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『天雲星系・銀河の記憶』  作者: DanhDu_Chronicle
第4課:天王の覚醒
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第85章 ―― 嵐の後の流星雨 ( 中 )

だが――


その瞬間。


「……パキッ」


乾いた音が――


突然、響いた。


ベリオスの眉が――


ぴくりと動く。


「……今の音は?」


「パキッ……パキッ……パキッ……」


三つの音が続けて響く。


何が起きているのか――


ベリオスには分からない。


だが――


彼は突然、身体を起こした。


ヴァン・ティエンの杖先が触れている場所。


そこに――


深い亀裂が入っていた。


そしてそこから――


蜘蛛の巣のような亀裂が、エネルギーシールドの表面全体へ一気に広がっていく。


ベリオスの目が――


大きく見開かれた。


目の前で起きていることが――


信じられない。


そして――


「キィィン!!」


ベリオスが誇りにしていた電磁シールドが――


無数の光の欠片となって粉々に砕け散り、消滅した。


ベリオスは――


その場で完全に固まった。


何が起きたのかすら――


理解できない。


その瞬間を――


ヴァン・ティエンは逃さなかった。


歯を食いしばり――


勢いを利用して身体を一回転させる。


そして――


星雲天聚を大きく振り抜き――


ベリオスの腹部へ真っ直ぐ叩き込んだ。


「ドォォン!!」


千斤の力を込めた一撃。


ベリオスの身体が衝撃で大きく折れ曲がる。


「ガハッ!!」


大量の血を吐き――


その身体は砲弾のように遠くへ吹き飛んだ。


地面へ激突し――


そのまま長い距離を滑りながら、大地を深く抉っていく。


そして――


荒れ果てた田畑の中で動かなくなった。


ヴァン・ティエンは上空から地面へ飛び降りる。


「ハァ……ハァ……!」


激しく息を切らす。


胸が大きく上下し――


必死に酸素を取り込んでいる。


今こそ――


最大の好機。


ヴァン・ティエンはベリオスへ止めを刺すため、すぐに走り出そうとした。


だが――


数歩進んだところで。


突然――


目の前の景色がぼやけた。


激しい頭痛も同時に襲ってくる。


「……ッ!」


ヴァン・ティエンはすぐに足を止め――


星雲天聚を地面へ突き立てる。


もう片方の手で――


激しく痛む頭を押さえる。


そして――


煙と埃に覆われた戦場の中で、荒々しく息を吐き続けた。


一方――


ベリオスは田畑の上に倒れていた。


「ゴホッ……ゴホッ……!」


何度か激しく咳き込み――


手を地面につき、ゆっくりと立ち上がる。


身体がようやく真っ直ぐになった瞬間――


また激しく咳き込んだ。


そして――


口から大量の血を吐き出す。


ベリオスは口元から流れる血を、ゆっくりと拭った。


まだ――


信じられない。


そして――


受け入れることもできない。


自分が誇りにしていたシールドが――


ただのガキに破壊された。


そんなことが――


許せるはずがなかった。


一方――


ヴァン・ティエンの視界も、少しずつ元へ戻っていく。


頭痛はまだ激しい。


手もまだ頭に置いたまま。


それでも――


集中を失ってはいない。


敵は――


まだ目の前にいる。


ヴァン・ティエンはゆっくりと顔を上げ――


ベリオスを見た。


ベリオスは――


まだ衝撃から立ち直っていなかった。


そして突然――


「グオオオオオオオッ!!」


凄まじい咆哮を上げる。


その声が――


田園全体へ響き渡る。


咆哮が終わると――


ベリオスはヴァン・ティエンを睨みつけた。


今度の眼差しには――


怒りと憎しみしかなかった。


両目が――


真っ赤に充血している。


「お前は――」


「俺が最も誇りにしていたシールドを破壊した。」


