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6-6 フラグ二つ目が立ったかも?

オルレーゾの町中は静寂に包まれていた。

闇夜に紛れ移動するガットは誰とも遭遇せずに町の中央にある噴水広場まで到着した。

そこには一際立派な建物が建っていた。


「ここが迎賓館か、明かりの付いている部屋は……二つか」


正面から館を見ると二階に四つ、一階に四つの窓があり、その内の二階と一階に一部屋ずつ明かりが灯っていた。


一階の明かりがもれる窓に近づいたガットは、

「爺、敵の数は七だと思うがどうだろうか」と、問う。


「そうじゃなワシもそう感じるぞ、近くに二体、その奥に二体、二階に三体じゃな」


窓の隙間から部屋の中を覗くガット、そこは休憩室らしく二体の蜥蜴人リザードマンが寝ていた。


ガットは音を立てぬようゆっくりと窓を開くと素早く部屋に忍び込んだ。

幸い彼らは侵入者に気付いていない、眠る一体の蜥蜴人リザードマンに近寄ると首筋にある皮の薄い所を目掛け爺を突き入れる。

声帯を切られるのと同時に息の根を止められた蜥蜴人リザードマンは、暴れることなく黒い煙となりガットに吸収された。彼の暗殺技術により部屋で眠るもう一体の敵も静かに命の火を消したのだった。


