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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【15万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第一部 絆の糸編

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53話 天才魔術師の成り上がり

「本当に皆さん、王国のために尽力して下さり、ありがとうございました」


 最後の戦いから数日後、傷が癒えた頃に女王陛下から感謝の言葉が述べられた。


 王国の水問題はカノンの尽力により復旧工事が進んでおり、深刻な食糧不足に陥る寸前で解決へ向かっているようだ。


「ベンジー騎士団長亡き後、現在は空席のままですが、ハクロウ副団長を騎士団長に昇格。そして騎士レルゲン――あなたを副団長に任命致します。よろしいですね?」


 二人が同時に答える。


「「謹んで拝命致します」」


 ナイトの討伐と、王国を狙った数々の暗躍が終了したことを祝して、宴が開かれた。


「しっかし、俺がボウズ直々の上官とはねぇ……功績を考えたら普通逆じゃねぇか?」


「私専属の騎士ってだけで、今まで普通の騎士と同じ階級なんだから妥当でしょ」


「いやぁ……俺、片腕無くなってるしよ……」


「それなんだがハクロウ、無くなった左腕について話があるからまたあとで」


「ん? ここじゃダメなのか?」


「まあな」


「まぁいいか。んじゃ、嬢ちゃんたちをあまり待たせるなよ」


「ああ」


 短い挨拶だったが、一時は死にかけていたハクロウの表情も晴れやかだ。貴族に挨拶をして回っているマリーを見つけ、半ば強引に話しかける。


「マリー、ちょっといいか?」


 周りの貴族たちに別れを告げて、マリーがレルゲンの前に来る。


「どうしたの?」


「俺と一曲、踊ってくれるか?」


 その直球な物言いに、マリーは少し驚いた表情をしたが、すぐにレルゲンを見つめ返し、返答する。


「喜んで」


 簡単な踊りではあったが、マリーの笑顔は眩しく、また幸せそうな顔をしている。


 その瞬間だけは、レルゲンとマリーだけの空間だった。もちろん他の貴族たちも一緒に踊ってはいたが、周りも気を遣って少し距離を空けてくれている。


 魔力糸を繋いで、二人だけの会話が進んでいく。


『マリーと踊れて良かった』


『私も、公の場であなたと踊れたのは本当に嬉しいわ。セレス姉様のこともあるし…』


『今は周りの目は気にせずに一緒に楽しもう』


『そうね』


 二人だけにしか聞こえない、踊りながら交わす魔力糸での思念会話は、心の距離の近さを象徴していた。


 マリーとの踊りが終わってから、セレスティアの姿が見えない。


 気になったレルゲンは、少し辺りを見回して彼女を探すが、どこにも姿は見当たらなかった。

 女王に尋ねてみたが、居場所はわからないらしい。


 思い当たる所はあと一つ。

 ――セレスティアと初めて会った中庭。

 初めて念動魔術の物質分離が成功し、セレスティアに声をかけられた場所だ。


 そこには、やはり見知った後ろ姿があった。

 初めて会った時にも見た、月光を艶やかに反射する青く長い髪。

 一人で椅子に腰掛ける姿は、一つの絵画を見ているような気分になる。


「やっぱりここにいた」


 セレスティアが少し寂しそうな表情で振り向き、レルゲンに返答する。


「探しましたか?」


「セレスが見当たらなかったから、いるとしたらここかなって」


「あなたはマリーと踊りました。やはり私のこの想いは、空回りだったのでしょうね」


 セレスが薬指に付けられた、魔石龍から貰った指輪を見つめる。


「セレス。この指輪、見てくれるか?」


 ゆっくりとレルゲンの小指から指輪が外される。セレスティアは、もう見ていられないと顔を逸らす。


「セレス――頼む。もう一度だけ見てくれ」


 レルゲンがセレスティアに頼むと、嫌々ながらも目を開いてレルゲンの手を見る。


 それを見たセレスティアの頬に、一筋の涙が流れ、二人の影が重なった。

 夜闇の星々に照らされた二つの指輪は、共に同じ指で輝いていた。


 後日、セレスティアがナイトとの戦いで新しく覚えたディスペルで、隠蔽魔術であるハイド・スペリアで隠れていた魔族たちを炙り出し、残党は全て討伐された。


 また、ナイトの魔術工房の調査から、王国の転移方法が記載されている設計図と、魔力揮発剤の簡易的な生産方法が発見された。

 そして、カノンの研究が進み、王国全体を包む転移魔法陣の再構築に成功する。


 転移に必要な魔力はレルゲンが担当し、王国を元の位置に戻した。

 この短期的な王国転移事件に便乗して、王国の転移前の位置へ動きを見せる国も中にはあったようだが、いざ移転するタイミングで王国が戻った。

 その動きによって両国の関係が悪化したのは、また機会があれば語るとしよう。


 国が元に戻り、商人や観光に来る人々が戻り、全てが元に戻ろうとしていたが、決定的に変わったのが一つ。


 マリーがレルゲンとの挙式を行った。

 そして、その後まもなくセレスティアも式を行い、相手は同じ副団長であるということから、国民は一時騒然となった。


 だが、この一連の事件を解決した英雄であることが広まってから、事態はすぐに鎮静へと向かった。


 レルゲンたちの中央王国はまだまだ発展途上。まだまだ問題は山程出てくる。

 それでも、二人の王女が望んだ未来を叶えるために――レルゲンはまた喜んで走り続ける。

第一部の最後まで読んでくださりありがとうございます!

ここまで読んでくださったあなたは、間違いなく本作のファンです!


さぁ! 勇気を出して、評価とブクマを入れて!


次から第二部の高難度ダンジョン編が始まります!

引き続きよろしくお願いします!

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