第22話 【side ガーネット】 国外追放?
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まだまだ続きます。ガーネット視点の話。
よろしくお願いします(#^.^#)
薄暗く、湿気の多い牢に私は閉じ込められていた。
クラウス様の部屋で彼の帰りを待っていただけなのに、見張り以外に女性の騎士二人が来て、私を拘束したのである。
その時には大声を出して抵抗したけれど、女性騎士と言えど鍛えられた彼女たちには敵わず、押さえつけられてしまった。
それからというもの、あれよあれよと牢に閉じ込められる。
あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか、もう大声を出す気力もない。
牢の通路の壁には、等間隔にランタンが置かれていたけれど、それでも薄暗い。
周りを見ると、陽の光など入る場所ではないことは分かった。洞窟を削られたような石造りで鉄格子がはめられている。
今は昼なのか、それとももうすでに夜なのか、それさえも分からなかった。
私は冷たい床に座り、壁に寄りかかり、小さく蹲る。
「ガーネット。そこにいるんだろう? 大丈夫か?」
隣から力ないクラウス様の声が聞えた。私は鉄格子を握りしめ、姿の見えないクラウス様に答える。
「大丈夫では……ありません。どうしてこんな所に閉じ込められなければならないのですか? 気味が悪いです。早くここから出たい……」
自分でも驚くほどの掠れた、覇気のない声が出る。
何故、次期王太子妃となる自分がこんな目に会わなければならないのか。
どうしてこんな所に閉じ込められているのか。
卒業パーティーまでは、順調に事が進んでいたはずなのに。
「クラウス様……。一体、何があったのですか?」
「ジルベールが公爵三人と騎士団を連れて王宮を乗っ取り、我々を拘束したんだ」
「ジルベール殿下が!?」
大人しく離宮にいたあの第二王子が?
学園に行くこと以外、殆ど離宮から出てこなかった。
学園でも然程目立つような事も無い。強いて言えば、学園の成績だけはやたら良かった。
容姿は整っていたけれど、側妃の子というだけで、あまり令嬢も近寄ろうともしなかった。
「どうやら、俺がクリスティーンとの婚約破棄をしたせいでロッソ公爵たちがジルベールを次期国王に担ぎ上げたようだ」
「お前が勝手に婚約破棄などするからだ!! 高位貴族の後ろ盾を失くすという事はこういう事だ!」
何処からともなく聴こえてくる王妃様のすすり泣きに国王様の憤ろしい声が響く。
「しかし、父上! 父上だって、身分の低い母上と結婚したではありませんか!?」
クラウス様の発した言葉に、一層、王妃様のすすり泣き声が激しくなった。
「俺だってあんなつまらない女と結婚は嫌です! ガーネットと結婚したいのです!」
クラウス様の言葉に私は溜息を吐いた。こんな所に捕らわれることになるなら、彼に近づくことなどしなかったのに。
いづれ、王族の仲間入ができるならと思っていたのだ。
なんとか、私だけでもここから出してもらえないかしら?
「……くそっ! 早くここから出せ!!」
クラウス様が鉄格子をガンッと蹴り、叫んだ。
「……うるさいぞ」
呟く声と共にコツン、コツンと靴の鳴る音が聞こえてくる。その音は段々と大きくなり誰かがこちらに向かってきていた。
小暗い中、目を凝らし見ていると、ランタンを持った背の高い男がこちらに向かってくる。次第に薄暗くて見えなかった赤い騎士服が露呈した。
「……あ、か、カール様!」
こうなったら、エバンス男爵様に助けを請おうと考えた。私はクラウス様とは無関係だと訴えれば、ここから出してくれるかもしれない。
「カール様、お願いです。私は何もしておりません。ここから出してください」
必死で哀れや悲愴感が出るように、声を出し縋る。本当に私は関係ないのだ。きっと直ぐに出してくれるだろうと。
けれど、彼の青い瞳は氷のように鋭く冷たい。
そして、「令嬢に名前で呼ばれる筋合いはない」とあしらわれた。
今までに見たことのない冷めた瞳だった。その瞳にブルリと背筋が震えた。
「エ、エバンス男爵様。ここから出してください。お願いします……」
私はもう一度、家名で言い直し、鉄格子を握り頼んだ。
「もう暫くすれば令嬢は、ここから出してもらえるはずだ」
カール様から鋭い眼光を向けられ、私は身を固くした。そして彼はそのまま隣にいるクラウス様の方へと足を進める。
「ここから出せ!!」
「…………」
クラウス様の怒号が響き渡った。
カール様はビクリとも動かない。
「大人しくしていた方が身のためだぞ」
