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亡国の天才魔術師レルゲンの成り上がり~孤独だった俺を救ったのは、命がけで護った敵国の王女でした~【19万pv作リライト版】  作者: 雪白ましろ
第三部 魔界突入編

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173/213

173話 どうしたら敵戦力を削れる……?

 声をかけられただけの圧で、レルゲンたちは止まれと言われたように身を硬くする。


「ねぇ、そこのエルフたち。なんで普段剣なんて毛嫌いしている癖にそんなに魔剣を何本も持っているのかしら?」


 返答を誤れば即戦闘となる。

 一瞬の静寂が辺りを包んだ。


「この人変わってるんです。エルフの里でも折り合いがつかなくて、結局私たちは付いてきたんです」


 セレスティアが他の誰かが答える前に直ぐに返答すると、ヴァネッサと呼ばれていた悪魔はレルゲンをじっくりと観察するように眺める。


「あなたみたいな爪弾き者は私好きよ! 良かったらこれから開催する奴隷市にいらっしゃいな。待ってるわよ」


 笑いながら肩を叩き、上機嫌でヒラヒラと手を振って去っていく。

 マリーがホッと胸を撫で下ろすと、レルゲンに参加しないだろうと思いながらも、気持ちを抑えられなかった。


「あぁ、面倒事の塊だからな。参加するつもりはないよ」


「そう。わかってはいたけど、もし参加するなんて言い出したらどうしようかと思ったわ」


「悪魔たちがどんな取り引きをしていようが関係ないからな。物資も集まったし、俺達は先を急ごう」


 街を出ようとヴァネッサとは反対側へと進んで行くと、聞き逃せない会話をする悪魔の会話が耳につく。


「聞いたか? 『魔王軍幹部』のヴァネッサ様がこの街で新しく魔王軍に引き入れる面子を集めるんだってよ! 奴隷の中で魔力が高い奴を何体も仕入れているらしい」


 ――魔王軍幹部だと……?


 レルゲンの肩を叩いた悪魔が魔王軍幹部だったとは思いもよらなかったが、全員がヴァネッサの歩いていった道を見つめる。


「どうしますか?」


 セレスティアが心配そうな表情を浮かべて確認するが、どちらでもメリットとデメリットが混在する状況に、レルゲンは頭を悩ませた。


 ――今ここでヴァネッサを討ち取れば、魔王軍の増員も防げる一石二鳥だが、あの悪魔を今の俺たちで倒すことができるのか……?


 仮に倒せたとしても魔王城までの距離がまだ正確に掴みきれていない状況で、魔王軍幹部を倒したとあればそれは間違いなく勇者と断定される。


 ――どうするのが一番危険なく相手の戦力を削ぐことができる?


 するとディシアが地平線まで魔王城がまだ見えないところから、おおよその概算を計算して伝える。


「最低でも魔王城の距離はまだ百キロ以上はありますので、敵が転移の術式を持っていないのであれば報告まで数日は最低でも猶予があります。今のうちに倒しても、後で倒すのであれ同じことです。私はいずれ倒すべき相手を、ここで野放しにしておくのは得策ではないと思いますけれど」


 レルゲンはディシアの言葉を聞き、再び思考を巡らせる。


 そもそも、ヴァネッサの討伐が可能なタイミングがあるのかが微妙な状況だ。

 これから開催されると言われている奴隷市で、どのように魔王軍の面子を集めるのか次第で動きが変わってくる。


 何はともあれ参加しないことには討伐の可否すら判断がつかない。

 マリーは反対していたが、レルゲンは思い切って参加してみるべきだと考えた。


「マリー、奴隷を買うつもりはないが、奴が魔王軍幹部だと話が変わってくる。倒せるかどうか判断するためにも、奴隷市には参加するべきだ。悪魔とはいえ、命を売り買いしているところに足を運ぶ抵抗感は理解できる。俺だってできれば参加したくない。だが、今はその気持ちを押し殺してでもやらなきゃいけないことがある気がするんだ」


 レルゲンが真っ直ぐ見つめながら話すと、

 マリーは少しばかり表情を曇らせたが、それでもレルゲンを見つめ返す。


「気を使ってくれてありがとう。でも、そこまで言われなくてもわかってる。動きを探るだけになったとしても、チャンスがあれば掴みに行くべきだわ」


 セレスティアと召子も敵の素性を知るだけになったとしても、いつかは倒さないとならない敵ならば、討伐の機会を掴みにいきたいと思う気持ちは同じようで、レルゲンとマリーを見て力強く頷く。


「――行こう」


 レルゲンたちは、奴隷市が開かれる路地裏へ歩みを進めた。

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