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拝んでいたら推しが壁から出てきたので共に暮らします  作者: 花倉きいろ
夢と恋の狭間
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キャラクター人気投票

 夕食後のまったりタイム。特に見たいテレビもなくてごろごろしながらポテトチップスをつまんでいると、闘魂の三十巻の帯を見た高瀬くんが言った。

 

「そういや前、じっちゃんが人気ランキング圏外って言ってたけど、それってどうやって決まるの?」


 ああそれはね、と夢乃はウエットティッシュで丁寧に指先を拭いてから漫画を持つ。ポテチをパーティー開けにして、と言われたのでその通りにして、高瀬くんには割り箸を渡した。


「だいたいこういうコミックスの帯や本誌……ジャンプとかマガジンとかに応募券がついてるの。それをハガキに貼って送るんだ」


「へえ! じゃあ何冊も買う人もいるわけ?」

「もちろん。私も何冊か積みました」

「相手はもちろん……」

「あなたです」

 

 夢乃が手のひらを上にして指先を高瀬くんへ向ける。エレベーターガールの案内のようなポーズに高瀬くんがぷっと吹き出した。

 

「だよなあ」

「ちなみに二位に圧倒的差を付けて高瀬くんが一位です」

「当然。俺が一番」

 

 公式ポーズを取る彼に夢乃は屈んで拍手を送る。やめろって、とむず痒くなった高瀬くんに頬を摘まれた。

 

「ちなみに二位は?」

「……えーっと」

「やっぱり中西? 主人公だし」

「……はやてくんです……」

 

 颯くんとは、高瀬くんの一番のライバルと言われている選手だ。颯くん――千道颯は、熊本のピッチャーで、球速は中西くんと同じ150キロメートル。中西くんが天才肌のピッチャーであることは間違いないが、最初はその素材の良さを生かしきれておらず、活躍の場も少なかった。

 その点、颯くんは中学生の頃から一目を置かれており、高校一年生の夏から抜擢されるほどだ。ストレートはスピンが多くかかっており球速以上の速さを感じると言われている。大きく曲がるスライダーも武器のひとつだ。


 しかし彼はセンスがある故、中学時代はあまり努力をしてこなかった。そのため高校一年生の夏、高瀬くんにホームランを打たれてしまったのだ。それ以来颯くんは努力に努力を重ね、二年生の夏に甲子園優勝を飾った。

 その姿勢に胸を打たれたファンも多い。


 もちろん見た目もいい。茶髪に金色の瞳の高瀬くんに対し、黒髪で青い瞳の颯くんは、少し伸びた髪を一つにまとめている。身長にも恵まれ、すっとした瞼はいわゆる塩顔イケメンだ。

 

 それだけでも人気が出ておかしくないのに、持って生まれた颯くん、努力でのし上がってきた高瀬くんとの再対決を熱望しているファンは多い。

 だから高瀬くんには言えないが……カップリングで応援しているファンもいる。そのため人気投票では自然と上位に入るのだ。


「千道かよー! クソ、青葉がアイツに負けてるの悔しいな。三位は?」

「瞬くん」


 高瀬くんと二遊間を担う、二年生セカンドの瞬くんは生粋の弟キャラで、皆に愛されている。かわいい系のキャラクターだ。


「え、じゃあ四位が中西?」

「四位は大将くん。この投票付近に過去回想があったから、ぐっと順位上がったんだよね」

 

 中条大将くんは、二年生の途中でキャプテンになってから、ぐっと人気が上がった。主婦層に人気がある印象だったが、いかつい見た目で小動物を愛しているギャップなども人気の理由かもしれない。

 

「大将の過去回想かー。たしかに知りてえかも。で、中西はいったい何位なわけ? 主人公だよな?」

「その……大変申し上げにくいのですが……」


 夢乃は高瀬くんから目線を逸らして、投票結果を見せる。


「は!? 六位!? トップファイブにも入ってねえの!?」

「第一回のキャラクター投票では中西くん、一位だったんだよ!?」

「じゃあ尚更なんで?」

「んー……主人公だから、自分が入れなくても誰かが入れるだろうって思っちゃうのかな」


 夢乃なりの考察を伝えると、高瀬くんがお箸で器用に数枚ポテトチップスを取って一気に頬張る。その顔は不機嫌そうだ。


「アイツ良い奴なのに……」

「ホントにね……二推し三推しの人が多いのかなあ」


 高瀬くんとコンビで好きな人もいるが、大体そういう人の本命は高瀬くんだ。自然と中西くんへの票が減るのかもしれない。

 

「向こうに帰ったらアイツの良いところ宣伝しとくわ」

「私も中西くんに何票かいれるね!」

 

 推しの悲しむ姿は見たくない! と力こぶを作れば、高瀬くんがむくれた顔でそれを止めた。

 

「それはダメ」

「なんで?」

「ダメったらダメ! 俺が千道に負けたらどうするんだよ」


 ああなんだそんなこと、と夢乃はけろっとした顔で紡ぐ。高瀬くんと颯くんの間には圧倒的に差があるが、次回もそうとは限らない。それを心配しているのだろう。

 

「もちろん高瀬くんには山ほど積むよ? その中の二枚だけ」


 そう言っても、高瀬くんはダメ、の一点張りだ。


 (もしかして……)


「妬いてるの?」


 と聞けば、図星だったのか高瀬くんが耳まで真っ赤にする。意外と分かりやすいんだなあと思って、ここにきて知る新たな一面に夢乃はくすりと笑みを零した。

 夢乃の問いには空咳で返事をして、高瀬くんが尋ねる。

 

「中西はなんでそんな人気ないの? ほんとに主人公ってだけ?」

「それはその……あくまで私の独断と偏見だけど」

「え、なに」

「髪型が坊主だからじゃないかな……」


 高瀬くんが漫画のようにずっこけた。

「そんなコケ方、漫画でしか見たことないよ」

「『闘魂』ではよくあるってーの」


 そういえば漫画のキャラクターだったね、と夢乃はまた笑うのだった。

 


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