67話 アシュラ・ビースト攻略戦
固く閉ざされた大扉がゆっくりと開いていく。
薄暗い部屋の奥から、青い火でできた照明が順に灯っていき、室内を照らしてゆく。
部屋の最奥にある玉座とも取れる位置に六段階目の魔物――アシュラ・ビーストが鎮座している。
閉じられていた瞼が上がり、赤い眼光が光り輝いた。
室内に咆哮が響き渡り、アシュラ・ビーストが起き上がる。
「グガァァアアアア!!!」
硬直まではいかないが、存在感も相まって凄まじい圧力を放っていた。
しかし、経験豊富な冒険者たちは圧に負けることなく、アシュラ・ビーストに突っ込んでいく。まずは作戦通り、ヒューゲルとアストたちが前衛として肉薄し、ターゲットを取りに行く。
マリーとレルゲンは中衛に控え、アシュラ・ビーストの様子を伺う。
「ねぇレルゲン、あの魔物って」
「ああ、アシュラ・ハガマと比べると背中の鉱石が鋭くなっているのもそうだが、足が長くなっているな」
長くなっている足の関節には外側に突き出すように鉱石が飛び出ている。防御力こそアシュラ・ハガマを受け継いでいるが、速度を活かし、鋭利な背中を押し付けるような攻撃をしてくるかもしれない。
素早く動くと事前に聞いていたが、亀のような幼体であるアシュラ・ハガマからは想像できない進化を遂げていた。
それに加えて、アシュラ・ハガマの時は増幅器代わりになっていた尻尾の付け根部分までもが鋭利な甲殻と鉱石で覆われている。
どうやって近接攻撃を入れるつもりだ? と、レルゲンがヒューゲルを見つめると、無属性魔術をアストとともに発動し、アシュラ・ビーストを引きつける。
「「ヘイト・ダミル!」」
ヘイト管理による後衛のサポートがメインの立ち回りで、自ら有効打を入れることはないが、後衛が攻撃する隙を作るのが目的のようだ。
――なるほど。前衛で攻撃を入れるより、後衛の魔術師による火力を主軸に攻略するつもりか。
レルゲンは納得し、可能な限り自身の魔力を後衛へ回した方がいいと判断する。
後衛にいるセレスティアとミリィの元へと素早く向かった。
「二人とも、初めから全開では飛ばさずに魔力をできるだけ温存してくれ。足りなくなったら俺から受け渡す」
二人とも頷き、他の術師と同様に中級の攻撃魔術を詠唱して準備する。
「私たちはこのまま待機?」
「そうだな、前衛を突破されて、後衛に攻撃が来た時は対処しよう。それまではここにいていいはずだ」
「なんか歯痒いわね」
「初めてのボス攻略だからな、新参者は参加させてくれるだけありがたいらしいぞ?」
「面倒くさいわ、こういう決まりごと」
「このボスが終わったら俺たちだけで進めてしまってもいいだろ。他の攻略を待っていたら間に合わないしな」
「我慢はここだけってことね」
「そうだ」
ある程度アシュラ・ビーストが後衛に対して背を向けたタイミングで、ヒューゲルが後衛の魔術師たちに指示を飛ばす。
「魔術師隊、一斉攻撃!」
詠唱を完了していた魔術師たちが一斉に攻撃魔術を発動する。一つだけやけに大きい氷の槍がアシュラ・ビーストに放たれたが、これはきっとセレスティアのものだろう。
様々な種類の攻撃魔術がアシュラ・ビーストに直撃し、大きく怯んだ。
「おぉ! 効いているぞ!」
魔術師たちが歓喜の声を上げるが、有効な攻撃は恐らくセレスティアのフロストジャベリンだけだ。
アシュラ・ビーストが後衛の魔術師たちへとターゲットを変更する。すると、ヒューゲルとアストが再びヘイト管理のために無属性魔術を発動する。
「「ヘイト・ダミル!」」
一瞬、アシュラ・ビーストがヒューゲルとアストに視線を向けたが、ターゲットの変更ができない。
そのまま背中の鉱石が紫色の光を放ち、口元に集まってゆく。
「光線攻撃だ! みんな退避しろ!」
ヒューゲルの言葉に慌てて固まっていた後衛部隊が散っていくが、これが悪手となる。
口元から分割して発射された光線攻撃は、後衛の魔術師部隊の半数以上を戦闘不能にした。
セレスティアとミリィに襲いかかる光線攻撃は、黒龍の剣で受け止めたレルゲンが念動魔術で天井へと軌道を変更し、天井から瓦礫が落下してくる。
それを見たヒューゲルは、レルゲンに後衛の守護を任せる指示を出す。
「レルゲン君! また光線攻撃が来たときは後衛の防御をお願いしたい!」
「了解」
残った後衛部隊へ向けてレルゲンは短く指示を出す。
「光線攻撃が来た時は俺の後ろに集まってくれ。分割されると全員は護れない」
残った魔術師たちが、レルゲンの近くに集まり始める。無属性魔術のヘイト・ダミルを発動したヒューゲルとアストへ、アシュラ・ビーストのターゲットがようやく戻った。
ここでレルゲンがセレスティアに魔力糸を繋ぎ、思念を飛ばす。
『セレス。足りなくなった魔術師の分を補ってやってくれ。他の魔術師は気づいていないが、主なダメージはセレスの魔術だ』
『そうですね。次からは氷の上位魔術を使います』
『悪い、負担をかける』
『いいえ、中級の魔術だけでは効果が薄いですから。逆にありがたい申し出です』
二人は顔を見合わせ、笑みを浮かべた。
レルゲンはマリーに向きを変え、次の作戦を伝える。
「次の魔術攻撃でまたこっちに攻撃が飛んでくる。光線攻撃は俺が散らすが、突進してきたときは二人で抑える。準備しておいてくれ」
「ふふっ、なんだか突進が来そうね? わかったわ。六段階目の魔物と力比べなんて、ちょっと楽しみかも」
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