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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【15万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第一部 絆の糸編

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7話 絡め手を実力でねじ伏せる

「凍れ」


 レルゲンが命じると、ウォーターボールが氷の塊に性質を変化させる。


 試合を見ていた金髪の彼女が感心するように声を出した。


「二種同時に魔法を維持しながら、片方は性質変化までしている……」


 隣にいる白髪の剣士は、どこか懐かしいものを見るように呟いた。


「嬢ちゃん。あれが魔術戦の“基礎”だぜ。しっかり見ておくんだな」


「あれが……」


 左手の氷塊を魔力糸で空中に固定する。右手のファイアボールも同様に魔力糸を接続しているが、こちらは数が多い。


 右手のファイアボールを連続で敵の周囲に発射する。精密に制御されたファイアボールは敵へ向かって飛ぶが、どれも命中しない。

 それを見た敵はニヤリと笑う。


「何を始めるかと思えば、ファイアボールの連続射出か! それにどこを狙っている?」


 レルゲンが無言で相手を指さす。


「何を……馬鹿なことを」


 命中しなかったファイアボールが、敵の周りを取り囲むように静止している。


 発動されたファイアボールは、その時点で『工程を終了』している。

 魔法・魔術とは、本来空中で動きを止めることはおろか、追加命令どころか、維持し続けることさえ不可能なのだ。


 目の前で動きを止めた、ファイアボールの挙動が信じられなかった敵は、思考と動きを停止する。注意を向けていたはずの氷塊からも、意識が逸れる。


「なんだこれは! 一体貴様はなんなんだ!?」


「――さあな」


 ファイアボールが全方位から襲いかかる。

 爆炎と共に濃い土煙を上げた。


「はっ! この程度か! 一発食らうことを前提に回避すれば、貴様の攻撃など取るに足らぬわ!!」


「ああ、そうだろうな」


 敵がファイアボールの雨を抜ける先に選んだのは、攻撃の薄い箇所。


 ――それが罠とも知らずに。


 逃げ込んだ先には、先回りしたレルゲンが左手の氷の塊を前に構えている。


 レルゲンの念動魔術によって、氷塊を強引に変化させ、敵の全方向を囲むように氷の壁で覆った。


「なんなんだ! このッ! ふざ、ふざけるな! ここから出せぇ!!」


 敵の悲痛な叫びとともに、力任せに木剣を氷の檻に叩きつける。

 だが、氷の檻には傷すらつかない。


「こんな薄い氷が、なぜ壊れない!」


「壊れないさ。形を固定しているんだからな」


「くそ! くそっ!! 壊れろ! 壊れろぉお!!」


「審判、俺はこれから氷の檻ごと相手を焼くが、どうする?」


 手にはファイアボールを変形させた炎の大弓。そして、炎の矢を番える。


 審判が観覧席の方を目線で確認すると、主催の責任者が手を小さく上げる。


「試合終了! 勝者八番!」


 割れんばかりの歓声が会場を包む。

 曲芸じみた魔術の『応用』を目にした観客たちが声を上げた。

 その光景を見ていた金髪の彼女が、頬に汗を垂らしながら確認する。


「今の、先生も見たことある?」


「性質や形状変化は見たことはある。だが、空中で魔法を止めてから、狙いを途中で変えるのは見たことがねぇな。悪いな嬢ちゃん。さっきは基礎と言ったが、あれは正真正銘の魔術だ」


「正真正銘の魔術……」


 金髪の彼女は幼少期に、魔術と呼ばれるものは見たことがあったが、自由自在に魔法を操る者は見たことがなかった。


「まぁBグループの決勝に行けばボウズと当たる。そこで本気を引き出して見せるさ」


 白髪の剣士は上機嫌な様子で、裏手に消えていく。


「――久しぶりに楽しめそうだ」




 試合は滞りなく進み、レルゲンは順調に決勝まで駒を進めた。

 対戦相手は、先日のユニコーン出現騒ぎでレルゲンを煽った白髪の剣士。


「これよりBグループの決勝戦を開始します! ここで皆さんにお知らせします。一番と八番の決勝戦ですが、なんとお互いに! 真剣での試合を望んでいるようです!」


 決勝戦ならある程度のわがままは通る。

 どうやらお互いに考えていることは同じようだ。


「そして、二人は大会運営に直談判し、主催はこれを許可したそうです! さぁさぁ! 盛り上がってまいりましたぁ!!」


 観客が再び歓声を上げる。


「では改めまして、Bグループ決勝戦! 始めてください!」


 お互いに目線を合わせ、白髪の剣士が愛刀を一本抜いた。


 レルゲンは最初から魔力糸で古びた鉄の剣に接続し、剣を浮遊させている状態で待機させている。


「嬉しいね。こんな老いぼれに、初めからそれで戦ってくれるのかい」


「そういうアンタは二本抜かないんだな」


「おうさ。こんな楽しい戦いに、最初から全力で戦ったらもったいねぇのよ」

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