わたしは精霊に屋敷を案内する ②
「わたしね、いつも此処で錬金術やったりしているの」
「錬金術まで出来るんだ」
わたしの言葉を聞いて、シミーレは感心したかのように言った。
今、案内している場所は錬金術を普段行っている部屋なの。様々なものが乱雑している。パパは少し適当だから、気を抜くと結構ぐちゃぐちゃになる。魔法ですぐに片付けているけれど、結局こうなる。だからわたしが片づけをしたりしているの。
パパって相変わらず大雑把というか、その辺は適当なんだもん! あんまりだらしない姿ばかり見せているとママに呆れられてしまうかもしれないしちゃんとしてほしいなとは思う。
ただママはどんなパパでも大好きみたいだけれども。
やっぱり恋をすると、大好きな人のどんな姿を見たとしても大好きでたまらないようなそんな感覚になるのかな? わたしは恋をしたことがないから、そのあたりは分からないの。
「わたし、パパとママから色んなことを習っているの! わたしのパパとママはね、凄いんだよ。出来ないことももちろんあるのだけれども、基本的に何でも出来るっていうか!!」
「そう、まぁ、魔導師と呼ばれる存在なんてそうだと思うよ。一般的に見て秀でていなければそんな存在にはなれないし」
「でも魔導師じゃなかったとしてもパパとママは凄く素敵だったと思うの! わたしね、パパとママみたいになるのが夢なの」
わたしの大好きなパパとママ。二人みたいになれたらきっと楽しいだろうなってそればかりを考えている。
「そうなのか。君もいつか魔導師になるのかもしれないな」
「どうだろうね? それは分からないけれどなれたらそれはそれで楽しいかもねって思うよ。ただもし本当に魔導師を目指すならばちゃんと考えてから選択するつもりなの!」
そもそも魔導師ってなろうと思ってなれるものじゃない。ニコラドさんとかには、魔導師向きなんて言っていたけれどどうなるかまだ分からないもん。
ただ本気で目指すことを決めるならば、ちゃんと考えないと駄目なの。流されて選択したら後から後悔してしまうかもしれないでしょう? わたしはそれは嫌だから。
「君は、何になるつもりなんだ? 魔導師の娘で、錬金術なども含めて様々なことが出来るだろう。それならば目指そうと思えばなんにでもなれると思うが」
シミーレはわたしの方を見ながらそんなことを言った。
「んー、まだ将来のことは分からないよ?」
「私は君と契約をしているんだ。だから君がどういう風になりたいかなどは知っておきたかったんだが……将来的に何をするかとか」
「わたしはね、あと一年ちょっとしたら学園に通う予定はあるよ」
「魔導師の娘なのに?」
必要ないのではないか、とでもいう風にシミーレは不思議そうな顔をしている。
確かにわたしは学園に通わなくても、パパとママが居るから様々な経験は出来ると思う。それこそ通わなくてもきっとどうにでもなる。
「うん。パパがね、昔通っていた学園だから。それにわたし、学園に通ってみたいって思っているの。だからニコラドさんに習っているんだよ」
「ニコラドっていうのは?」
「パパのお友達の魔導師だよ!! 学園長がね、ニコラドさんの弟子なんだって」
「……君は魔導師の知り合いが多いな」
わたしの言葉を聞いて、シミーレは驚いた様子だった。
わたしには魔導師の知り合いが沢山いるけれど、普通ならば魔導師とは一生会わない人も多いと聞くもんね。わたしにとっての当たり前は、人にとっての当たり前ではない。それに精霊であるシミーレにとってもびっくりすることなんだなと実感した。
「うん。パパとママが魔導師だから、その関係で知り合いにいるの。学園に通う時はシミーレも一緒だからね? わたし、もっと魔法を上手く使えるようにはなりたいんだ。自分が魔導師になるかどうかは分からないけれど、なるべく良い成績は残して一生懸命頑張りたいの!」
わたしがそう口にすると、シミーレには少し呆れた顔をされる。どうしたんだろう?
「君は……魔導師の娘で、もっとなんでも出来るだろうに望む未来がそんなことか」
「そんなことっていうけれど、わたしにとって大事なことだよ? 学園生活を満喫して、良い成績を残して、それでパパとママに褒めてもらうんだ!! わたしね、学園に通ったことなんてないから凄く楽しみなの。もしかしたらお友達も出来るかなって。わたし、お友達は居なくはないけれど、魔導師だとか知らない人たちが多いんだ。でも学園だったらわたしが魔導師の娘だって知ってもお友達になれるかもしれないしね」
シミーレからすると、魔導師の娘ならもっと大きな野望でも抱くと思われていたのかな?
確かにそうなのかもしれないけれど、野望とか特にわたしにはないんだよなぁ。ただパパとママと楽しく過ごせればいいってそれしか考えていないかも。
学園に通ったら、どんな人に出会えるだろうかってそれを考えるのも凄く楽しみなの!!
パパとママとは離れて暮らすことになるのは、少し寂しいけれどね。でもユキアとシミーレは一緒だもん。それに家にはしょっちゅう帰るつもりだし、楽しみな方が強い。




