56話 高難易度ダンジョンの乱立
屈託のない笑顔で、マリーが再び家出宣言をすると――女王は少し苦笑いを返した。
それから公務に戻ったレルゲンたちは、しばらく部屋に缶詰となる。だが、カノンがレルゲンたちの部屋をノックして入ってくる。
「やぁ諸君! 今日は耳寄りな情報を持ってきたぞぉ!!」
「どんな情報?」
カノンの話によれば、この前行った水遊びの後から、世界各地でダンジョンが大量発生しているらしい。
「遺跡の件と関係あるのかしら……?」
「恐らくね、どうだい? 気になるだろう!?」
「気にはなるけど、ダンジョンは言わば国の資産だろ? 他国のダンジョンに勝手に入って資源を持ち帰ったら、問題になるんじゃないか?」
「今どこの国でも冒険者を多く集めて、国の活性化を考えているようだよ。特需として冒険者には、国を跨いでの攻略が許可されている。もちろん獲得資源の二割以上は徴収されるけどね」
「でも俺たちは冒険者じゃなくて、王族関係者だろ……」
「その点でしたら問題ありません。まだこの王国は設立したばかりですし、他国とのやり取りも途中です。お母様と王女である私たち――そして貴族諸侯が新興国として各国に働きかけてはいますが、未だに私達の国を認めていないところも多くあります。今でも中央と言えば、王国ではなく、ギルド本部がある街のような認識が大半ですよ」
「なるほど……国として認められていないことを逆に利用するわけか」
ダンジョンといっても難易度が場所によって大きく変わる。
二、三段階目までしか出現しない初心者用や、四、五段階目が跋扈する最上級のものまで多種多様だ。
今回、無数に現れたダンジョンは、後者の高難易度が大半のようだった。カノンによると、既に中堅冒険者が、初心者でも高難易度でもない数少ないダンジョンを取り合っているらしい。
「どうだい? 君たちは高難易度ダンジョンよりも危険な深域を一度攻略している。行ってみる価値はあると思うよ。こんなこと言ったら、間違いなくお母様に怒られるけどネ」
「私は行きたいけど、お母様が許すかしら?」
「そうですね……そこが一番の懸念です」
血の気の多い冒険好きの二人はさておき、溜まりに溜まった内政はどうするのかと考えるが、頭のいい二人のことだ。なんだかんだでダンジョン攻略まで漕ぎ着けてしまうのだろう。
となるとレルゲンがやっておくべきことは、二人が女王に交渉している最中に、冒険者としてギルドに登録――そしてすぐにダンジョン攻略まで可能な状態にしておくことだろう。
そうと決まれば善は急げだ。
「二人とも、ダンジョン攻略行きたいんだろ?」
二人とも頷く。
「なら行けるようになる前に、俺の方でもギルドに話を通しておくよ。準備も含めてな」
「ほんと!? 助かるわ! じゃあお母様にはこっちから何とか説得しておくわね」
こうして高難易度ダンジョンの攻略が幕を開けようとしていた。
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