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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【16万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第一部 絆の糸編

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19話 本音のやり取り

 この場にいる全員が、偽名を使ってレルゲンが身分を偽っていたと知り、旧王朝の王子だと承知していたということだ。


 もしレルゲンが女王に褒美を願った場合、そこで命を落としていたかもしれない。

 なおのこと、レルゲンは表情には出さずとも、肝を冷やしていた。


「ありがとうございます。では『私も本音』でお話しましょう。陛下、私をこのマリー様の筆頭騎士にして頂きたく存じます」


 マリーから殺気にも似た視線がレルゲンに送られ、ハクロウに至っては笑いを必死にこらえている。

 女王は眉間にしわを寄せながら、レルゲンに問いかける。


「理由を聞いてもよろしいですか?」


「私の見立てでは、未だマリー様を狙った賊は健在です。暗殺者と召喚魔方陣を用意した人物は別にいると考えております。それではマリー様に再び魔の手が迫るのは必然――私は、マリー様をこれからもお護りしたいのです」


「……なるほど。それほどまでに我が娘を案じてくださるとは。いい従者を持ちましたね。マリー」


「はい、お母様」


 マリーは明るく返事をしたが、その声にはわずかに苛立ちが滲んでいた。


 おごそかな雰囲気に割って入ったのは、ハクロウの前にいる騎士団長のベンジーだった。

 一歩前に出て、女王の前で膝を付く。


「ベンジー騎士団長。発言を許可します」


「私もレルゲン殿を歓迎いたします。しかし、我らが騎士団はまだ若い年齢の者が多い。反発する者もおりましょう」


「何か案があるのですか?」


「はい。ここは手っ取り早く、レルゲン殿の実力を示して頂くのはどうでしょう? 私と一騎打ちで戦って勝てば、この場にいる騎士団の面々は納得すると思われます」


「ふむ……レルゲン殿はハクロウ副団長に、闘技大会で勝利していると聞いておりました。実際にどれほど強いのかはまだ見たことがありません。

本当にマリーを託すに足るか、この目で確かめさせて頂きましょうか。異論ある者は?」


 女王の決定に、誰も口を挟む者はいない。

 ベンジー騎士団長との模擬試合が執り行われる手筈となる。


「ではこれにて謁見を終了。大訓練場にてベンジー騎士団長とレルゲン殿の試合を始めます。両者、すぐに準備を始めて下さい」


「「御意」」


 大訓練場の控え室で、マリーがレルゲンに怒声をぶつけた。


「もう! 本当に余計なことしてくれたわね! なんで私を抜きにして、話が進められているのよ!! 一言くらい相談してくれてもいいじゃないの! はぁ……」


「絶対にマリーは反対すると思ったから」


「当たり前じゃない! そもそも中央に来ることすら渋っていたのに……まったくもう」


「事情が変わった。やっぱりマリーをここに置いて別れることはできない」


「どういう意味よ?」


「マリーが今までどんな生活をしていたかは知らないが、殺気にも似た空気がわずかだが漏れ出ていた。――相当に強く怨まれているぞ」


「呆れた……私、自分のことは自分で何とかしたいのだけど」


「そいつを突き止めて、マリーの安全が確保されたら俺は去るよ」


「駄目よ! 私の騎士を志すなら、文字通り死ぬまでやってもらうんだから」


 横で聞いていたハクロウが口笛を吹いてからかった。


「熱いねぇ嬢ちゃん。これじゃ今生の誓いだぜ」


「それくらいの覚悟を持ってもらわないと困るってだけよ。さっさと勝って、私の騎士になっちゃいなさい」


「お任せを、姫」


 レルゲンが大げさに騎士礼をすると、マリーはふんっとそっぽを向いて恥ずかしい気持ちを誤魔化した。


 やることは変わらない。

 マリーを護り続けると決めた以上、ここで足踏みはできない。


 出自はもう知られているんだ。

 始めから念動魔術を使って飛ばしていこうと心に決める。


「悪いなボウズ。あれは騎士団長が戦いたいだけなんだよ」


「そうだろうな。見ればわかる」


 十本の剣を魔力糸なしで浮遊させて訓練場の中へ入る。


 自信に満ちた表情に、長身ながらも筋骨隆々。

 防具は最低限で、武器はロングソードが一本のみ。

 中央王国の騎士団長にまで上り詰めた男が、あまりにも軽装なことに、レルゲンは一種の不気味さを感じ取った。


 審判が試合開始の宣言をする。

 勝負の前に、ベンジーが口を開いた。


「付き合ってもらって悪いな、レルゲン殿」


「報酬は頂きますよ」

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