試験の準備をしよう ②
貴族としての在り方。幼い頃はそれを学んでいた。とはいっても幼かったから、本当に必要最低限。
それに子供だったから、好き勝手することも許されていた。わたしの我儘をそのままにしていた。それでも最低限貴族令嬢としてはちゃんとはしていた。
わたしとして生きることになったあの子が、あまりにも物分かりが良くてわたしよりも“大人”だったから特に比べられたんだろうなとは改めて考えてみると分かる。
ちょっと貴族としての挨拶とかもしてみる? などと考え立ち上がる。それから幼いころに学んだカーテシーをやってみる。
「初めまして、皆様方。わたしくの名前は、ベルレナと申します。平民の出になりますが、是非仲良くしていただけると嬉しいですわ」
鏡の前でやってみると、中々様になっている気がした。
わたしが貴族として生きていたのは、ずっと昔の話。わたしはすっかり、貴族ではなく魔導師の娘として生きている。
もちろん、パパの娘になってから貴族としての教育など受けていない。それでもこうして……わたしが“ベルラ・クイシュイン”であった名残は確かに残っているんだなと不思議な感覚だった。
貴族としての口調もやってみようとしたら出来なくはない。本などで出てくる貴族令嬢を真似して言葉を言い放ってみると、結構しっくりはくる。ただずっとそんな口調をしていると疲れそうだから嫌だなとは思う。
貴族だとこういう口調を常に心がけなければならなくて、権力争いなどにも巻き込まれたりもしてしまうのだろうな。
そういうのって大変だ。
わたしにとってもあの子にとっても予想外のことで、神の悪戯と呼ばれる不可解な状況はおこった。
神の悪戯については調べてもよく分からない。そもそもそれらが起こっている原因も不明だ。誰にも解明出来ないからこそ、神の悪戯と呼ばれているだけなのだから。……神の悪戯の資料とかも、今後集めては行きたいな。だってそういうことは無い方がきっといいから。
わたしはたまたまパパに見つけてもらって、今生きているけれど消滅した可能性もあるもんね。
学園には大きな図書室があるって聞いた。それに学園は歴史が長いはず。それならばそういった情報も集めようと思えば集められるかな? 自分の知らない情報を学ぶことは楽しいから、学んでいきたい。
それはともかくとして、貴族風の行動ってわたしどれだけ出来るんだろう?
食事のマナーはある程度ちゃんと出来ているはず。パパって、食べ方が汚いのとかは嫌がるタイプだしね。
わたしはベルラ・クイシュインだった頃から食事のマナーなどはちゃんとしていた。それもあってパパに注意をされたりすることも特になかったかもしれない。
……パパは、わたしじゃない子供を拾ったら今のパパにはならなかったんだろうな。
わたしとパパは相性が良かったんだ。そう思うと、なんだか嬉しいな。
あとはダンスとか? ダンスは正直よく分からない。まだ幼かったし、ベルラ・クイシュインだった頃はそんなことなんてほぼなかった。
本格的に習う前だった。
わたしは運動神経が悪いわけじゃない。だから、おそらくダンスはやろうと思えばできるんじゃないかな? 学園って卒業パーティーとかもあるんだよね。それは貴族だけじゃなくて、平民も集められる特別なものだって聞いた。
平民の学生も、最後は楽しくパーティーに参加して思い出にするんだって。
あとはそうだな、基本的に貴族は貴族同士でくっつくことが多いけれど、学園で出会って平民と婚姻する貴族も居なくはないらしい。もちろん、高位貴族だとありえないって聞いた。あくまで下位貴族ばかりらしい。
それもそうだよなぁとは思う。
よほど何らかの事情があったり、覚悟があったりするならともかくとしてそうじゃないのならば身分差のある恋って凄く大変だよ? 想像しただけでも苦労するんだろうなって思う。
わたしが貴族としての暮らしも、平民としての暮らしも知っているからかも。
逆にこう……貴族の地位を捨てて平民になってでも一緒に居ようとするのはありだとは思う。
身分が上の人が、下の人に合わせて暮らす方が多分上手く行きやすい気がする。あくまでわたしがそう思っているだけだけどね!
もし学園に通って、平民のお友達とかが貴族に懸想していたりしたらちゃんと話を聞いてから言葉を掛けたいと思う。
恋って盲目になるって聞くから、反発されると逆に燃えたりするのかもしれない。
そうなると、やっぱりちゃんと話を聞いて、受け入れつつ話すことが大事かも? 誰かの恋愛相談とか聞きたいなぁ。
同年代の子の恋愛相談とか、絶対に楽しいもん!!
それで幸せになってくれたら、とてもいいよね。学園で出会った生徒と、卒業後も関わり続けるかは分からない。
もしかしたら学園の中だけの関係性になるかもしれない。それでも、親しくなった人と仲良くなれた方がずっと嬉しい。




