第2話 怪力巫女
暴走巫女アゲハの言うとおり、裸電球一つで照らされた社務所内は汚かった。
汚いと表現するレベルを超えていた。
天井近くまで積み上げられた段ボールは城壁のよう。足の踏み場どころか、人が入れるのかも怪しいゴミ屋敷である。
「ええっと~、何というか、物でいっぱいのお部屋ですね?」
「あはははは! 住めば都って奴だねっ! でも、来客用の机が埋まっちゃってるなぁ」
金髪少女の奥ゆかしい言葉を聞いて爆笑した黒髪巫女は、段ボールの城壁へ気負う様子もなく歩み寄る。この城壁、机さえ埋めてしまうとは、どれほどの奥行きと量があるのだろうか。恐ろしき都である。
「あの~私もお手伝いを……」
「大丈夫、すぐに片付けるからっ!」
ゴミ屋敷に連れ込まれた被害者であるというのに、その片付けの手伝いを申し出る金髪少女。少々人が良すぎる彼女の将来が心配だ。
そんな申し出を断わったゴミ屋敷の巫女は、なんと段ボール城壁の真ん中あたりを持ち、まとめて持ち上げてしまった。
何という怪力であろうか、しかも一山を移動させただけでなく同じ調子でドンドン移動させていく。
「えぇ……」
「待たせたねっ! ささ、座って座って! ちょうど良くお茶セットも発掘できたし! お茶っ葉は無いけど……」
目まぐるしく変わっていく部屋に金髪少女が呆然としている間に、傷だらけのローテーブルを挟んだソファーのセットが用意されていた。
いつの間にか入り口は段ボールの城壁に埋まっており、退路はない。
この手際の良さと大量の荷物を動かした割に少ない埃からして、日常的に段ボールの城壁を動かしながら生活しているのだろう。
無駄に高度かつ無意味な怪力の活かし方である。
それとも、これは彼女なりのトレーニング方法なのであろうか。
どちらにしても、常人にオススメできないという点は共通している。
要するに、この巫女は普通じゃない。
「さて、ビジネスの話をしようか!」
普通じゃない怪力巫女は大きな裾から水筒を取り出すと、トントンと並べた茶碗にお湯を注いだ。
何故そんなところに水筒を入れているのだろうか。謎である。




