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第四話 彼と面会することはできますか?

ありがとうございます!

「ようこそ我がサーラントにお越しくださいました。私はソール。サーラント国王より貴方様の案内役に任命された為馳せ参じました。」

 

 

 

 エジュデルを立って3日。サーラントに到着し補給を済ませる間、ルチアたちはサーラントを見て回ることになった。

 

 ルチアたちを出迎えたのはビシッと決まった軍服に身を包むソール。


 彼はサーラント国王の弟で、王から指名された接伴役であり、この歓迎の責任者でもある。

 

 

 

「長い旅でお疲れでしょう。ささやかながら最高のおもてなしをさせていただきますぞ。」

 

 

 船を出ると拍手喝采。サーラント人たちは国を挙げて私を出迎えてくれたらしい。エジュデルとサーラントの旗を振り、笑顔で出迎えてくれた。

 

「御歓迎感謝します。私はエジュデル帝国皇女ルチア。後ろに控えているのが騎士のユリウスです。短い間になりますが、よろしくお願いします。」

 

 ユリウスが一歩前に出て頭を下げる。

 けれど、その顔は明るくない。

 

 

「では、ご案内いたしましょう。我が国の近代化の成果を。」

 

 

◇◇◇

 

 

サーラント王国。


 半島国家であり多民族国家。エジュデルとアイリア、双方の間で揺れ動く緩衝国家という側面もある。



 特に、この国は海上ルートにおいてアヴィルパ大陸とエジュデル大陸を結ぶ要所であることがこの国の価値を引き上げているのだろう。

 

 そしてこの国家の最大のトレンドは、

 

(近代化…か)

 

 奴隷制、階級、穀物での納税を廃止。憲法の策定と警察機構の設置。

 

 馬車の中から見える街には街灯が設置され、煤がほんのりついている。サーラントの民族衣装と洋服が混在する空間は近代化の最中であることをまざまざと見せつけていた。

 

「ルチア様、いかがでしょうか?我が王都は。」

「ええ、素晴らしい限りです。街に活気が宿っている。」

 

 

 その応答にホッと胸を撫で下ろすソール。非文明国に発言力の発言力なんてたかが知れているこの時代、自国を守るためには近代化が必須。

 

 そして、それのアピール。

 彼らがここまでしてくれるのは、きっとそういうことなのだろう。

 

 

「これも貴国エジュデルのおかげであります。しかしながら、急速な近代化には代償がつきもの。そこで今再び、貴国の力を貸して欲しいのです。」

「なるほど、父にも伝えておきます。」

 

 とどのつまり金の無心だろう。実態はともかく、たった数年前でここまでの発展を遂げたのだ、それ相応の資金は必要だっただろうし決して少なくない借金だってしただろう。

 

 それについてとやかく言うつもりはないし、エジュデルはそういった国への投資も行っている。むしろ自らの国が頼りにされている。それが少し嬉しかった。

 

 

 

「退け!邪魔だ!」

 

 なんだか外が騒がしい。窓から覗いてみると、民族衣装に身を包んだ一人の老人が、ものすごい剣幕をしてこちらに向かって走ってくる。なにかを大事そうに握りしめて。

 

 

「何をしている!早くあれを「ルチア殿!」

 

 

 警備の穴をすり抜けて、馬車の窓を叩く老人。ユリウスは剣に手をかけて、ソールは警備に呼びかける。

 しかし、ルチアだけはその老人の瞳を見つめていた。その、命をかけた眼差しを。

 

 

「ルチア殿!どうかサーラントに圧力をかけないでくだされ!我々の生活には奴隷が必要なのです!どうか!どうか!」

 

 

 警備に押さえつけられた老人は、確かに皇女を見ていたのだ。仲間たちから託された請願書を握りしめて。

 

◇◇◇

 

 

「私や国民が貴方様を歓迎しようとしたにも関わらず、この様な事態になったこと、心の底から謝罪申し上げたい。」

 

 

 結局、あの老人は逮捕され何処かに連れて行かれた。



 ルチアたちエジュデル使節団は一時船に戻り、状況を確認していたところサーラント国王自らこの船に乗り込んできたのだった。

 

 

「他国の王族の警護がこの程度とは…皇女に危害があったかどうか以前の問題だ。こんな国に期待など出来ないと皇女に掛け合おうとした老人の気持ちもわかりますね。」

 

 

 ユリウスの言わんとしていることはわかる。なぜ警備があそこまで疎かだったのか。あの老人に殺意があったなら、私はここにいなかったかもしれない。

 

 自国の政府に訴えかけるべき内容を他国の権力者に投げかける。それがサーラント政府の信用を物語っていた。

 

しかし、ルチアの関心は別のところにあった。

 

 

「サーラント王、彼は、あの老人はどうなるのですか?」

「はい、あの者は現在留置所に収容しており、なぜあの様な蛮行に及んだのかを聴取中です。それが済み次第、すぐにでも処刑いたします。ですからご安心を。」

「彼と面会することはできますか?」

 

 

 奴隷制は間違いなく悪だ。帝国の秩序に反し、人権を侵害し、労働力を削ぎ、経済を鈍化させる悪習だ。けれど、それに支えられた人も居た。彼らを非人道的な悪と切り捨てることは簡単だ。

 

でも、彼らもまた時代の被害者なのかもしれない。だからこそ直接話してみたかった。

 

 

「…」

「叶いませんか?」

「…いえ、すぐに手配させましょう。」

 

 

サーラント王は静かに立ち上がると、船を降りて行く。

 

「ユリウス、頼みましたよ。」

「仰せのままに。」


感謝です

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