学園の入学試験 ③
試験のために学園の門をくぐる。入学前の、試験を受ける子供達は私服だ。まだ入学していないから当然だよね。
わたしは比較的動きやすい服を身に纏っている。パンツスタイルの人達も多い。実技もあるからだろう。あとは剣術を学ぶ学科に通う女性に関しては、特にスカートは着ていない。わたしはおしゃれをするのが好きだから、可愛いスカートを身に着けている。もう少しシンプルなものにした方が良かったかも? と試験を受けに来てから思った。
でもまぁ、服装の指定なども特になかったし、ニコラドさんにも問題ないと言われていたのでこの格好なの。
それにしても今日のわたしも凄く可愛い!! と自画自賛する。だからか、ちらちら見られていたりするの。
実技の試験もあるから、ちゃんと作った杖も持ってきたんだ。収納庫にしまった状態ではなく、大きめの鞄に入れて持ってきたよ。わたしぐらいの年で、収納庫の道具を持っているのは少し目立つらしいって聞いたから。
試験と関係ないところで目立ちたいわけじゃないしね。
試験は期間中に受ければそれでいいとなっているため、此処に来ている私服の子供達が受験生の全てではないだろう。でも、結構な人数居てびっくりする。
きっと試験に落ちる人もいるんだろうな。特に平民だとそうみたい。
貴族達の通う学科の場合だと、どちらかというとその血筋の人は通りやすくはなっているっぽいけれど。学科によるんだろうね。
平民たちだと、特に倍率凄いんだよね、確か。この学園を卒業するとそれだけで結構な箔が付くって聞いたよ。わたしはパパとニコラドさんが通っていた学園だってことを知ったからなんだけれどね。
わたしみたいな理由で学園に通う人だっているのかな。きっと色んな事情やきっかけがあって通う人ばかりなんだろうな。
わたしはそう考えて、学園に入学したら色んな人の話を聞いてみたいなと思った。
だってわたしが想像出来ないぐらい沢山の人達が、同じ学園に通う学生としているんだよ! それってきっとすごく楽しいことでしょう?
楽しみだなぁ。仲良い人たちを沢山増やしていけたら、それだけそう言う話も聞けるよね。あとは仲良くならないと話せない話も沢山あるはず。
とはいってもあれだね、わたしは余程親しい人相手じゃないと自分のことはちゃんと語れない。
わたしの方から何かを語らなければ向こうだってすぐに話してくれなかったりする気がする。どうなんだろうね、でもペラペラと自分のことを話すのも違う。特に学園には、ベルラ・クイシュインとして生きるあの子だっているはずだから。
……ベルラだった頃の、お兄様だって通っているんだもんね。
そう考えると不思議な気持ちにはなる。わたしとあの子の中身が入れ替わったことなんてほとんどの人が知らないのだから、わざわざ言いふらす必要なんてない。
わたしはそんなことを考えながらもまずは、座学の試験に挑む。
試験の会場は教室の一室。学園の教室の中に入るのも初めてで、何だか興奮する。遊びに来たような気持ち。
学園内を探索したらきっと楽しいだろうなんて考えてワクワクしている。ただこうやって楽しんでばかりいても駄目なので、ちゃんと試験は真面目に取り組むよ。
別のことに気を取られ過ぎて、上手く出来ないなんて嫌だもんね。
隣の席の女の子は緊張しているのかがたがた震えていた。
「大丈夫?」
わたしは思わず声をかける。だってびっくりするぐらい顔色が悪かったんだよ。
服装を見た限り、わたしと同じ平民の子だと思う。動きやすいような服装で、杖も持っている。わたしと同じ学科を受ける子なのかな。
「は、はいいい」
わたしに対して怯えたような様子なのは……もしかして貴族だと勘違いされている? とは思い至った。
この学園は貴族も沢山通うもんね。それにわたしってパパによく似た見た目で、凄く可愛いし。あとはもしかしたらベルラ・クイシュインだった頃の仕草とかも一部は残っているだろうし……。ベルラ・クイシュインだった頃のわたしと、今のわたしって全てが違うわけじゃない。あの頃から身体は違っても、今のわたしへと繋がっているのは確かだ。
「そんなに緊張しないで。わたしはあなたと同じ平民だよ。魔法学科を受けるんだよね? 受かったら一緒に受けられるから頑張ろう?」
わたしはそう言って笑いかける。
わたしが平民だと知って女の子は驚いていた。というかわたしたちの話を聞いていた他の生徒も驚いていたんだけど。
……なんだろう、ただものじゃない雰囲気とか出ているの? そんな自覚はあんまりない。
試験を受けるっていうのにこんなにも悠々としていて、余裕がある様子なのが珍しいのかな。
他の子達は、受からなかったら……って心配で仕方がないみたいだから。
ただわたしの場合は問題ないだろうとニコラドさん達にも言われているし、仮に駄目だったとしてもそれはそれって思っているしね。
「うん。が、頑張る」
「落ち着いて、深呼吸をして取り組めばきっと大丈夫」
わたしがそう言ったら、その子もにっこりと笑ってくれた。
わたしはその笑顔が可愛くて、嬉しくなった。どんな人でもこうやって笑っている方がきっといいよね。




