第8話 鋼鉄のクモ
崩壊したビル街は奇妙な白い霧に包まれつつあった。
鋼鉄の緑グモを従えた金髪少女マイヤは、生徒達に号令する。
「皆さん! 霊装を展開してくださ~い! 霊装展開!」
「「「はい! 霊装展開!」」」
マイヤを筆頭に生徒達が白い光に包まれると、その装いを学生服から白い着物に変えていた。手には槍や刀から弓まで様々な武器が握られている。
霊装とは、霊術と同じく霊能力の一種。
霊能力者は霊力を外装としてまとい身を守ったり、武器に変えて攻撃することも可能なのだ。
万能パワーである。
御札を片手に依頼主の横で控えているアゲハだけは巫女服のままだが、グリーンのブレザーを着た学生達に混ざっていたときよりも仲間はずれ感は薄れていた。
「訓練通りにすれば大丈夫です! 四号を囲んで輪形陣!」
「「「は~い!」」」
輪形陣とは上から見て円状に並ぶ陣形のことである。
食い破られない限りは、お互いにフォローしやすく防御に強い陣形といえるだろう。
背後という最大の死角を減らせるのも大きい。
慣れた様子で鉄グモの周りを囲った生徒達は、展開された脚部の近くに立って武器を構えた。
あれでは鉄グモが動けないと思われるが大丈夫なのだろうか。
生徒達が配置についた直後、辺りに連続で重量物が落下した音がひびき、白い霧の中からボロ布を被った人々がゾロゾロと現れた。
音もなく近づいてくる人々には、足もなく。
自由に高さを変えて、多数による面制圧を仕掛けてきた。
高低差のある攻撃は人類の弱点である。
空飛ぶボロ布という弱そうな見た目をしているクセに、なんとも頭脳派な戦術をとる連中だ。
「厄介な! 四号! 風術の二で敵陣を崩して!」
『多重詠唱起動・”駆け抜けるは退魔の風”風術の二・風衝』
対するマイヤが鋼鉄のクモに汎用霊術を指示すると、機械音声で完璧な詠唱をしてみせた。すると各脚部で動いていた金属棒がスパークし、上から強襲せんとする幽霊達に強烈な突風を放った。
力ある風が周辺に吹き荒れて、幽霊達は吹き飛ばされる。
「機械式神か~っ! 流石はボス、お金有るなぁっ!」
混乱する幽霊の群れに紅白の巫女が突入する。
機械グモの正体に気が付いた彼女は、うらやましそうな様子で幽霊達を手足の一振りで引きちぎった。あまりの早業にうらめしやと言う間もなかったであろう。
残ったのは力ある風に吹き飛ばされ、フラフラと浮遊を維持するのがやっとのもう死んでいるのに死にそうな幽霊達のみだ。