「そのことを――」


「俺は絶対に許さない。」


「絶対に……お前を許さない。」


「覚悟しろ。」


そう言いながら――


ベリオスは拳を強く握る。


そして――


自分の胸へ拳を叩き込んだ。


しばしの静寂。


「バチッ……バチッ……」


胸の中央から――


青い雷がゆっくりと姿を現した。


今までとは違う。


より濃く――


より強烈な雷。


ベリオスの身体を取り巻く青い雷撃が――


激しく爆発する。


その衝撃で――


土や石が巻き上げられ、宙へ浮かび上がる。


ベリオスは目を細め――


ヴァン・ティエンを見つめる。


凶悪な笑みが――


口元へ浮かんだ。


「瀕死のお前一人を処理するなら――」


「この半分の力で十分すぎるほどだ!」


言い終わった瞬間――


ベリオスの姿が消えた。


一筋の雷光が――


空気を引き裂く。


そして――


一瞬でヴァン・ティエンの目の前へ現れる。


青い雷を纏った拳が――


脇腹へ叩き込まれた。


「ドォン!!」


「ガハッ!!」


ヴァン・ティエンは大量の血を吐き――


身体ごと吹き飛ばされた。


ひび割れた田畑へ何度も激突する。


骨の裂けるような激痛が――


頭の中を引き裂いていく。


視界が――


さらにぼやける。


速度も――


威力も。


ベリオスが完全に上回っていた。


ベリオスはすぐに追いつき――


身体を回転させ、ヴァン・ティエンの頭を狙って蹴りを放つ。


だが――


ヴァン・ティエンの手は本能的に星雲天聚を強く握った。


蹴りが頭へ届く、その瞬間――


腕が素早く上がり、杖で蹴りを受け止める。


ベリオスは驚き――


思わず声を漏らした。


「ほう……」


だが――


すぐに口元を歪める。


「だが、それだけじゃ俺は止められない!」


さらに――


もう片方の足で蹴りを放つ。


ヴァン・ティエンは歯を食いしばり、杖を持ち上げて防ぐ。


だが――


ベリオスは止まらない。


両手両足へ青い雷を纏わせ――


拳と蹴りを連続して叩き込んでくる。


ヴァン・ティエンは――


なんとか防ぐ。


だが今――


目の前の全てがぼやけている。


ベリオスの拳と蹴りは――


ただの青い光の筋にしか見えない。


いくつもの残像が――


夜を引き裂きながら、真っ直ぐ顔へ飛び込んでくる。


攻撃そのものは――


見えない。


だが――


空気を焼き尽くす熱。


耳元で鳴り響く雷の音。


それらが――


全てを教えてくれる。


今、ヴァン・ティエンが防げているのは――


本能。


そして――


星雲天聚の柔軟な動きのおかげだった。


しかし――


ベリオスの拳は、どんどん速くなる。


雷そのものの速度を利用し――


連続して拳を叩き込む。


そして――


一撃の蹴りが星雲天聚をすり抜け――


ヴァン・ティエンの腹部へ直撃した。


「ドォン!!」


凄まじい威力。


ヴァン・ティエンの身体が大きく折れ曲がり――


そのまま後方へ吹き飛んだ。


田畑を長く抉り――


広大な田園の中央で止まる。


そして――


煙と埃が立ち上がった。


遠くから――


ベリオスがゆっくり歩いてくる。


その視線の先には――


星雲天聚を支えにして、必死に立ち上がろうとしているヴァン・ティエン。


その眼差しには――


完全な侮蔑が浮かんでいた。


だが――


煙と埃の中から。


「……グッ……!」


低く――


重い咆哮が響いた。


ヴァン・ティエンの二色の瞳。


青と白の光が――


再び激しく燃え上がる。


前世で培われた戦闘本能が――


肉体の痛みを無理やり乗り越えていく。


ヴァン・ティエンは星雲天聚を強く回転させ――


その勢いを利用して身体ごと高く跳び上がる。


そして――


広い弧を描く一撃を放った。


夜空を――


真っ二つに切り裂くように。


ベリオスは――


完全に不意を突かれた。


「――ッ!」


避ける暇もなく――


杖の一撃が直撃する。


「ザシュッ……ドォォン!!」


