第85章 ―― 嵐の後の流星雨 ( 後編 )
言葉が終わった瞬間――
巨大な球体をヴァン・ティエンへ向かって投げ放った。
青い雷を周囲へ纏った巨大な球体が――
猛烈な速度で回転しながら落下していく。
その周囲の空気は――
恐ろしいほど圧縮されていく。
小惑星ほどもある巨大な球体を前にして――
ヴァン・ティエンの眼差しには、一切の揺らぎがなかった。
星雲天聚を――
強く握りしめる。
その瞳には――
決意だけが満ちていた。
ゆっくりと――
身体を低くする。
星雲天聚を後方へ引く。
巨大な球体は――
どんどん近づいてくる。
さらに――
近く。
あと僅かで――
触れる。
その瞬間。
ヴァン・ティエンは――
一切迷わず、星雲天聚を力いっぱい振り上げた。
「ドォォォォォォン!!!!」
星雲天聚と――
巨大な球体が真正面から激突した。
二つの力が――
一気に爆発する。
凄まじい衝撃波が周囲を薙ぎ払い――
大地の一片一片を吹き飛ばしていく。
ヴァン・ティエンは――
瞬く間に押され始めた。
あまりにも巨大なエネルギーが――
杖身を強烈に押し潰す。
両足が――
田畑の地面へ深く沈み込んでいく。
全身の骨や関節が――
「パキ……パキ……」
と乾いた音を立てる。
千斤にも及ぶ圧力。
傷ついた腕から――
血が流れ落ち、杖身を赤く染める。
「ゴフッ……」
ヴァン・ティエンは――
暗い血を吐き出した。
両膝は――
すでに地面すれすれまで落ちている。
回転する雷の球体が――
荒れ狂いながら、青い雷を放つ。
その雷が――
ヴァン・ティエンの姿を飲み込んでいく。
そして――
彼を灰へ変えようとしていた。
遠くでは――
ベリオスが口元を歪める。
勝利を確信した笑み。
だが――
その生死の瀬戸際の瞬間。
ヴァン・ティエンの瞳の奥深くから――
二色の光が突然、激しく爆発した。
青と白。
それは――
ただの肉体の力ではない。
前世から受け継いだ戦闘本能。
そして――
決して倒れることを許さない、強靭な意志。
ヴァン・ティエンは――
空間を引き裂くような咆哮を上げた。
低く――
重く――
凄まじい威圧を孕んだ声。
「アアアアアアアアアアアアッ!!!!」
星雲天聚の全ての光が――
一気に爆発した。
ヴァン・ティエンは――
残された全ての力と、全身の神経を極限まで引き絞る。
そして――
巨大な球体自身が持つ回転運動。
さらに――
大地を足場として利用し。
身体を捻り――
星雲天聚を大きく振り抜いた。
力任せではない。
相手の力そのものを――
利用した一撃。
「ウオォォォォォン!!!!」
巨大な雷球が――
強制的に軌道を変えられた。
一瞬――
ほんの半秒ほど、その場で止まる。
そして――
次の瞬間。
狂ったように――
逆方向へ回転し始めた。
そのまま――
ベリオスへ向かって一直線に飛んでいく。
しかも――
先ほどより、さらに速い。
ベリオスは――
この反転を完全に予測していなかった。
狂ったように自分へ跳ね返ってくる巨大なエネルギー球を見て――
目を見開く。
恐怖に満ちた声が――
喉から漏れた。
「あり得ない!!!!」
「ドォォン!!」
電撃の球体は、ベリオスの姿を完全に飲み込んだ。
それは止まることなく、そのまま空間を引き裂き、分厚い雲の層を突き破り、大気圏を越えて――広大な宇宙空間へと一直線に飛び去っていった。
そして……
ドォォォォン!!!
