「駄目です」
惨敗の翌日、グンマ県知事は東京都庁にいた。
昨日は最悪だった。最後は東京都の圧勝だ。今回もグンマ県は、海を手にすることができなかった。
(あんなに海を持っているんだから、少しくらい分けてくれてもいいのに)
それで文句を言いにきたのだが、
「あの島がある場所は、東京都なんです。だったら、東京都が保有するのが、自然では?」
冷ややかに告げてくる東京都知事。
グンマ県知事の見たところ、どうやら機嫌がかなり悪いようだ。いつもは温厚なのに、今日は違う。昨日のことと何か関係あるのだろうか?
こんな状況で文句を言い続けても、良い結果は得られそうにない。
そこで作戦を変更する。
文句を言うのではなく、
「島を一つください♪」
そんな提案をしてみた。
「たとえば、八丈島とか」
とりあえず、希望を伝えてみる。
「駄目です」
さすがに、あのサイズの島は無理か。
だったら、希望を下方修正する。
「じゃあ、南鳥島で」
「駄目です」
「じゃあ、沖ノ鳥島で」
「本気で怒りますよ」
東京都知事の顔はすでに怒っていた。
「東京都の中にグンマ県の飛び地があるとか、いや、グンマ県に限った話ではありませんが・・・・・・。とにかく、飛び地は色々と面倒なんです。県をまたいだ犯罪とか、イメージしてみてください。些細なことで、どちらの管轄かなどと、いちいち揉めたくありませんよ。そういう事例が起こりかねないから、今後のことを考えて、東京都が落札したんです。これが一番平和なんです」
「で、でも・・・・・・」
「だいたい、海なし県の人たちは、大きな勘違いをしています。『海がある』というのは、良いことばかりではないんです。色々と苦労があって、大変なんですよ」
「で、でも・・・・・・」
「さて、そろそろ時間ですね。これから大事な会議がありますので、どうぞお帰りください」
グンマ県知事は無念でならない。しかし、この場は撤退するしかないだろう。
「あ、そうそう。入り口横にある東京のお土産、お好きなものを一つお持ち帰りください。同じ関東なんだし、これからも仲良くしましょう」
東京都知事が言ってくる。当たり前だが、東京のお土産の中に「海」はない。
新商品のお菓子を取りながら、グンマ県知事はつぶやいた。
「海を持っている者に、海を持っていない者の気持ちはわからない」




