これは海を目指す戦い(その五)
「いただきます!」
腹ごしらえをしておこう。腹が減っては戦ができぬ。
グンマ県知事は『焼きまんじゅう』を口にすると、ついつい一句。
一念で 突き刺す味噌だれ 焼きまんじゅう
濃厚な味噌だれと、蒸したまんじゅうが、絶妙の味わいを生み出している。
しかも、串に刺さっているので、オークションの動向を見ながらでも食べやすい。
(グンマが海を手にしたあかつきには、浜辺の売店で『焼きまんじゅう』を出すのもいいな)
そんなことを考えていると、秘書がにやにやしながら、
「点数をおつけしても、よろしいでしょうか?」
グンマ県知事は「しまった」と思った。
次から川柳を詠む時には、この秘書が近くにいないことを、絶対に確認しなければ。そう決めていたのに、うっかりしていた。
「え、えーと、点数をつけるのは今回、遠慮してもらえるかな」
「わかりました。では、差し出がましいことかもしれませんが、私だったらさっきの川柳、『突き刺す味噌だれ』ではなく、『突き刺すグンマの』にします。こっちの方が勢いがあります」
「あ、はい・・・・・・」
しばらく川柳は控えよう。少なくとも、この秘書が近くにいる時には。
グンマ県知事は『焼きまんじゅう』を食べながら、パソコン画面を見つめる。
アニメーションの競馬場では、山梨県と栃木県と長野県が競り合っている。
もうすぐ『5000ポンディー』だ。そこから先は『第三段階解禁』。『500ポンディー』ずつの入札が可能になる。
グンマ県知事は『焼きまんじゅう』を食べ終わった。「ごちそうさま」をする。
三県がほとんど同時に、『5000ポンディー』を超えた。さらにレースが加速する。
(あの県はまだ動かないのか)
今回のオークションにおいて、グンマ最大のライバルになるであろう存在。
未だに姿を見せていない。だが、参戦してこないのは考えにくい。
そろそろ中盤戦だ。
(どのタイミングで動いてくる?)
グンマ県知事は考える。
(もしも自分なら・・・・・・)
このまま終盤まで隠れていることはしない。
入札金額の『第四段階解禁』。それが最後の『解禁』だ。
そこから先は、『10000ポンディー』ずつの入札が可能になる。
(そのあとすぐにグンマが、独走状態を築くことができれば・・・・・・)
あの県が必死にボタン連打をしたところで、たぶんこちらに追いつけない。
今回の『フロンティア・オークション』には、『十分間ルール』が存在する。グンマは十分間、首位を維持すればいいのだ。それで勝てる。
ただし、これと同じことは、相手にも当てはまる。逆の展開もあり得るのだ。グンマがいくらボタン連打をしたところで、あの県に追いつけないという展開も。
グンマにとっても、あの県にとっても、相手に大きくリードされては困る状況だ。
この先の展開を、グンマ県知事は次のように予想する。
(こちらが動けば、相手も動く。相手が動けば、こちらも動く)
パソコン画面では、三県が激しく競り合っていた。
およそ一分後、先頭集団が『30000ポンディー』を超える。
画面に表示される『第四段階解禁』の文字。ここから先は、『10000ポンディー』ずつの積み上げが可能だ。
次の瞬間、一頭の馬がグンマの真横を駆け抜けていった。
「やはり、このタイミングで動くか」
今回のオークションにおいて、グンマ最大のライバルになるであろう存在。
埼玉県、発進!