音のない爆発が宇宙空間で眩い光を放ちながら炸裂した。
巨大な球体は爆発し、何万もの煌めく光の粒へと変わり、再び地球へと降り注いでいく。
それは――
地球の大気圏を横切る、眩い流星雨となった。
地上では、負傷した住民たち、民兵、そして救助にあたっていたボランティアの若者たちが、一斉に足を止めた。
彼らは夜空を見上げる。
呆然としながら――
空いっぱいに伸びていく、無数の輝く光の軌跡を見つめていた。
破壊をもたらした嵐の後に訪れた――
不思議なほど美しく、そして穏やかな光景だった。
ヴァン・ティエンは、ゆっくりと顔を上げた。
その瞳は、夜空を照らす流星雨をぼんやりと見つめている。
そして――
口元に、疲れ切った小さな笑みを浮かべた。
途切れ途切れの息の中で、彼は小さく呟く。
「やっと……勝った……」
目の前の景色が――
ゆっくりと揺らぎ始める。
ぼやけて……
そして――
完全に暗闇へと沈んだ。
力を使い果たしたヴァン・ティエンの身体が、ゆっくりと――
冷たい田畑の上へ倒れ込んでいく。
その瞬間。
首にかかったペンダントから、小さな光の粒が一つ、静かに落ちた。
それは――
大地へ触れる。
すると。
大地そのものが、まるで意志を持っているかのように――
一瞬にして目覚めた。
地中から何千もの淡い青い光が湧き上がる。
深く穿たれた穴を通り抜け、
砲撃によって生じた無数の亀裂を這うように進み――
ゆっくりと。
そして静かに。
本来の大地の姿を取り戻していく。
その癒しの光は、そのまま地面を漂い――
やがて空高く舞い上がった。
夜空に光を織りなしていく。
息を呑むほど美しい――
幻想的な光景だった。
同じ頃。
広大な宇宙空間の彼方。
漆黒の巨大戦艦が――
無数の星のような光を身に纏いながら、ゆっくりと地球の軌道へ向かって進んでいた。
中央操縦室。
一人の兵士が突然、声を上げる。
「副艦長!」
「彼のエネルギー反応を確認しました!」
指揮席にもたれていた一人の少女が――
ゆっくりと立ち上がる。
漆黒の長い髪が、しなやかな歩みに合わせて静かに揺れる。
彼女は操縦室の強化ガラスの前まで歩いていき――
眼下に広がる青い惑星を、じっと見つめた。
整った顔立ち。
完璧なほど均整の取れた輪郭。
自信と人を惹きつける魅力を漂わせながらも――
どこか物思いに沈んだ、静かな雰囲気を纏っている。
淡い灰色の瞳は、水面のように静かだった。
その瞳の奥に――
温かな光が一筋、宿る。
そして。
彼女の口元に、優しい微笑みが浮かんだ。
低く静かな声。
そこには――
長い間、会えなかった者への想いが込められていた。
「やっと……見つけた……」
「……船長。」
以前、第80章でもお知らせしましたが、この章の後、数週間ほどお休みさせていただく予定だとお伝えしました。
今回のお休み期間は――
3週間です。
お休みする理由は、いくつか個人的な仕事を片付けなければならないためです。
最近は以前より仕事も忙しくなってきました。
そして、もう一つの理由として――
これから始まる次のArcに向けて、準備をしたいと思っています。
そのため、皆さんには申し訳ありませんが、約3週間ほどお休みさせてください。
どうかご理解いただければ嬉しいです。
私は正式に、11月23日から再び章の投稿を開始する予定です。
なので――
3週間後の月曜日に、また皆さんにお会いしましょう!
その時から、また新しい展開を書き続けていきます。
そして――
第85章の最後まで読んだ皆さんは、最後に登場したあの女の子が一体誰なのか、かなり気になっているんじゃないでしょうか?
少しだけ秘密を明かすと――
彼女は次の章に登場します。
そして、彼女が登場することで――
ヴァン・ティエンの正体について、さらに詳しく明らかになっていきます。
それだけではありません。
彼と妹のヒュエン・ゴックとの関係。
そして――
第85章の最後に登場した、あの彼女との関係についても、少しずつ明らかになっていきます。
今、私から明かせるのはここまでです。
この先、一体どんな展開が待っているのか――
それは、次の章が公開されるまで楽しみに待っていてくださいね!
そして、もう一度――
ここまでヴァン・ティエンと一緒に、私の物語を追いかけ、応援してくださった皆さん。
本当に、本当に、本当にありがとうございます!
感謝してもしきれません。
それでは――
3週間後の月曜日に、またお会いしましょう!
バイバイ!




