入学式 ②
5/11 二話目
二人と話していると入学式の会場につく。大きな講堂だ。全校生徒が集まれるぐらいの場所。学科ごとに分かれて座るので、中に入ってアル君とネネちゃんと別れる。
椅子に腰かけて、講堂内を見回す。
大きなパイプオルガンが見える。ああいうの見ると楽しいね。美しい装飾が施されていて、おそらく貴族達から多くの寄付がなされているんだろうな。
わたし以外の平民達も目を輝かせてあたりを見ていた。物珍しいんだろうな。
ちなみに貴族学科の中には、そんな風にきょろきょろしているわたしたち平民を嫌そうに見ている人もいた。
ネネちゃんはわたしが平民だろうとにこにこしていた。アル君だって、わたしを寮に迎えに来た時に平民たちに話しかけられても、普通だった。アル君はちょっと冷たい雰囲気はあったけれど、多分、貴族達にもそうだと思う。
でもそういう当たり障りのない態度ではなくて、平民と関わることを嫌悪しているような貴族も居なくはないんだろうな。
同じ人間ではあるのに、そういう風に自分たちは特別だって思ったりしちゃうんだろう。
わたしもベルラ・クイシュインとして生きていた頃に同じようにわたしは特別だってそう思っていた気がする。
そういう思考の人ってやっぱりいるんだろうな。
自分たちが貴族として特別な存在だったとしても、嫌悪を露わにする理由はないとは思うんだけど。
ただ貴族である自分たちが平民と同じ学園で生活をしていくことが不満なのかな。
貴族の子供にはそれなりに特権はあるだろうけれども、学園内ではあくまで特別扱いはしないとは明言はされているし。……まぁ、それが完全に守られているかといえばそうではないだろうけれど。
他の場所では許されないことも、この場では許される可能性もあるんだよなとは思う。
そういう子達とも仲良く出来るならしたいけれど、わたしが平民だから仲良くはしてくれないかもとも思う。
でも貴族って、場所が違えば意味のない地位ではあるんだよね。その価値を知らない人たちの前では正直言ってどこの家の、誰の子供であるとかは関係ないものではあるんだよね。
正直色んな価値観がある集団が世の中には沢山いるわけで、それを押し付けるのってどうなんだろう? とは思ってしまう。
それに貴族って、特に子供は親が偉いだけっていうのもあるしね。
ベルラ・クイシュインとして生きているあの子は子供ながらに事業をやったりもしているらしいので、そのことは凄いなとは思うけれど。
アル君が大人が子供のふりをしているって言っていたから、その辺の人生経験もあってそういうことが出来ているのかな?
でももし中身が大人だったとしても人によっては、成功することなんてきっと出来なかっただろうし。それってあの子の頑張りの証ではあるとは思う。
そういうところもあって、あの子の周りには人が沢山いるのかも。もちろん、ネネちゃんとアル君のようにあの子の性格が合わない人は居るだろうけれどね。
そんなことを考えながら、わたしは入学式が始まる前から何だか楽しくなっていた。はやく始まらないかなぁとワクワクしながら待っていると一部がざわめいた。そちらに視線を向けるとベルラ・クイシュインとして生きるあの子が居た。
こんなに近い距離であの子を見るの初めてかもしれない。堂々としている。その周りには何人もの人達がいる。
おお!! なんだか綺麗な子達ばっかり!!
これだけの数の美しい子供達が揃っていると、注目されるのも当然だなとは思う。
王侯貴族の子供達って綺麗な子が多いけれど、これだけ集まっているのって珍しいことだよね。
わたしは綺麗な人を見るのが好きだから、目の保養だなとは思った。
ただあの子や王太子殿下はともかくとして他の子達……ちょっと余裕がなさそうだった。なんであんな調子なんだろうね? 周りを睨みつけている子だっていて、ちょっとびっくりする。
あと女の子より、男の子の方が多い。
もしかして王太子殿下の側近達ってことなのかな? 割と皆、あの子に話しかけていて男の子たちはあの子のことが大切なんだろうなとは思った。
ただちょっとだけ大丈夫かな? と思ってしまったのは男の子たちの視線が熱っぽい部分があったから。
わたしの目から見ても分かるぐらいのもの。あの子は気づいていないのだろうか?
そもそもあの子には王太子殿下っていう婚約者がいて、きっと王太子の側近達にも婚約者ぐらいいるだろう。ネネちゃんの婚約者もあの中に居るのかな。……ネネちゃん、大丈夫なのかな。
婚約者があの子のことを特別視している様子を見るのって嫌な気持ちにはなりそうな気がする。
そもそも周りは何も言わないのかはちょっと疑問。だって幾ら婚約者の側近とはいえ、男の子にああいう視線向けられていたら問題起きそうな気もする。
うん、もし仮にあの子のことを好きだったとしても、特別な女の子だと思っていても――それを周りに見える形で示すのってかなりのリスクだと思った。




