69話 拳を突き合わせて
マリーが不敵な笑みを浮かべ、迎撃の準備が整う。
ヒューゲルとアストが再びターゲットを取っている隙に、戦闘不能になった魔術師たちへセレスティアがリジェネライト・ヒールとエクストラ・ヒールを発動する。
だが、命を繋いだだけで戦闘に復帰はできないだろう。
人数が多いため、セレスティアの魔力が一気に削れる。しかし、魔力糸越しにレルゲンが魔力を受け渡し、セレスティアの消耗した魔力を補っていく。
ヒューゲルとアストに向き直ったアシュラ・ビーストは、後衛の魔術師たちに背を向けると、ヒューゲルから指示が飛んでくる。
「魔術師隊! 放て!」
「マルチ・フロストジャベリン!」
セレスティアが放つ氷の上位魔術は、ナイトとの戦闘時よりも巨大化しており、その数も十本を軽く超えていた。
これを見た魔術師たちは、喜びよりも圧倒されたような表情を浮かべたが、集中を切らすことなく中級魔術を繰り出す。
しかし、六段階目は知能が高い。わざと魔術師たちに背を向けて、攻撃を誘っていたのだ。
アシュラ・ビーストは迫り来る魔術を横に飛ぶことで回避し、セレスティアが瞬時に射出角度を変える。
何本かの氷槍がアシュラ・ビーストに命中する。だが、アシュラ・ビーストは構わず向きを変え、セレスティアへ向かって全力で突進してきた。
ヒューゲルとアストが突進を止めようと間に割って入るが、軽々と飛ばされてしまう。
他の前衛は回避するのに精一杯だ。
「来るぞ!」
「ええ!」
猛然と突き進んでくるアシュラ・ビーストを真正面からレルゲンとマリーが受け止めに入る。
瞬時にセレスティアが防御系のバフをかけ、ミリィがダウン・ザ・ピッチでアシュラ・ビーストの突進速度を下げた。
それでも突進を止めることなく、レルゲンとマリーに突っ込んでくる。
レルゲンとマリーは魔力解放を行い、剣と足に魔力を集中させて構えを取る。
二人は剣を縦に構え、両手で押さえ込むようにして衝撃に備える。
アシュラ・ビーストが衝突する。
身体を押し潰さんとする重撃を真正面から受け止め、地面を抉りながら後退し、それでも最後にはアシュラ・ビーストの勢いを殺し切った。
「おお!!」
周囲から感嘆の声が漏れるが、ここで止まらずに反撃に出る。レルゲンがアシュラ・ビーストの前足へ一撃を叩き込み、続けざまに下段から剣を振り上げた。
腹部が露わになった瞬間、レルゲンがセレスティアを呼ぶ。
「セレス!」
「お任せを! マルチ・フロストジャベリン!」
複数の氷槍をアシュラ・ビーストの腹部に向けて射出し――全て命中。
後方へ吹き飛ばされたアシュラ・ビーストは、地面を転がりながら体勢を崩す。
体勢を立て直そうと必死にもがく中、ヒューゲルが吠えた。
「総攻撃! かかれ!!」
吹き飛ばされた先に待っていたヒューゲルとアストが腹部に向けて攻撃を入れ、マリーも自らアシュラ・ビーストを神剣で斬りつけた。
無防備となったアシュラ・ビーストへ猛攻を加えるが、あと一歩が届かない。体勢を立て直し、アシュラ・ビーストがレルゲンたちを睨みつけている。
レルゲンとアシュラ・ビーストの間には、誰もいない一直線の空間が広がっていた。
――もう、指示はいらない。ここで決める!
魔力を乗せた黒龍の剣が赤く光り、刀身が急激に伸びてゆく。
「その身に受けろ」
繰り出された光線攻撃がアシュラ・ビーストを飲み込んでいき、威力が収まることなく後方の玉座まで一直線に貫き、その全てを破壊した。
これに耐えきれなかったアシュラ・ビーストは魔石へと還り、見事中間地点の十層のボスを打ち倒すのだった。
歓声が上がり喜んでいる中、ヒューゲルはレルゲンの下へ、アストはマリーへ歩いていき拳を合わせた。
読んで下さってありがとうございます!
もし続きが気になりましたら、ブックマーク、評価をお願いします!
ぜひ皆さんで作品を盛り上げて下さいね!
よろしくお願いしますー!