星雲エネルギーの波が――


真正面から放たれた。


ベリオスの胸へ直撃し――


胸当てが大きくひび割れる。


身体が――


数十メートルも後方へ吹き飛ばされた。


そのまま地面へ二本の深い轍を刻みながら――


大きく後退する。


一方――


ヴァン・ティエンは星雲天聚を地面へ突き立てる。


そして――


激しく咳き込んだ。


「ゴホッ……ゴホッ……!」


今――


脇腹が激しく痛んでいる。


それだけではない。


頭も――


まだ激痛に襲われている。


まるで――


何千本もの赤く焼けた鋼鉄の針が、脳の奥へ突き刺さり、絶え間なく捻じ込まれているような痛み。


それでも――


今の危険な反撃は、ベリオスの自尊心を強烈に叩き潰した。


ベリオスはゆっくり立ち上がる。


鼻から流れる血を拭う。


その眼は――


完全に怒りで真っ赤になっていた。


「この……!」


「こんな瀕死の奴が……」


「俺を傷つけただと?!」


極限の怒りが――


ベリオスの理性を完全に奪っていく。


「今度は――」


「もう遊ばない。」


両手を強く握る。


全ての青い雷撃を――


両手へ凝縮する。


そして――


全力で自分の胸の中央へ拳を叩き込んだ。


「バチッ! バチッ! ドォォォン!!」


今度は――


濃密な青い雷が爆発した。


さらに濃い。


遥かに濃い。


ベリオスの瞳から――


完全に瞳孔が消えた。


そこにあるのは――


狂気に燃える二つの青い雷の炎だけ。


足元の地面は――


巨大な熱量に耐え切れず、溶け始める。


赤く燃える液状の泥へと変わっていく。


身体から放たれる強烈な磁場によって――


周囲の小石や瓦礫が、自然に宙へ浮かび上がる。


首や顔の血管が大きく浮き上がり――


青い光を放つ。


周囲の空気は――


巨大な熱量によって焼かれ、歪んでいく。


「今度こそ――」


「お前を必ず殺す!」


「死ぬ覚悟をしろ!」


だが――


その瞬間。


彼がその力の極限へ到達した、その瞬間だった。


大地が――


突然、激しく震え始めた。


そして――


惑星の深部から。


古く――


広大で――


原始的な圧力が爆発した。


それは――


目に見えない巨大な圧力の壁となり、ベリオスの胸へ真っ直ぐ叩き込まれる。


ベリオスの荒れ狂うエネルギーが――


その瞬間、強烈に押し返された。


異世界から来た巨大すぎるエネルギーが――


目に見えない封印の壁と激しく衝突する。


「な……」


「な、なんだこれは?!」


ベリオスは恐怖に目を見開く。


狂暴な雷撃が――


胸の内部へ強制的に押し戻された。


そして――


血管の中で爆発する。


「グハッ……!」


凄まじい反動が――


ベリオスの身体を激しく蝕む。


彼はよろめき――


暗い血を吐き出した。


全身が――


過負荷と深刻な損傷によって悲鳴を上げている。


ベリオスは荒い息を吐く。


胸の中央からは――


「バチ……バチ……」


という音だけが残り――


黒い煙が立ち上っていた。


彼は心の中で呟く。


「何なんだ……」


「今の力は……一体……」


だが――


彼が状況を理解するより先に。


ヴァン・ティエンが――


すでに目の前まで迫っていた。


そして――


星雲天聚を腹部へ叩き込む。


「グハッ!!」


ベリオスの身体が――


勢いよく折れ曲がり、そのまま木の根元へ吹き飛ばされた。


彼はそこで倒れ――


殴られた腹部を押さえる。


その視線の先。


遠くには――


星雲天聚を強く握りしめるヴァン・ティエンが立っていた。


その眼差しには――


強い決意が宿っている。


ベリオスは自分の身体を見下ろし――


小さく呟いた。


「……駄目だ。」


「このまま続けたら――」


「俺の身体が……持たない。」


しばし――


考える。


そして――


一つの決断を下した。


「仕方がない……」


「これを使うしかない。」


「もう他に機会はない。」


