第十六章:それぞれの半年後と、深層への新たな歩み
16-1 狂気の結実と、次なる大戦への布石
あのリルムント付近の街道での夜明けと、キースが謎の失踪を遂げてから数日後。
隣国ブルームバーグ帝国の地下深くに建造された、極秘の軍事実験施設。
「あ、あああぁぁぁっ! 嫌だ、やめ、やめてくれェェェッ!!」
薄暗い石造りの牢獄の奥から、人間のものとは思えない絶叫が響き渡る。
強烈な血の匂いと、腐肉の悪臭、そして薬液の鼻を突く刺激臭。そこは、まさにこの世の地獄と呼ぶにふさわしい光景だった。
鉄の拘束具で台に縛り付けられているのは、帝都から搬送されてきた奴隷や、罪人たちだ。彼らの肉体は無残にも切り開かれ、そこへ生きた魔獣の細胞や臓器が強制的に埋め込まれていく。
その凄惨な実験室を、分厚い魔力ガラス越しに見下ろす監視室があった。
第七騎士団の隊長であるオスカーは、無表情のまま腕を組み、眼下で繰り広げられる惨劇を冷ややかに見つめていた。
「被検体72号、魔獣細胞の定着を確認。……やりました!人間の自我を維持しています。」
白衣の錬金術師が歓喜の声を上げた直後、鎖に繋がれた合成魔獣が、異様に肥大化した筋肉を震わせて咆哮を上げた。ただの魔獣の咆哮ではない。その口元に異常な熱量を持った魔力が収束し、高圧の火炎のブレスが形成されていく。
「なっ……魔物を合成した人間が、魔法の術式を構築しているだと!?」
「貴重な成功体だ、絶対に殺すな! 麻酔で制圧しろ!」
錬金術師の指示を受け、兵士たちが捕縛用の道具を構えてなだれ込む。しかし、キメラの放った猛烈な火炎は石壁を容易く融解し、兵士の甲冑ごと彼らを焼き尽くした。
明確な殺意と知性を持った魔法攻撃。それは、単なる力任せの魔獣とは次元の違う「完璧な殺戮兵器」の誕生を意味していた。
「威力が想定外すぎる! 檻が溶かされるぞ!」
パニックに陥る現場だったが、最終的に高濃度の麻酔ガスが石室に大量に流し込まれ、数人の犠牲と引き換えにキメラはようやく深い眠りについた。
「……素晴らしい」
オスカーはガラス越しにその光景を見届け、低く満足げに笑った。
「オスカー隊長。アステリア王国の潜入部隊より、報告が上がりました」
背後から歩み寄ってきた副官が、硬い声で書類を読み上げる。
「コンラッドの消息ですが……先日、彼が最後に魔力通信を送ってきたリルムント付近の街道にて、周囲を消し飛ばす巨大な爆発の痕跡が確認されました。現場の状況から推測するに……あの未知の魔道具を所持していた冒険者パーティーとコンラッドは、至近距離での爆発に巻き込まれ、消滅した可能性が高いと結論付けられました」
「……そうか。ご苦労」
オスカーは短い言葉で副官を下がらせた。
(コンラッドが敗れたか。だが、あの広域殲滅の魔道具を持つ不確定要素がこの世から消え去ったのは、我々にとって都合の良い結果だ)
オスカーは薄く冷酷な笑みを浮かべた。
王国が証拠隠滅のために引き起こした偽装の爆発と偽の情報。その目論見通り、帝国側はコンラッドと冒険者パーティーの死亡と判断していた。
(アステリア王国の防衛網は、国境沿いに連なる要塞群と、精鋭の魔法部隊によって強固に守られている。だが、自我と魔法の知識を持ったキメラを軍団として投入すれば、いかに堅牢な防衛線であろうと時間稼ぎにもならない)
オスカーは己の耳の先端――人間よりも長く尖った、長命なエルフの証に触れた。
彼は先の大戦にも帝国側として参加し、王国の力を見極めている。そして、王国の最大の障壁となるのは要塞などの物理的な防衛線ではなく、あの東部方面の軍事責任者、アルタリアだと確信していた。
