「石焼き芋屋のおじさんの話」
石焼き芋屋のおじさんは20年前の不思議な話をしだした。
話しながら私に
「退屈したかな?」
と、言いながら
続きを話した。
『その美しい女性はよ、俺の自由になると言うんだよ。
何か条件があるのか聞いたらよ、
[貴方の未来は孤独かも知れない、でも今から二年間は豪華で女性にもてる人生をあげましょう!]
って、言うんだよ。
なんで俺の前に現れたのか聞こうとしたら……いなくなってよ。
俺はそれから直ぐに、変わった事ばかりを経験したんだよ。
宝くじは当たるわ、彼女はできるわ……その石ころを蹴った時に出て来たのは多分、
女神なんだよ。でも
な……あれから20年……今はこうだよ』
私はおじさんの話が面白くて
続きを聞きたくなった。
私の癖は特別なにもない。
男性の部屋は初めて見るからか
恥ずかしい物が目につく。
これらは何に使うのかな?
本は女性のグラビアヌードの載った写真集だ。
いや〜なんか恥ずかしいなあ。
そう思いながら部屋の中を家捜しするのも楽しい。
あの人はお宅なのかな?
健康な男性はこうなのかな?
不思議なビニールの袋を見つけた。
何だろう?
ベッドの下にあった。
ベッドの下には沢山のビデオを発見した。
何かな?
表紙のないビデオテープ
私はビデオの見方も分からない。
私の知らない世界が知れるようだ。
私は一年はおとなしくしてないと社会に出れない。
社会に出たら親に会いに行こうか。
「親なら親らしく娘をかばったら!」
こう、言いたいが私は親を忘れるのが良いみたいだ。
その人の部屋を見回して沢山のエッチな物を見つけた。
それらは私には必要ない。
なんかしたいなあ。
部屋からは自由に出入りができる。
私は上着を着てこのアパートの周りを歩こう。
時間もあり退屈だから……。
何か変わった物を見つけたい。
もう直ぐに17歳になる私は好奇心が旺盛だ。
部屋から出ると遠くに山々が小さく見える。
山には雪が積もっているのか白く見える。
ふうん!
以外と田舎なのかな?
日野市から少し外れた街とか言っていたような記憶がある。
道を歩いていると日中は余り歩いている人には出会わない。
道には車は往来している。
沢山の車が行き交う。
歩道を歩いて行った。
南か北か西か分からない。
道のはしっこに石焼き芋を売っているリヤカーがあった。
石焼き芋かあ……食べたいなあ!
朝から何も食べてない。
兄貴が
「外食用に毎日から千円づつあげるからな」
と、言われた。
石焼き芋のおじさんに
「一本いくらですか?」
と、聞いたら
「特別にまけるよ、300円だよ。ホクホクだあ〜」
えーっ。
300円かあ…
どうしょうかな?
「お姉ちゃんは学生さんじゃないか?」
「う……うん……まあね、でも事情がありでね、暇してんの!」
「そうかあ、芋は要らないか?お姉ちゃん暇ならおじさんの話を聞いてくれるか?」
おじさんはリヤカーの脇に座りこんだ。
「不景気だからな、石焼き芋も売れやしないよ!」
「話ってそれ?」
「違うよ、おじさんが、若い時にモテた話だよ」
つまらなそうだな。
「おじさんが若い時の話なの?興味ないな!」
「いや、不思議な話だから聞きなよ。おじさんも誰かに話したくてな……でも、話を聞いても信じて貰えなくてな」
「じゃ、つまらない話だからだよ。私も聞かないよ、ガッカリさせたら悪いから」
「じゃあな、聞いてくれたら石焼き芋をただで一本あげるよ」
「じゃあ、聞いてやるよ。私に分かるかな?」
「分かるともよ。今から20年も前の話だよ、おじさんが27歳の時の出来事だよ」
おじさんから石焼き芋を貰うんだ。
どうせつまらない話なんだよ。
私はそう決めつけて話を聞き始めた。
『20年前のクリスマスイヴの日、彼女にフラれてから女には無縁になっていたんだ。
そんなイヴの夜、
面白くもなく
イヴの夜がなんなんだよ。
石ころを蹴りながら家に帰ろうと。
そしたら
[痛い!]
