話:初めての衝突 ― ふたりの距離 ―



森の小屋で迎えた朝は、夜の湿気を残しつつ、薄明かりが窓から差し込んでいた。

リアは簡単な朝食を準備しながら、まだ眠そうなレイとガイを見た。二人とも昨夜の傷がうっすらと残っている。


「もう大丈夫ですか?」

リアが尋ねると、レイは眉をひそめ、少しムッとした表情で答えた。


「…ああ、大丈夫だ。お前、そんなに心配性か?」

「え…? だって、助けたんですから」

リアの声は小さく、少し震えていた。それでもまっすぐにレイを見つめる。


レイはその真っ直ぐな瞳に、なんとも言えない苛立ちを覚える。

「…面倒な奴だな」と呟き、無理やりそっぽを向く。

その様子を、ガイは静かに観察していた。冷静な目が、兄の微妙な感情の変化をすぐに読み取る。


朝食を終え、リアが片付けをしている間、レイはそっと立ち上がり、窓の外を眺めた。

「…俺、今日中にここを出る」

突然の言葉にリアは驚き、慌てて声をかける。

「えっ、でも…怪我はまだ…!」


レイは振り返ることなく、少しだけ眉を寄せる。

「心配すんな。お前は関係ない」

その冷たさに、リアの胸はぎゅっと締め付けられた。

不器用でまっすぐな心が、初めて「悔しい」と思った瞬間だった。


一方、ガイは微かな眉の動きだけで兄とリアの距離感を測る。

「…ふたりとも、まだ自分の気持ちに気づいていない」

静かに、しかし確実に、胸の奥に嫉妬にも似た感情が芽生え始める。


昼が過ぎ、森の外に出る頃、リアはふとレイに声をかけた。

「…少し、手伝ってくれませんか?」

レイはふいに振り返ると、微かに笑った。

「…仕方ないな、教えてやるよ」

その言葉に、リアの心は跳ねた。

小さなやり取りの中で、二人の距離がほんの少しだけ縮まったことを、リアは感じた。


夜、暖炉の火の前で座るリアを見つめるレイ。

「…面倒な奴だと思ったのに、気になるじゃねぇか」

リアは赤くなり、そっと目を逸らす。

その瞬間、ガイはそっと肩を落とした。

「…兄さん、やっぱりそうなのか」

心の中で、兄とリアの関係が自分の想像以上に動き出していることを感じ取り、静かに葛藤する。


その夜、森の小屋の外に瞬く星々が、三人の運命を静かに見守っていた。

リアの心はまだ不器用で揺れていたが、レイと触れ合った短い時間で、少しずつ“甘い予感”が膨らみ始めていた。

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