ベリオスは傷ついた身体を無理やり起こす。


そして――


空を見上げた。


次の瞬間――


地面を蹴って跳び上がる。


そのまま――


空中へ浮かび上がった。


眼下を見下ろし――


そして、ヴァン・ティエンへ視線を向ける。


地上のヴァン・ティエンには――


ベリオスが何をしようとしているのか分からない。


上空で――


ベリオスは低く唸る。


その声が――


空全体へ響き渡る。


胸の中央から――


一筋の光がゆっくりと生まれた。


それが一点へ集まり――


徐々に球体を形成していく。


「バチッ……バチッ……バチッ……」


周囲へ――


雷撃が集まり始める。


球体は――


ベリオスの胸ほどの大きさまで膨張した。


だが――


ベリオスは目を細める。


「……まだ足りない。」


彼は周囲を見渡した。


そこには――


無数の戦艦が宙に浮かんでいる。


ベリオスは何も言わず――


手の中の球体を高く掲げた。


球体が――


ゆっくりと回転し始める。


次の瞬間。


周囲の全ての戦艦から――


青いエネルギーが強制的に引き抜かれ始めた。


それらは――


狂ったようにベリオスの手の中の球体へ集まっていく。


球体は――


どんどん膨張する。


あらゆるエネルギーを――


飲み込んでいく。


そして僅かな時間の後。


それは――


小惑星にも匹敵する巨大なエネルギーの塊へと変貌した。


周囲の戦艦は――


エネルギーを完全に吸い尽くされる。


重力を失い――


大きく揺れながら、ゆっくりと落下していく。


ただ落下するだけではない。


頑丈な金属製の船体までもが――


次第にひび割れ。


無数の破片へと崩れ――


そして、無数の塵となって空から降り注いだ。


ベリオスは――


巨大な球体を持ち上げる。


そして――


ヴァン・ティエンを見下ろした。


その声は――


冷たい。


「この一撃で――」


「お前を終わらせる。」


地上では――


ヴァン・ティエンが星雲天聚を強く握りしめる。


全身は――


傷だらけ。


それでも――


その眼差しは、痛みを押し殺しながら鋭くなる。


揺るぎない決意が――


その瞳へ凝縮されていた。


上空のベリオスは――


ただ嘲笑う。


「安心しろ。」


「お前を――」


「すぐに楽にしてやる……」


一瞬――


言葉を止める。


そして――


空を焼き尽くすほどの熱を放つ巨大なエネルギー球を見上げる。


さらに――


遠くへ視線を向けた。


「だが――」


「この大きさじゃ……」


「お前だけじゃ済まない。」


ベリオスは――


地上を見下ろした。


遠くでは――


負傷した住民たちが、民兵や青年ボランティアたちによって応急処置を受け、避難を始めていた。


地上は――


混乱している。


それでも――


人の温かさが残っていた。


「こっちにも怪我人がいるぞ! 早く来てくれ!」


「役所の人! こっちは消毒液がもうない!」


青年ボランティアたちは――


足元の荒れた地面を慎重に進みながら、高齢者たちを支える。


「おじさん、足元に気をつけて!」


「ゆっくり歩いてください!」


小さな子供たちは涙を拭い――


恐怖でしゃくり上げる。


「怖いよ……ママ……」


一人の女性ボランティアが――


すぐにしゃがみ込み、子供を抱きしめる。


そして――


頭を撫でながら優しく慰める。


「いい子だから、怖がらないで。」


「大丈夫。きっと全部うまくいくよ。」


「お兄ちゃんやお姉ちゃんたちが、ここにいるからね!」


上空のベリオスは――


地上の人々を見ながら、再び口を開く。


「お前だけじゃない……」


「あそこにいる人間たちも――」


「巻き込まれる。」


そして――


最後にもう一度だけ、ヴァン・ティエンを見る。


そして――


冷たい笑みを浮かべた。


「さらばだ。」

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