10/10
Happy Birthday to You
「優美さんって、誕生日いつ?」
「12月23日」
「そう、天皇誕生日だから覚えやすいね」
「それ、前にも言ってた」
この時のさつきの心中を察してほしい。
さつきは、まめな女である。携帯電話というものをほぼ同時に持った二人は、さつきは優美が選んだ曲を優美の着信音に設定して、彼女たちはごくたまにメールのやりとりをしていた。
恐ろしいのは、28歳、つまり高校を卒業して10年後の誕生日も、さつきは0時になった瞬間に送れるように文章を推敲し、日付が変わるのを待って送信ボタンを押した。
優美から、今回は早く返事が来た。
曰く、もうさつきから誕生日にメールが来るのが楽しみで、朝いそいそとパソコンを立ち上げたというのである。そう、優美は仕事用の携帯しか今は持っていなかった。
にやにやして、さつきは、絶対に来ない自分への誕生日メールの代わりに、大切に、書かれたメールを読み返す。
流石に元文芸部、某最高学府の文学部は違うねえ。
さつきはそう独り言ちた。




