残されたものたちの奇跡と最後の再会の約束
シンプソンが去り、カブレラが去り、クローシェイも去ったマイアミ。
メディアは一斉に「マーリンズの黄金期は終わった」「トリプルエースを失ったチームは最下位に沈むだろう」と書き立てた。
しかし、残された男たちのプライドが、マイアミの夏を熱く焦がす。
「エースたちが何だ。俺たちには、このバットとグローブがある」
1番のサンタンデールが泥臭くユニフォームを汚して出塁し、2番のカブレラ(野手)が電光石火の走塁で相手を揺さぶる。3番スタントンのバットが快音を残して打球をスタンドへ叩き込み、4番のホウイーツが気迫のリードで投手陣を引っ張る。
投げては、35歳のベテラン鉄人ファルターが毎回クオリティスタートを達成してローテーションを守り、37歳の怪物ケイレブ・マダックスが変幻自在のコントロールで終盤のピンチを執念で火消しする。最後は、昨季ホフマン賞のフェアバンクスが雄叫びを上げてシャットアウトする。
誰もが予想しなかった「全員野球」。マーリンズは破竹の勢いでポストシーズンを勝ち上がり、ついにワールドシリーズ優勝の栄冠を掴み取ったのだ。
【繋がった糸】
マウンド上に歓喜の輪ができる。サンタンデールが、スタントンが、涙を流しながら抱き合っている。マイアミの夜空に、世界一を祝う花火が打ち上がった。
同じ夜。ニューヨークの静かな自宅で、シンプソンはテレビ画面に映る古巣の歓喜を見つめていた。
そこには、自分が喉から手が出るほど欲しかった「世界一のリング」を掲げる仲間たちの姿があった。寂しさが胸を過る。しかし、それ以上に、彼らの快挙を心から祝福している自分がいた。シンプソンは優しく微笑み、テレビの電源を切った。
部屋が静寂に包まれたその時、ソファの上に置いてあったスマートフォンの画面が明るくなり、バイブレーションが響く。
画面に表示された発信者の名前は——『A・カブレラ』。
シンプソンは息を呑み、少し震える手でスマートフォンを拾い上げた。画面をスワイプし、耳に当てる。
「……もしもし、カブレラ?」
少しの沈黙の後、スピーカーから、あの懐かしい、少し掠れた、しかし最高に温かい兄貴の声が聞こえてきた。
『よう、シンプソン。——久しぶりに、キャッチボールでもしないか?』
シンプソンの瞳から、大粒の涙が溢れ落ちた。窓の外には、ニューヨークの美しいプロムナードが広がっている。二人のエースの物語は、ここからまた、新しく始まるのだ。
これで終わりです