部屋に灯るランプを吹き消し、ドアを開け廊下を確認する。

誰もいないのを確認し廊下を進むと、エントランスでは新たに二体の蜥蜴人リザードマンが警備していた。


ガットは腕を前に伸ばし召喚扉サモンズゲートを開く。

漆黒の渦から先ほど倒した二体の蜥蜴人リザードマンを召喚する。


「行け」、囁くように命令する。


二体の蜥蜴人リザードマンはごく自然にエントランスに進み彼らの言語で会話を開始した。

彼らは立ち位置を交代すると、警備をしていた蜥蜴人リザードマンがガットの方へ歩いてくる。

召喚された蜥蜴人リザードマンは彼らの背後へ近寄り羽交い締めにする。

そこへガットが歩み寄り二体の敵の首を切り裂いた。


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


階段を使い二階に上がるガット。

明かりの灯る部屋の前に進むと彼は躊躇なくドアを開けた。

そこは結構な広さの部屋で大きな机が置いてあった。恐らく執務室と呼ばれる部屋だろう。


「騒がしいと思ったら侵入者ですか、ここまで来たなら見張りは倒したようですね」

慌てる様子もなく指揮官のセルジェロは椅子に座ったままガットを出迎えた。


均整の取れた体格、話し方、立ち振る舞いにも品があり、伯爵はくしゃくと呼ばれるにふさわしい雰囲気を纏っていた。

七三に綺麗に分けた髪型が彼の几帳面さを表していた。


「残るはオマエだけだ観念しろ」


「この私に一対一で戦いを挑もうとは、なかなか勇敢な少年ですね」

彼は立ち上がると机の前にまわり、微笑を浮かべている。


「褒めてもらって悪いが、誰が一対一だと言った」


「おや、仲間がいたのですか、いいでしょう好きなだけ呼ぶといいです。私の剣技を披露してあげましょう」


「そうか……」


ガットは腕を前に伸ばし召喚扉サモンズゲートを開く。

漆黒の渦から二体の蜥蜴人リザードマンを召喚する。

さらに、ガットが入ってきたドアから新たに四体の蜥蜴人リザードマンが歩いて現れた。

二階を警備していた二体は一階のガットを発見し戦闘を仕掛けたが、先に倒された四体の蜥蜴人リザードマンがそれを阻止、あえなく二体も使徒となったのだった。


「その力は! まさか王族?」、驚きを隠せないセルジェロ。


「ほう、地方とは言えさすがに指揮官をやるだけはあるな、知っていたか」


「前に一度だけ拝見させて頂きました。ですが王族が何故このようなお戯れを?」


「戯れではない本気だ。この町を俺の物にしようとな」


「む、謀反ですか……、王族とはいえ王に反旗を翻すとあっては放ってはおけません。誰かは存じませんが倒させてもらいますよ」


「ああ全力で来い」


六体の蜥蜴人リザードマンが彼を囲う。

じりじりと距離が狭められ、その輪は次第に小さくなってゆく。

あと一歩で蜥蜴人リザードマンの剣が彼に届くというまさにその時、風を切る音が三回鳴った。


伯爵はくしゃくクラスの魔人である。

蜥蜴人リザードマンなど赤子の手を捻るようなものであった。

堅い皮の鎧もまるで豆腐のように切り裂く剣技。

彼の前にいた三体の蜥蜴人リザードマンは胸を切り開かれその場に崩れ落ちる。

華麗に振り返えった彼は、残りの三体も一瞬で両断した。


と、そこへ、両断された蜥蜴人リザードマンの体からククリナイフが飛んでくる。

間一髪で剣を跳ね上げた彼に、蜥蜴人リザードマンの背後からガットが飛び出してきた。

振り上げた剣を戻す余裕はない、彼は咄嗟に後へジャンプした。


「【加速】っ!」


ドンという床を蹴る音とともに弾丸のように飛び出すガット。

振り下ろされるセルジェロの剣よりも早くガットは彼の懐に飛び込み爺を心臓に深々と突き刺した。


「ぐあっ!」


ガットの体当たりにより彼は背中を壁に強打した。持っていた剣もゆっくりと手からこぼれ落ちセルジェロは黒い煙となり吸収されてしまった。


「ふぅーっ……」、大きく息を吐き出すガット。

彼も魔人との初めての戦闘で緊張していたようだ。


ガットは腕を前に伸ばし召喚扉サモンズゲートを開く。

漆黒の渦からセルジェロを召喚した。


「わが主よ、何なりとご命令を」

立て膝のポーズでこうべを垂れるセルジェロ。


「いま王と王子たちはどこにいる」


「王は首都ガビエドラにおります、第一王子のオズウェン様は中央の町ルグミアンに、第二王子のクリスター様は先日ここを訪れまして、今はテスケーノへ向かっておられます」


第二王子までで説明をやめてしまったセルジェロにガットは、

「……第三王子はどうした?」と、問う。


「第三王子は死去されましたが?」


「死因は?」


流行病はやりやまいと伺っております」


「ホッホッホ、これは都合が良いのう」と、爺が話す。


「どうしてだ爺」


「お尋ね者ならば捜索隊が編成されておったかもしれん、じゃが死亡となれば表だった動きはできぬからな。王子を狙うのは真実を知る者と直属の数名だけじゃろう」


「……なるほど」、爺の話を聞き納得したガットはセルジェロに命令する、

「俺はこの町を落とす、戦力の詳細を教えろ」


セルジェロは詳細な情報を全て話したのだった。


「……淫魔サキュバスの報告とほぼ同じだな。それでは、軍の配備を――とせよ、以上だ」


「ハハッ、仰せのままに」


ドアをノックする音がした。


「何のようだ」と、セルジェロが問う。


「南門の外で暴れていた人間を捕らえました。外からの侵入者のようです。如何いたしますか」


「今までどおりで良い」


「わかりました、失礼します。――あの見張りが見当たりませんが」


「気にしなくて良い、下がれ」


「捕らえた者はどうしている」と、ガットがセルジェロに問う。


「尋問をした後、廃棄しておりますが」


「そうか、その場所まで案内しろ」と、ガットは命令した。


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


セルジェロに先導させ捕虜収容所まで足を運ぶガット。

普通の一軒家だが扉を開けた瞬間そこから酷い腐臭が溢れだした。


ガットは鼻を押さえながら中を覗き込む。

案の定、小人族ホビツのフェルネが捕らえられていた。


既に尋問を受けていたのであろう、天井から垂れる鎖で両手を吊され、服は破れ肌は裂け体中に青あざができている。

意識はないのだろうぐったりとしている。入り口からは生死までは確認できなかった。


「こいつを連れて行く、手当をし休める部屋を用意しろ」と、ガットがセルジェロに命令する。


―・―・―・―・―・―・―・―・―・―


オルレーゾ内にある宿屋、その一室にフェルネは運ばれ治療を施された。

幸いと言っていいのか骨折などの重傷は受けていなかった。


「ん……、ここは……」


「目が覚めたか、ここは宿屋だ」

ベッドの横に置いた椅子に座っているガット。


「オレは敵に捕まって……、オマエが助けたのか」

天井を見ながらフェルネがぼそぼそと話す。


「ああ。傷が癒えたら出発するぞ安静にしてろ」


「なにも言わないんだな」


「は? 安静にしてろと言っている、耳もやられたか?」


「そうじゃないよ……、失敗したオレを責めたり笑ったりしないんだな」


「それで作戦の成功率が上がるならするが、変わらんだろ。無駄なことはしない主義だ」


「子供のクセにクールぶって……背伸びすんなよ。――なあ、名前なんだっけ」


「ガットだ」


フェルネは体を起こし彼を見ながら、

「ガットありがとう、助かったよ」と呟いた。


体を覆っていたシーツが下がり、何も着ていない上半身があらわになる。


「おまえも子供だな」


「どこ見て言ったー!」

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