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わたしは精霊に屋敷を案内する ①

「おはよう、シミーレ」



 シミーレを連れて帰宅した後は、すぐに眠ったよ。それでね、翌日になってから挨拶をしたの。

 精霊と契約をするなんて考えてもいなかったから、夢だったんじゃないかとちょっと考えてしまっていた。

 だからシミーレが実際に屋敷内にいるのを見てにこにこしてしまう。丁度、今日夢でね、精霊と一緒に遊ぶ夢を見たんだ。不思議な花畑にいたんだ。夢って凄く不思議だよね。



 色とりどりの花が、ふとした瞬間にころころと色が変化していって、わたしはそれを見てとても不思議な気持ちになった。だってね。あんな光景見たことなかったのだもん。

 その花畑で、わたしは精霊達と一緒にふよふよ浮いていたの。

 なんというか、視点がわたしというより精霊目線だった感じ。なんだろう、わたしは魔法が使えるし、自分の身体を浮かせたりとかは出来るよ。だけれども常にそうやって人族と違う視点で見ているわけじゃないもんね。


 なんだろう、夢の中ではわたしは精霊たちに混ざっていた感じだって言えばいいのかな。本当に不思議な夢だったな。

 人間であるわたしが、精霊になるなんて普通ならありえないことだから。





 それにね、その夢の中ではパパもママも居なかったの。それが寂しかった。わたしにとっては楽しいことは全てパパとママと一緒に共有したいとわたしはそんな風に思っているから。

 わたしはまだまだ子供なんだなって自覚した。

 大人だったら、両親が居なくても平気だよね。でもわたしはそうじゃなくて、パパとママが居ないと嫌だから。




 それにね、知っている精霊が居なかったから……不思議で、自分は何処にいるんだろうってそんな感覚だった。

 目が覚めたら、夢だって自覚したけれどね。




「おはよう。この場所は魔導師の家というだけあって、凄い場所だ」

「そうなの? ずっとここで過ごしているから分からないや」



 この場所は凄いと言われたけれど、わたしにはあんまりぴんとこない。パパの娘になったばかりの頃は、全てが物珍しかった。わたしにとってその当時はここは帰る場所じゃなくて、知らないところって認識だった。

 でも今ではすっかり帰るところで、この屋敷のことがわたしにとっては当たり前になった。

 そう実感するとなんだか嬉しい気持ちになった。



「屋敷の中を案内するね? わたしにとっては大事な場所だから、シミーレにも好きになってもらえると嬉しいな」



 わたしはそう言って、シミーレに笑いかける。

 わたしがこの場所を大好きだと思っているのと同じように、シミーレも気に入ってくれたら嬉しいなとそう思うから。





「いいだろう」



 そう言われて、わたしは意気揚々と屋敷を案内し、わたしのことを話すことにした。




「……神の悪戯の被害者だったのか」




 わたしが元々は魔導師の子供ではなかったことに驚いた様子だった。それだけわたしがパパとママの娘として馴染んでいるということだろう。

 ママなんて特にわたしたちの家族になってまもないのにそうなんだもん。やっぱり血のつながりだけじゃないんだなってそうも思った。



 わたしがどうしてここでパパとママの娘として生きているのか。シミーレにも知ってもらいたかった。だって折角こうして契約したんだもん。




「そうなの。わたしね、パパに出会う前、凄く悲しい気持ちでいっぱいだったの。でもパパがわたしを見つけてくれたからわたしはすごく幸せなの」




 わたしが今、こうして笑っていられるのはパパとママが居るから。

 パパに見つけてもらうことがなければ、わたしは消えていたかもしれない。そうなればシミーレに出会うことだってきっとなかったんだ。

 わたしとシミーレが出会ったのも、本当にただの偶然なのだ。

 その偶然が重なって、今があるんだ。





「良かったね」

「うん。あのね、パパもわたしと会えなかったら今の自分はいないって言ってたの。パパも……ママにも言えるんだけど、結構敵対する人に容赦なかったり、他の人のことをどうでもいいって思っていたりするから」

「魔導師ならそれが当然だよ。寧ろ娘を可愛がるなんていう、人間味があることの方に私は驚きだから」




 精霊にとっても、魔導師というそはそういう存在らしい。

 寧ろニコラドさんみたいに人と関わって生きている魔導師の方が珍しいっていう話だもんね。



「……私のことも、魔導師たちなら捨て置いただろうし、そのまま面倒だったら消滅させていたかもね」

「確かに! わたしと出会う前のパパとママならそうなのかも。でも今は絶対にそんなことしないから安心してね」




 わたしの契約している精霊になら、パパとママは優しくするはずだもん。

 わたしがそう言って笑えば、シミーレは呆れたような表情で頷いた。

 


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