学園都市から帰宅してからのこと ①
4/3 二話目
学園都市には少しの間、滞在していた。その後、屋敷へと戻ったよ。
学園都市に試験を受けに行って、それから学園長とも会って、もうすぐ学園に通うことが出来るんだなとそう思うとワクワクしてくる。
今は秋だから、これから冬が来て、春が訪れる。
その頃には学園に入学する。試験の結果が出たら、寮に入る手続きもしないといけない。
新生活の始まりの予感がしてきて、わたしは楽しみで仕方がない。
わたしは屋敷の外でぶらぶらと歩く。
赤く染まった葉が視界に映る。
綺麗だなぁ。わたしはこういった景色を見るのも大好き。
学園ではまた違った季節の景色を見ることが出来るんだろうな。お気に入りの場所を見つけたら、パパとママに教えたいな。
そうやってパパとママにお勧めできたら、きっと楽しそうだ。
「ユキア、シミーレはどの季節が好き?」
わたしはそう言って、二人に問いかける。
大体、山をぶらぶらしている時は契約している二人を連れて行くことが多い。完全に一人で散歩することって少ないかもしれない。
わたしは一人で過ごすことも嫌いじゃない。一人で考えたいこともきっとあるから。
ただわたしは誰かと一緒にいる方が好きなんだけれどね。やっぱり一人は寂しいって思ってしまうから。
それはわたしが自分の身体から追い出された時、しばらくの間、誰とも喋ることなく漂っていたからかもしれない。
あの時のことは、もうわたしにとっては随分昔のことのようには思える。わたしはパパに拾われてからずっと幸せだ。
パパがわたしを見つけてくれて、わたしのことを娘として受け入れてくれた。だからわたしはベルラ・クイシュインではなくベルレナとして生きていくことが出来るようになった。
もし仮にわたしが違う人に拾われたとしたらもしかしたら不幸になっていたかもしれない。そしてそうなっていたら、わたしは過去の自分――ベルラ・クイシュインに執着してしまったりしていたかもしれないから。
どうして自分がこんな目に合わなければならないのかってそう理不尽に感じてしまったのかも。
結局、わたしはパパとママに出会えて幸せだからこそ過去のことを割り切れているだけであって、そうじゃない未来だって無くはなかったんだろうな。
ベルラ・クイシュインとして生きているあの子はどうなんだろう?
わたしの身体に入る前に彼女が何をしていたかなどは、わたしはさっぱり分からない。でも何も知らない状態でいきなりベルラ・クイシュインになったのならば、もっとあの時に動揺していたんじゃないかなとも思ったりする。
あくまでもあの子はベルラ・クイシュインになってからもずっと冷静だった。よく分からない乙女げぇむや悪役令嬢って言葉を口にしていた。だからその前にも誰かとして生きていたのかなとは思う。きっとあの子にとっても不本意というか、突然なことだったのだろうとは想像はつく。
わたしの身体に入ってすぐに戸惑ってはいたのは確かだから。
きっと彼女が今の暮らしに満足していなかったら、どうしてこんなことになったんだろうって凄く困って、苦しんではいるんじゃないかな。ただ噂話などを聞く限り、ベルラ・クイシュインはとても頑張っていて、貴族社会の中でも沢山の人達から慕われる暮らしをしているらしい。
だから大丈夫なんだろうなとは思いたいかも。
だってわたしだけが幸せなのって、少しだけもやもやしてしまうから。わたしとあの子は、ベルラ・クイシュインという身体を通じて別々の道を歩み出した。わたしとあの子は、関わらずに生きてきた。
わたしとあの子は、もしかしたら学園に入学したら関わることはあるかもしれないけれど、そのくらい。
基本的には学科も違うだろうし、見かける程度だろう。
パパとママはあの子に対して複雑な感情は抱いてそう。わたしはあの子が幸せそうにしていると、それはそれでよかったなとは思えるだろう。
わたしもあの子も、それぞれ楽しく生きていたらそれでいいかなって。
《僕は冬が好き》
「私は季節の好みはない」
ユキアとシミーレがそう言って答えてくれる。ユキアは元々寒い地域出身だから、冬が好きなのが納得だ。シミーレはあまり季節とかに関心がない精霊なのかもしれない。
あの子はどの季節が好きなんだろう?
直接話さなかったとしても、どういう風に暮らしているかは少しだけ興味はある。
まぁ、学園に入学したら、ベルラ・クイシュインの噂は沢山耳に入ってくるだろうし、知ることは出来るだろう。
「そうなんだね。わたしは一番春が好きだけど、もしかしたらこの先、違う季節が好きになったりもするかも」
わたしは変わらずパパと出会った春が一番好き。
でもこれから先、色んな経験をして言ったら別の季節も好きになったりするのかな。