先の大戦で生まれたアルタリアとの深い因縁。
(アルタリア……次の大戦の時こそ、必ず貴様と決着を付けてやる)
冷たい石室の中に、エルフの指揮官の静かな決意と、数年後に迫る大戦の重い足音が響き渡っていた。
16-2 喪失の先の成長と、不滅の信頼関係
そして――半年後。
分厚い雲の隙間から差し込む陽光が、西の森の木々をまだらに照らし出している。
腐葉土の湿った匂いと、獣の血の生臭さが混じり合う中、三人の冒険者が息を潜めていた。
「――来るぞ。リィン、シノ、準備はいいか」
大樹の陰に身を隠したガラムが、低く押し殺した声で合図を送る。
視線の先には、硬い鱗に覆われた三メートル近い巨躯を揺らしながら、四つ足で森を徘徊するCランクの魔物、アーマー・ボアの姿があった。
「いつでもいけるわ。……シノ、まずは足元からよ」
「ん。……『アース・バインド』」
シノが木杖を軽く振るうと、アーマー・ボアの足元の地面が泥沼のように変化し、巨獣の太い脚を深く呑み込んだ。突如として機動力を奪われ、魔物が怒りの咆哮を上げた瞬間、木の上からリィンが跳躍した。
「そこっ!」
引き絞られた弓から放たれた矢が、硬い鱗の隙間――首元の極めて狭い急所へと正確に突き刺さる。
急所に矢を受け、激痛に悲鳴を上げて暴れ狂う魔物。その注意が完全に上方と痛みの元へと向いた瞬間、重装甲に身を包んだガラムは正面を避け、魔物の死角となる側面へと滑り込んでいた。
(手負いの獣の正面に立つのは、不要な反撃のリスクを背負うだけの愚行だ。……確実に死角から仕留める!)
「これで終わりだァッ!!」
渾身の力で振り下ろされた大斧が、矢が突き刺さって脆くなった首の関節を側背から正確に断ち割る。
大量の鮮血を撒き散らし、アーマー・ボアの巨体は大きな地響きと共に崩れ落ち、二度と動かなくなった。
「よし、討伐完了だ。すぐに血抜きと解体を行うぞ」
ガラムの指示で、三人は手際よく魔物の解体と素材の回収に取り掛かった。
そこに、かつてのような無駄な動きや、連携の乱れは一切ない。
あの黎明の朝、キースというパーティーの頭脳が忽然と姿を消してから、すでに半年。
キースが欠けた直後、三人は絶望と混乱の底に突き落とされた。しかし、キースが彼らに叩き込んだ「戦況の把握」や「無駄のない立ち回り」という教えは、彼らの心身に深く染み込んでいた。
数時間後、ラグリマの冒険者ギルド。
数時間後、ラグリマの冒険者ギルド。
受付カウンターに持ち込まれたアーマー・ボアの素材を見て、受付係のエレンは感嘆の声を漏らした。
「素晴らしいわ、ガラムさん。毛皮には傷一つなく、肉の血抜きも完璧。素材の保存状態が極めて良好だから、通常よりも高い買い取り金額を出せるわよ」
「助かるぜ、エレンさん。これも、あいつ……キースの教えのおかげだからな」
その名前が出た瞬間、エレンは手元のペンを止め、少しだけ寂しそうな笑みを浮かべた。
「……本当に、いつも涼しい顔で私の査定の穴を突いて、少しでも高く買い取らせようとするから、窓口でのやり取りは気が抜けなかったけど……それでも、あの理屈っぽい言葉の裏には、いつもあなたたちを気遣う優しさがあったわ」
「ああ、違いない。あの抜け目のない頭脳が、今でも俺たちの命綱だ」
ガラムが照れくさそうに、しかし誇らしげに頭を掻いていると、背後から古参の冒険者が声をかけてきた。
「よう、ガラム。あの頭の回る小僧がいなくなって、お前らもどうなるかと思ったが……大したもんだな。すっかりCランクの顔つきになりやがって」
