グンマ県には悲願がある
一年後、グンマ県知事は秘書を連れて、世界遺産の「富岡製糸工場」を訪れていた。
ここで就任演説の時に言ったのだ。「約束しよう。私の代で、グンマは海を獲得する!」と。
そう、この場所から【第八次『グンマ県に本気で海を』プロジェクト】は始まった。
あのあと、色々なことがあって・・・・・・。
グンマ県知事は思い出していく。
そして、月面の海を賭けた『フロンティア・オークション』。奇跡の大逆転勝利で、グンマは海を手に入れた。あれは「伝説のオークション」として、人々の記憶に刻まれている。
今やグンマは、日本で唯一の、「月の土地を所有する」都道府県だ。
そのことによる経済効果は大きい。
とはいえ、月面の海を落札するのに、『9000万ドルドル』以上の金額がかかっている。
(本来なら、しばらくの間は節約に取り組むべきなんだろうけどね)
グンマ県知事は自嘲気味に笑う。
まだグンマ県には悲願があるのだ。
そのために、次の手は常に打っておかないと。
「知事、一大事です!」
秘書がいきなり叫んだ。手にはスマホを持っている。何か緊急の連絡があったらしい。
「トンネルの件で、まずいことが」
グンマ県知事は表情を硬くする。
実は現在、秘密の工事を進めているのだ。
二本のトンネルを開通させる計画。日本海につながるトンネルと、太平洋につながるトンネルを、こっそりと掘っている。
その片方、栃木県の地下を東に向かって掘り進めているトンネルで、
「金鉱脈を発見したと」
普通なら喜ぶべきことだが、このトンネルは無許可で掘っている。
「しかも、それが栃木県知事にばれたみたいです」
秘書が言い終わると同時に、グンマ県知事のスマホが鳴った。
画面の表示を見ると、相手は栃木県知事だ。
この電話には出たくないけれど、そうもいかないだろう。
できる限り平常心を装うと、
「もしもしハロー、こちらグンマですけど」
「栃木です。緊急にいくつか確認したいことがありまして」
相手の口調は比較的穏やかだったが・・・・・・。
三〇分後、グンマ県知事はげっそりしていた。
「どうなりました?」
秘書が心配そうに聞いてくる。
「トンネルは差し押さえられた。工事費用の一部は出してくれるらしい。あと、勝手に地下を掘っていたことについて、他の県には黙っていてくれるそうだ」
これで太平洋ルートのトンネルがつぶれた。
あとは日本海ルートだが、こういう時、悪いことは重なるものらしい。
再び秘書のスマホに緊急連絡が入る。
「知事、新潟のトンネルでも石油を掘り当てたと」
「・・・・・・」
「しかも、それが新潟県知事にばれたみたいです」
グンマ県知事は急いで、自分のスマホの電源を切った。
これで日本海ルートもつぶれた、そう考えた方がいい。
栃木も駄目、新潟も駄目。
となると、次は福島か埼玉に、新しいトンネルを掘り進めるか。
「とりあえず、県庁に戻るぞ! 今後の方針を専門家チームと協議する!」
グンマ県知事は秘書を連れて、富岡製糸工場を後にした。
他の視察はキャンセルだ。「こんにゃくパーク」を視察して、食事もする予定だったけれど、仕方がない。
グンマ県には悲願がある。どうにかして、地球の海が欲しい。
はたして、グンマは本当に地球の海を獲得できるのか。
これは、その奮戦をつづった物語である。
参考文献:
群馬 '21 草津 伊香保・みなかみ (まっぷるマガジン) 昭文社
るるぶ鳥取 '21 大山 蒜山高原 水木しげるロード (るるぶ情報版) JTBパブリッシング




