第3話:揺れる心 ― 無骨な優しさ ―
朝の光が森の小屋に差し込み、リアは目を覚ました。窓の外には昨日よりも澄んだ青空が広がり、木々の葉はまだ雨の滴で輝いている。リアは体を起こし、昨夜のことを思い返した。小屋での温かなひととき、レイの無骨な優しさに触れた瞬間の胸の高鳴り。
「…こんなことで胸がドキドキするなんて、私、不器用すぎる…」
小さくため息をつき、リアは自分の手を握りしめる。今日も双子たちは小屋の中で身支度をしている。ガイはいつも通り冷静に、そっとリアを観察していた。一方のレイは、相変わらずぶっきらぼうだが、昨日よりも少しだけ表情が柔らかいように感じられる。
「…手伝うぞ」
レイの声にリアは驚き、振り返ると、少し乱れた髪を払う彼の仕草が無骨ながらもどこか優雅に見えた。
「え…ありがとう…」
照れくさい気持ちを押し隠し、リアは小さく返す。
二人の距離は昨日よりも近く、何気ない動作や言葉の端々に互いの気配が感じられる。リアの心は、無意識にレイへと引かれていった。
一方、ガイはその様子をじっと見ていた。兄のレイが少しだけ笑顔を見せる度に、心の奥で微かに嫉妬の感情が芽生える。ガイは冷静に振る舞おうとするが、リアに向ける視線にはわずかな複雑さが滲む。
午後、森の小道を三人で歩く。リアは慎重に歩きながら、ふとレイの肩に触れそうになる瞬間があった。レイは軽く身を引くが、何も言わず、そのままリアの手をそっと認めるような視線を送った。
胸の奥が熱くなる。リアは自分の心臓の音を聞くように、息をひそめた。
「…レイ、ありがとう」
不器用な言葉でも、精一杯の想いを込める。
レイは無言で微かに眉を上げる。それだけの仕草に、リアは心を持っていかれる。
その夜、暖炉の火が揺れる小屋の中で、三人の距離はさらに微妙に変化していた。リアの心はまだ不器用に揺れているが、レイの無骨な優しさは、確実に彼女の胸を温めていた。
そしてガイもまた、静かに、自分の感情が思った以上に揺れていることを自覚するのだった。