「……ああ。あいつが遺してくれた教えが、俺たちに染み付いてるからな」
ガラムは誇りつつも、その声には拭いきれない寂しさが滲んでいた。
ギルドからの公式な発表は、『リルムントから少し離れた街道にて発生した原因不明の大爆発。その跡地から、冒険者キースの遺留品と謎の男の死体の一部が発見された』というものだった。王国による証拠隠滅と情報操作だ。
酒場の隅の席で、水杯を傾けていたシノが、ぽつりとこぼした。
「……キースは、生きてる」
静寂を破ったのは、真っ直ぐで力強い声だった。
「キースが、無駄死にするわけがない。絶対に、どこかで生き延びてるはず……」
「シノの言う通りよ」
リィンもまた、力強く頷いた。
「あの抜け目のない男が、簡単に死ぬわけないじゃない。……きっと、例の集団から私たちを遠ざけるために、わざと消息を絶ったのよ」
ガラムは大きな掌で顔を覆い、一つ深い溜息をついた後、力強く立ち上がった。
「ああ、違いない。なら、俺たちが今やるべきことは一つだけだ。あいつがどこかで一人で戦ってるなら、いつか再会した時、絶対に足手まといにならないように強くなり続けるだけだ」
三人は顔を見合わせ、言葉なく深く頷き合った。
彼らの心の中には、誰よりも仲間想いだった一人の青年の背中が、今も鮮明に焼き付いていた。
16-3 理不尽な力の行使と、冷徹なる迷宮探索
同時刻。
大陸の中央部に位置する、巨大な迷宮都市フィオレンテ。
その名の通り、地下深くまで続く巨大なダンジョンの真上に発展したこの街は、日夜一攫千金を夢見る冒険者や、未知の素材を求める商人たちで溢れかえり、独自の異様な活気を放っていた。
冒険者ギルドに併設された酒場は、むせ返るような酒の匂いと熱気に包まれていた。
その喧騒の只中で、一人の青年が淡々と食事を進めていた。
この半年間で、彼――エルフィアスという偽名を与えられたキースの背丈はいくらか伸び、その顔つきは以前よりも遥かに鋭く、冷徹なものへと変貌していた。
上質な外套を羽織ったその下には、黒い光沢を放つ鱗鎧と硬革のズボンを身につけ、足元は頑強な脛当て(グリーブ)とブーツで固められている。テーブルの傍らには、ダンジョンで発掘されたと思われる古めかしい意匠のロングソードが立てかけられていた。
彼が首から下げているのは、Bランクの冒険者であることを示す銀色のギルドカード。ここ半年、ソロでダンジョンに潜り続け、数多くの討伐実績を上げている『エルフィアス』の存在は、今やこの迷宮都市フィオレンテでは名の知られた存在だ。
彼がどれほど危険な存在かを知らずに絡んでいくのは、よそからこの街にやって来たばかりの、血の気を持て余した新参者くらいのものだった。
「おい、小僧。随分と若い面をしているが、首から下げているそれはBランクの銀証じゃねえか。どこで拾ったのか知らねえが、少し身の程を教えてやろうか」
酒臭い息を吐きながら、迷宮都市に来たばかりと思われる巨漢の戦士が三人、青年のテーブルを取り囲んだ。
周囲の古参冒険者たちは止めに入るどころか、「運の悪い奴らだ」「相手が悪すぎる」と、これから起こるであろう惨劇に対し、絡んでいった男たちへ同情と憐れみの目を向けていた。
だが、キースは食事を止めることなく、極めて冷徹な声で応じた。
「無駄な争いは避けるべきだ。互いの体力と時間を浪費するだけで、何の利益も生み出さない」
「ふざけやがって!」
激昂した巨漢が拳を振り上げた瞬間だった。
