第1話 大部神社へようこそっ!
ボロい神社が夕暮れに赤く照らされて、周囲の紅葉と同じく色づいている。
同じなのは色だけではない。あまりにもボロい神社は恐らく近いうちに地に帰るのだろう。紅葉と同じように。
そのような未来図が容易に想像できるほど、ボロいという表現が似合う神社であった。
そんなボロい神社の鳥居前に立つのは、深緑のブレザーを着た金髪の少女。
参道の端に立ち、物珍しそうに周囲を見回した彼女は、意を決した様子で鳥居をくぐると何度か深呼吸した後、口に両手を添え声を張り上げた。
「ごめんくださ〜い! 大部アゲハさんはご在宅でしょうか? お力をお借りしたくて参りまし」
言葉を言い切らないうちにスパンと社務所、神社の雑務をする場所の木製の戸が開くと、中から紅白の巫女服を着た黒髪少女が転がり出てきた。
「大部神社へようこそっ! 霊障ですかっ!? 幽霊トラブルですかっっ!?」
「えっ!? ええ!?」
呆気に取られている金髪少女の前に着地してサッと両手を広げた黒髪巫女は、ニッコリ笑顔で歓迎の挨拶から要件確認のワンツーコンビネーションをキメる。
突然始まった会話のボクシングに、たまらずズリズリと鳥居の外側へ後ずさりする金髪少女。
「この私、霊能力者・大部アゲハにお任せくださいっっっ!」
神域の外であろうが知ったことかとヌッと距離を詰めた黒髪巫女は、自己紹介まで息継ぎなしにやりきった。決まり手は鳥居インザフェイスである。
「ええと……。霊能力者というか……巫女さん?」
「まあ、詳しいお話は中でお聞きしましょうっ!」
混乱する金髪少女の背後に一瞬の早技で回り込み、シワひとつないブレザーの肩をガシッとつかんだ暴走巫女は、自分が出てきた社務所へ押し込んでいく。
「ちょっと!? 押さないでください!? 靴を脱ぎますから!」
「まあまあ、汚いところですし土足で結構! ここまで来るのも大変だったでしょう? 白湯でも出しますよっ! お茶はないので……」
最後の一言だけ小さな声で言った巫女が後ろ手でスパンと社務所の戸を閉めると、寂れた神社は夕闇に沈んでいく。
その様子はまるで、ゆっくりと閉じられる捕食者の顎のようであった。
お客様一名ご案内である。




