53話 水着で遊んだっていいじゃないか!
第二部、スタートです!
よろしくお願いします!
ナイトとの一件が終わってから、王国には平和な日常が戻ってきていた。
そんな中、平和な日常に飽きたマリーが不満を漏らす。
「刺激が足りないわ。何か面白いことないかしら」
「せっかく暗殺騒ぎが終わって元の日常に戻ったんだから、少しは満喫したらどうだ?」
「そうですよ? ただでさえマリーは王国を飛び出して空けていた日が多いのですから、その分きっちり仕事をしてもらいませんと」
レルゲンとセレスティアがマリーの不満を流しながら、自身に割り当てられた公務を片付けるためにペンを走らせる。
セレスティアはいつもの服装に眼鏡を掛け、やる気に満ちていた。
「これが終わったら少し休憩しましょう……? 毎日休みなしでこの作業はさすがに疲れたわ」
「なら今のうちにお茶でも準備しておくか。二人とも紅茶でいいか?」
「お願いするわ」
「お願いします」
公務をこなしながら、意識を少し割き、念動魔術で茶葉をポットに入れながらお湯を沸かす。
それを眺めながら、マリーは一つ気になることがあるようだ。
「そういえばカノンは、また研究所で何かやっているのかしら?」
「カノンは深域で水源確保のときにやっていた刻印型の召喚魔法陣を、こちらでも使えるように組み替える計画を考えているようですよ」
「楽しそうにやっている姿が目に浮かぶわ……」
残り少ない書類の確認をしながら、マリーが一つの案を思いつく。
「みんなでどこか遊びに行けたらいいのにね――そうだ! 深域にまた行くっていうのはどう?」
「また腕試しに行くのか?」
「違うわ。水神様のところで水遊びをしに行きましょうよ!」
「なるほど……? 確かに水神様のところは魔物が寄り付かないですし、お忍びで行くには絶好の場所かもしれませんね」
セレスティアまで乗り気になってきた。
レルゲンも彼女たちの希望を無下にできなくなる。
「よし、これで昼前の仕事は終わりでいいか。二人とも水遊びって言うけど、濡れても平気な服なんて持っているのか? 水神様に頼めば遊ばせてくれるとは思うけど」
「ないわ。だからこれから用意するのよ」
「そうと決まれば仕事を早く片付けて、遊びに行く服を見繕いましょう。もちろんあなたも付き合ってもらいますよ? 騎士様?」
「わかったよ。じゃあ早く終わらせて買いに行こう」
「やった!」
それからというもの、マリーの作業効率が爆上がりし、セレスティアが苦笑いをしていた。
公務が終わり、レルゲンとマリーが以前買いに行った服屋を、王宮まで出張させて実際に試着することに。
マリーとセレスティアの他にも、カノンが噂を聞きつけやってきていた。
「カノンまで服選びに来るなんて珍しいですね」
「まあねー、ここ最近はずっと忙しかったから、たまには癒しも必要なのサ」
三人ともやる気のようで、レルゲンに審査員役をお願いすることになった。
だがレルゲンは、普段見ない女性の肌を視界に入れてしまい、いたたまれない気分になっていた。
始めはマリーが水着に着替えて登場する。
白をベースに、胸元が開いたものに黒のラインが入っているもので、レルゲンには、下着との違いがほとんど分からなかった。
さすがに恥ずかしかったのか、マリーが腕を抱きながらレルゲンに問う。
「やっぱり攻めすぎ……かな?」
「よく似合っているとは思うけど、ちょっと目のやり場に困る」
「そうよね……? やっぱり変えてくるわ」
お互いに目を逸らしながら顔を赤くする。
一旦マリーは別の水着に着替えてくるようで、次はセレスティアが着替えを終えてレルゲンに見せてくる。
マリーとほぼ同じタイプの水着で青をベースにした装いとなり、白い半透明のレースのような布を腰に巻いている。
「どうでしょうか?」
「よく似合っていると思うよ。セレスと言えば青だし、その半透明のやつも上品に見える。ただ、マリーもそうだが、ちょっと露出が多くないか?」
「男性はレルゲンしかいないのですから、私は構いませんよ?」
「俺が構うんだが……」
「それなら私はこれで行こうと思います」
「俺の話……聞いてるか?」
「もちろんです。あなたの意見で決めました」
全く引かない第一王女は強行する様子。
そして、最後の登場となったカノンはというと……
「待たせたな助手君! 真打登場サ!」
紺色の生地で覆われているカノンは、身体のラインがくっきり出ているものの、肌の露出は少ない。水の抵抗も少なく見える。
まだ発展途上とも言える体つきは、目のクマを除けば健康的な装いと言えるだろう。
「おぉ、水遊びにはうってつけの格好だな。いいと思う」
「ふふん、そうだろう! 私は水着選びでも一流なのサ」
得意気に鼻をフフンと鳴らす。
結婚したての彼女たちには悪いが、勝負は決した。レルゲンが宣言する。
「勝者、カノン王女」
「「なんでよ!」ですか!」
二人が猛抗議を上げ、レルゲンに詰め寄る。
それでも――刺激が強すぎた。
右手を掲げてカノンが勝ち誇る。
負けた二人はというと、カノンの前に崩れ落ちた。
遊びに行く当日。
王国を転移させたときよりも、縮小された転移魔法陣を起動して、再び深域にやってきたレルゲンたち。
水辺に立つマリーとセレスティアの白い肌が反射し、深域とは思えないほど穏やかな時間が流れていた。
深域ともあれば、武装をしっかり準備するのが当たり前だが、他の持ち物は魔力揮発剤や飲料タイプの回復薬。
水着と日よけ用の装備一式と、深域には似合わない軽装での出発となった。
水龍に事情を説明して、湖で一日過ごすことを許可してもらう。
着替え終わった一行を見た水龍が、高笑いをしながらレルゲンたちを出迎えた。
「そんな軽装でこの深域に来る人間は、お主たち以外にはいないだろうよ。よいよい、強き者たちよ。今日はゆるりと楽しんでゆけ」
「ありがとう水神様。一日だけお邪魔する」
天気は快晴。風は穏やかで、まさにお出かけ日和だと言っていいだろう。
肌を必要以上に焼かないように、日焼け止めの軟膏を塗るらしいのだが、自分では背中に手が届かない。
背中まで布で覆われているカノンであれば自分で全て塗れるが、マリーとセレスティアはそうはいかない。
女性陣同士で塗り合えばいいかと考えたが、彼女たちはそれを許さなかった。
「レルゲン――背中まで手が届かないので、塗って下さいますね?」
セレスティアがレルゲンに日焼け止めを渡す。
「マリー、頼めるよな?」
「嫌よ、私も塗ってもらうんだから」
「なぜだ……」
「妻の肌を気遣うのも夫の役割ですよ」
カノンを見て頼む。
「カノン……頼め」
「お断りサ! 夫婦でイチャイチャしたまえよ」
レルゲンが頼み切る前にカノンに拒否される。
「念動魔術で塗るのもダメよ」
「そうですね。しっかり染み込まないかもしれません」
「はぁ……わかった、やるよ」
両手を合わせるマリーとセレスティア。
拒否したカノンはというと、既に初めて見る水龍と何やら楽しそうに話し込んでいる。レルゲンに逃げ場はなかった。
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