キースはいかなる魔法の詠唱も、大きな動作も行わなかった。ただ、冷たい視線を男に向けただけだ。
『エアフィルター』の応用。
この半年間でダンジョンの死地を絶え間なく潜り抜けてきた経験は、彼の空間把握能力と魔法制御を極限まで引き上げていた。視界に収めている目の前の男だけでなく、完全に死角となる背後に立っていた二人を含めた『三人』の頭部の周囲だけ、ピンポイントで気圧を操作し、瞬時に酸素を奪い去ったのだ。
「がはっ……!?」
「あ、ぐ……」
瞬きをする間に、三人の大男が同時に喉を掻きむしり、白目を剥いて床に崩れ落ちた。
完全に視界の外にいる対象への、予兆すらない魔法の行使。あまりにも理不尽な力の片鱗を見せつけられ、酒場の喧騒は水を打ったように静まり返った。
キースは一切の感情を交えず、懐から硬貨を取り出した。
「店員。騒がせた迷惑料だ」
指先で弾かれた金貨一枚が、美しい弧を描いてカウンターの店員の手元へと収まる。
キースは倒れた男たちを一瞥することもなく、傍らのロングソードを手に取り、静かにギルドを後にした。
酒場の重い木扉を押し開けると、迷宮都市特有のひんやりとした風がキースの外套を揺らした。
彼が向かうのは、街の中央にぽっかりと口を開ける巨大な大穴――無数の冒険者たちの欲望と命を絶え間なく飲み込み続ける、底知れぬ大迷宮だ。
喧騒の続く石畳の路地を足早に抜け、迷宮の入り口を固める衛兵に銀色のギルドカードを提示する。階級を確認した衛兵が道を空けると、キースは迷いなく、地下へと続く長く暗い階段へと足を踏み入れた。
どれほどの時間を下り続けただろうか。
キースが現在いるのは、ソロの冒険者では到達が難しい中層である。
周囲は人工的に造られた石造りの壁に覆われ、その壁自体が淡い燐光を放ちながら、どこまでも続く無機質な空間を照らし出していた。
その冷ややかな迷宮の光の中に、巨体を持つ強大な魔物が立ち塞がっていた。
岩のように硬い皮膚と、鋼すら容易くへし折る怪力を持つ牛頭の魔人、ミノタウロス。討伐推奨パーティーランクBに指定される、極めて危険な強敵だ。
「……グルルォォォッ!」
侵入者に気づいたミノタウロスが、巨大な戦斧を振り上げて咆哮する。
キースは無言のまま地を蹴った。同時に背後に高圧の風魔法を発生させ、それを推進力として爆発的な加速を生み出す。
強靭な脚力と風の推力が石畳を砕き、一瞬にして巨獣との間合いを詰める。
だが、Bランクに指定される強大な魔物は伊達ではない。ミノタウロスはキースの超高速の接近に即座に反応し、迎撃として巨大な戦斧を正確に振り下ろしてきた。
「……ッ」
鋼すらへし折る必殺の刃。キースはその迫り来る死の軌道に合わせ、極限まで圧縮した空気の壁『エアシールド』をピンポイントで展開する。
激しい衝突音と共に、戦斧の重い一撃が不可視の盾に弾かれ、ミノタウロスの巨大な体勢が大きく崩れた。
その致命的な一瞬の隙。キースの手には、刀身が微かに赤く光る一本のロングソードが握られていた。
「シッ!」
鋭い呼気と共に振り抜かれた一太刀。
極限まで研ぎ澄まされた刃が、岩のように硬い皮膚をバターのように切り裂き、ミノタウロスの太い胴体を完全に真っ二つに両断した。
ズシン、と重い音を立てて上下に分かれた巨体が崩れ落ちる。
キースは返り血を一滴も浴びることなく剣を振り抜き、『空間収納』を展開して、巨大な魔物の死骸をそのまま虚空へと飲み込ませた。
頭の中で冷徹に状況を整理しながら、キースは暗い迷宮の通路をさらに奥へと進んでいった。
16-4 見えない鎖と、完璧な平穏への確かな歩み