威圧感のある声で、クラウスを刺すような目つきで睨む。
「馬鹿な事をしたもんだな。クリスティーン嬢との婚約を破棄しなければ、まだ王太子でいられただろうに」
私の方からはクラウス様の様子は見えない。けれど、クラウス様の声がそれっきり聞こえなくなったと言う事は、蛇に睨まれた蛙の如く、身動き出来ないほどに気圧されたのかもしれない。
そのままカール様は、また戻って行った。様子を見に来たようだった。
私はカール様の後姿を見つめながら、さっきの彼の言葉を反芻する。
『ここから出してもらえるはずだ』
ここから出してもらえる。
それも、きっと私だけだろう。
クラウス様や国王様、王妃様には申し訳ないけれど、ずっとここにいるのは、とても耐えられない。
どのみち今の現状では、クラウス様が国王に成れるような感じではない。この際だから、王家に関わらないことにしよう。
けれど、いつになったらここから出してくれるのだろうか。
また、誰かが来る足音が聞えた。
青色の騎士服をきた二人だ。両手にはトレーを持っている。
「メシだ」
そう言うと鉄格子のカギを解錠し少し開け、トレーごと置いてまた施錠する。
「ここから出して!」
「…………」
先程のカール様ほどではないにしろ、彼らは何も言わずに、冷たい視線を向けた。そして無言で隣にトレーを持っていた。四つの牢にトレーを置き終わると、戻って行った。
トレーの上には、見るからに硬そうなパンと冷めたスープに干し肉が乗せられていた。パンを手に取り、千切ろうとするけれど、予想通り硬くて手では千切れそうになかった。
硬いパンは食べたことが無いという事はない。食べたことがある。
幼い頃、父の仕事が思うようにいかなかった頃、このようなパンを食べたことがあった。
硬い時は、暖かいスープに浸けると、意外と柔らかくなり、食べれるようになった。目の前の冷めたスープに浸けてみる。
「こんな硬いパンなんか食べれるか!!」
隣で壁越しに大声で叫んでいるクラウス様だ。王族の方々は食べた事がないのだろう。ましてや見たことも――。
けれど、食べれるものは食べておかないと、いざと言うときに体が動かなくなる。
それも幼い頃に経験済みだった。
暫くすると、少し柔らかくなったような気がし、そのままパンを噛み千切ってみた。まだまだ硬い。けれど食べれない程でもない。顎を一定のリズムで動かし咀嚼する。
「ほう、ちゃんと食べているじゃないか。偉いな」
いつの間にか、鉄格子の向こう側に青の騎士服を着た一人の男性が立っていた。よく見れば髪も瞳も青系色をしていた。
「ブル公爵様……」
彼がどうしてここに来たのか、予想できない。
けれど、ここから出られるなら何だってする。私は這いながら彼の傍に行き、下から見上げるように上目遣いでお願いする。
「ここから、出してください……」
なるべく哀れに、可哀そうに見えるようにお願いした。
ブル公爵は私と目線の高さが合うように屈む。
「お嬢ちゃん、男爵令嬢が公爵家の跡取りや王太子に近づいてはダメだろう。どう考えても不釣り合いだ」
「な、なんだと!? 俺とガーネットのどこが不釣り合いなんだ!」
クラウスが横から大声を出した。穏やかに話していたブル公爵様はギロリと切れ長めの目で睨みつける。
「だまっていろ! クラウス!! 勘違いするな! 王太子と男爵令嬢ではと言う意味だ。王太子の役目も出来ないお前とはお似合いだがな。お嬢ちゃん、ここからは出してやれるよ。しかも、出しても国外だとさ」
「……こ……く、がい?」
「そうだ、国外追放だ」
ブル公爵様の発した言葉を理解するのに十数秒かかった。
「い、嫌……国外追放なんて、そんなの嫌です! それなら、まだ国内の修道院の方がマシです! どうか、お願いです、ブル公爵様! それだけは……!!」
「無理だな。三大公爵家で決まった事だ。それが嫌なら、ずっとここにいる事になる。それでもいいのか?」
「…………どちらも嫌です」
私は必死で頭を横に振った。
「それだけの事をしたんだよ。嬢ちゃんは……まあ、クラウスが帝王学を学んでいれば、こんな事にはならなかっただろうが……その硬いパンを食べれたんだ、国外に出てもなんとか生きて行けるだろう」
じゃあ、明日には出してもらえるよ、とブル公爵様はそう言うと地下牢から出て行った。
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次回更新は5月15日22時頃の更新予定をしております。
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