と、言う声を聞いたんだ。
石ころを蹴ったら当たったんだな。
俺は
「すみません、つい、面白くなくて石ころを蹴りました」
そしたら、現れたのは美しい女でよ』
私は皆に嫌われながら生きていた。
私の人生
今は刑務所暮らし
刑務所は辛い。
私は今25歳
初めて刑務所にお世話になったのは
10代の時に鑑別所に入った。
その時には金持ちの友達の自転車を盗んで
挙げ句にバレてしまい友達から
『貧乏人だからだ、盗人が』
それに腹を立てた私は友達の顔面を殴り付けた。
15歳の時に鑑別所に入れられた。
それから一年をそこで更正の為に入っていたが
両親が相手に謝罪をすれば私は鑑別所に入らなくて済んだと監視員が話していた。
私は両親を憎み、両親とは縁を切った。
そこから出る時は両親は勿論、迎えに来ない。
私は行く宛もないが後見人がつかないと(親か保証人)出れない。
監視員の人が私に良くしてくれた。
監視員から
「内緒だからね、言うとここから出れないよ」
それを聞いて監視員の知り合いの男性を親類だと話してその人が迎えに来てくれて辛い刑務所みたいな所からおさらばした。
私はその人は良い人だと決めつけていた。
16歳の時に
私は
『新坂弘明、23歳』
の、アパートに転がりこんだ。
私はそいつへお礼のバージンをあげるつもりでいた。
つもりでいたと言うよりは覚悟を決めていた。
「都は仕事はどうする?」
「えっ?仕事か?私は高校は出てないよ。仕事有るのかな?」
「探せばあるよ、これ、部屋のスペアキーだよ。失うなよ。飯は、俺は外食だけだから、都には金をやるよ。要るものも買いなよ。あとさ、都には手を出さないから安心しなよ」
「ふうん。ありがとう。すみません」
「ここに一年は居て良いよ。保護観察は一年付くから、一年経ったら好きな所に行きな!」
私は新坂弘明を兄のように感じた。
恋愛対象ではないのが嬉しいような
なんか妙な気分になっていた。
あのさ……私はどうしたら良いのかな?
仕事もできないし
兄貴か!
私の親はどうしたのか?
悩んでなんかいないが親に憎しみが残っていた。
私は兄貴の部屋でのんびりテレビを観ていた。
自由になった事に幸せを噛みしめていた。
その日に監視員さんから兄貴の部屋に電話がかかってきた。
「都ちゃん、取り敢えずそこで世話になりなよ。そいつは俺の親類だ。真面目な筈だから心配は要らないよ。金も貰いな、支援金が出てるから一年は大丈夫だあ。なんか不安があったらこれに電話しな。電話番号は出てるだろ!またな、元気でいなよ」
「監視員さんありがとうございます。私は仕事がないからテレビを観ています。自由だから嬉しいよ。言う事を聞いていますよ」
「番号は出てるだろ!じゃあな!」
「はーい、分かりました」
都は監視員の電話に安心した。
あの人きれい好きだなあ。
部屋はきれいに片付いていた。
私は部屋を見渡した。
怪しいビデオを見つけた。
『愛人』
ビデオテープの写真は男女のあの写真
でもしっかりモザイクがついていた。
やっぱり、兄貴は男性だな。
一人でいるのも飽きてくるかも知れない。
何をするかな?
部屋から外を見た。
屋根しか見えないなあ。
アパートが沢山有るんだ。
私んちは周りには何が有ったのかな?
父さんと母さんに可愛がってもらえたような思い出ははい。
味方だってのは母親の祖母位だった。
その祖母は私が女子鑑別所に入れられてから直ぐに亡くなった。
私は悲しくて悲しくて祖母の死を聞いてからは天涯孤独で生きるんだ。
いつかは生きるを止めよう。
そんなに決めていた。
だから兄貴が現れた時には
また、少し生きようと決めた。
私は私の好きな事は知らない。
知らないと言うよりこれから友達を作り遊ぼうと考える時にあの事件が起きてしまった。