半年前、あの黎明の朝。
仲間との永遠の別離を強要され、アルタリアが霧のように姿を消した直後。入れ替わるように名も名乗らない『影の者』が僕の前に現れ、事務的な手つきで一枚の銀色のプレートと書類を差し出してきた。
『今日から、あなたの過去はこの世界から消え去りました。あなたの新しい名は、エルフィアスです』
手渡されたのは、偽造された完璧な身分証と、特例として最初から与えられた『Bランク冒険者』のギルドカード。
『迷宮都市フィオレンテにて活動を開始しなさい。あそこの地下には、あなたが求める力と知識が眠っている。……せいぜい死なないように強くなることです。数年後の大戦で、あなたにはアルタリア様の切り札として働いてもらうのだから』
淡々と指示を告げた影の者は、さらに冷徹な事実を突きつけてきた。
『また、あなたの足取りから情報が漏れるのを完全に防ぐため、これより空間転移の魔道具を用いて、直接現地へと送ります』
「なっ、待ってくれ! まだ何の心の準備も――」
僕が抗議の声を上げるよりも早く、足元の空間が大きく歪んだ。仲間と別れた悲しみや絶望を整理する時間すら一切与えられないまま、僕の視界は強制的に反転した。
強烈な目眩の直後、次に目を開けた時……僕の目の前には、朝日に照らされた巨大な迷宮都市フィオレンテの威容が広がっていたのだ。
全てはアルタリアの手のひらの上だ。僕の行動は、今も国という見えない鎖によって完全に監視されている。
だが、ただ大人しく鎖に繋がれたまま、彼らの都合の良い手駒として使い潰されるつもりは毛頭なかった。
現在の僕には、絶対に成し遂げなければならない二つの明確な目的があった。
一つ目は、数年後に確実に起こる帝国との大戦争を生き抜き、逆に利用してやるために、自身の能力を極限まで引き上げることだ。
アルタリアからの命令でもある「暗部の精鋭を一人で制圧できる力」の獲得。それは同時に、いざという時にアルタリア自身や国という巨大な力を出し抜き、僕自身の自由をもぎ取るための圧倒的な力という名の交渉材料になる。
そして二つ目は、このダンジョンの深層で発掘されたという魔道具『過去への跳躍』の情報を掴み、何としても入手すること。
先人たちはどのような経緯でこの理不尽な力を国に知られ、いかにして破滅していったのか。その過去の「真実」を直接覗き見ることでしか、現在の絶望的な監視状態から抜け出し、僕が求める『一生働かずに済む真の安全と平穏』を手に入れる打開策は見つからない。そう、一縷の望みを懸けていた。
静寂に包まれた人工的な通路の中で、ふと、遠く離れたラグリマの空の下にいるガラム、リィン、シノの不器用な笑顔が思い浮かんだ。
彼らは今頃、どうしているだろうか。
僕がいなくなったことで、無茶な戦い方をして怪我などしていないだろうか。
「……下らない感傷だ」
僕は頭を振り、胸の奥に湧き上がった微かな温もりと痛みを、鋭い刃のような理性の力で完全に切り捨てた。
彼らの安全は、僕がこの暗闇の中で国の期待通りに力をつけ、利用価値を示し続けることでしか守られない。彼らにとって僕はすでに死んだ人間であり、二度と関わるべきではない存在なのだ。
(僕は進む。どんな理不尽な状況に追い込まれようとも、最後には必ず、僕の求める完璧な平穏を勝ち取ってみせる)
僕は呼吸を極限まで薄くし、己の気配を完全に迷宮の淡い光へと溶け込ませた。
そして、自身の運命を覆し、真の自由を手にするための『鍵』が眠る迷宮の奥深くへ向かって、静かに、しかし力強い足取りで歩みを進めていくのだった。




