第21話 【side ガーネット】 男爵令嬢の危機
本日より第2章の始まりなのですが、
1話目から主人公視点ではありません(;^_^A
第1章の初めに登場したガーネット・ローザン男爵令嬢視点です。
皆様、覚えていらっしゃるでしょうか(;''∀'')
暫くガーネット視点が続きます。
またよろしくお願いいたします(#^.^#)
「どうなっているのよ?」
卒業パーティーでは、クラウス王太子殿下とクリスティーン公爵令嬢との婚約を破棄できたというのに、どうして私は今、王宮の地下牢に囚われているのか、分からなかった。
第二王子以外の王族は拘束?
何がどうなっているの?
卒業パーティー後に一緒にクラウス様と彼の部屋でくつろいでいると、彼だけが国王様から婚約破棄の件で呼ばれた。私も付いていこうとすると、王宮の二人の兵士に止められる。
「令嬢は呼ばれておりません。こちらでお待ちください」
クラウス様だけが国王様の部屋に向かい、私は彼の部屋で待たされる。その間にも兵士の見張りが付いていた。
私は部屋で黙って、じっと椅子に腰かけている。
それでも兵士から向けれられる視線は冷ややかなものだった。
公爵令嬢との婚約破棄が出来たのよ。あの女の代わりに私はいずれ王太子妃になるんだから。
そう心の中で呟きながら、私は兵士を睨みつけていた。
輸入品を扱う商会を営んでいるローザン男爵家に、私は生まれた。
上位貴族のように裕福ではなかったけれど、貴族としての最低限の生活は出来ていた。時には、硬いパンを食べることもあった。
王立学園に入学すれば、自分より上の貴族たちがいる。その中でも上位と言われる侯爵、公爵家の跡取りの殿方と結婚出来れば、今以上の裕福な生活が出来るはず。
父も後ろ盾があれば、もっと珍しい輸入品を扱えるだろうと考えていたため、私は小さい頃から、結婚は上位貴族だと、と聞かされてきた。だから、私は媚びを売ってでも上位貴族と結婚しなければならなかった。もっと裕福な生活をするために。
いざ王立学園に入学したけれど、思うような人と巡り合わなかった。上位貴族の跡取りは入学前に候補を挙げていて、1年も経たずにその中から婚約者を決めてしまい、残りものと言えば、次男、三男で爵位さえ当たえられるか分からないほどの人しか残されていなかった。
それでも卒業生などが出席する学園のパーティーにも、毎回出席するようにした。卒業した次男以降の男性は、やはりなかなか婚約者が見つからず、学園がパーティーを開いて交流の場を設けてくれていた。いわゆる学園主催の婚活パーティーのようなものである。
その中には、あのカール・エバンス男爵がいた。もともとはロゼオ侯爵家の三男だった。それが、男爵の爵位を貰っていた。
男爵では、論外ね。もっと爵位が上でなければ、贅沢な暮らしが出来ないわ。
しかし暫くして、そのロゼオ侯爵家の三男が、どうして男爵位を貰ったのかを噂で訊いた。
ロッソ公爵家の後継者候補?
男爵位を貰ったのはロッソ公爵になるための布石?
ロッソ公爵といえば、そこの一人娘がクラウス王太子殿下と婚約しているはず。王家とも強い繋がりを一層、持てるというもの。
そして婚約者がいるとも聞いていない。学園主催のパーティーにも来ているのであれば、当然、結婚相手が未だいない。
残りものには福がある――。
この残りものを手に入れなければ――。
私は胸を強調する露出の多いドレスを着てパーティーに参加した。けれど、そのパーティーには、ロッソ公爵やロゼオ侯爵もいた。カール・エバンスが参加するパーティーには必ずといってあの二人がいる。
私は扇子で口元を隠し、数人の男爵令嬢たちのグループにこっそりと理由を訊ねた。
「ねえ、今日もロッソ公爵様とロゼオ侯爵様がいらっしゃっているわ。どうなされたのでしょうか?」
「あら? ご存じないの? エバンス男爵の婚約者を見定めているようですわよ」
そう答えたのは、私より裕福な男爵令嬢だった。
「変な虫が付くと困るのでしょう。だから、貴女では相手にしてもらえなくてよ」
その令嬢たちは嫌味を含む笑顔を私に見せ、見定めるようにチラリと私の胸に目を向けた。
まるで、私が変な虫だと言わんばかりだ。怒りが煮えたぎるのを私は必死で抑える。
今に見ていなさい。カール・エバンスを婚約者にしてみせるわ。
それなのに彼となかなか接触する機会がなかった。やっとの思いで近づけば、軽くあしらわれてしまう。ロッソ公爵やロゼオ侯爵にも邪魔をされてしまった。
そんなある日の王家主催の夜会のこと。
私は監視をしているロッソ公爵、ロゼオ侯爵の目を掻い潜って、エバンス男爵の腕を掴まえた。そのまま彼の腕を体に引き寄せ人目の少ないバルコニーへ連れて行こうとそちらに足を向けたけれど、乱暴に腕を振り払われる。
私はエバンス男爵に関わることが出来るのなら何でも良いと思い、そのまま大げさに声を張り上げ、後ろに倒れることにした。
「きゃあ!」
これで、周りの目を気にした彼は私を放っておくことなど出来なくなる。声を掛けるしかなくなる。
さあ! 私に声を掛けるのよ!
彼の顔が少し歪んだ。ピクリと彼の腕が動く。
その時――。
「ローザン男爵令嬢。大丈夫か?」
エバンス男爵以外の手が私の目の前に差し出された。手を辿って見上げると、ブルーの瞳がこちらを見ている。手を差し出す人物に、ギョッとした。
「だ、大丈夫です……」
間違いない。この国のクラウス王太子殿下だった。クラウス様の手に手を重ね、私は立ちあがった。
まさか、クラウス様が手を差し伸べてくれるとは思ってもおらず、けれど彼は、私をそのままエスコートしてくれた。
もしかして、クラウス様は私に気があるのかしら?
この際、妾でも良いわ。このままクラウス様に乗り換えましょう。
もう私は、このクラウス王太子殿下の手を離さない。絶対に取り入って見せる。
それからクラウス様は、婚約者のクリスティーンを相手にせず、ずっと私と夜会を過ごしていた。私も笑顔で彼と話す。時折、彼は私の胸をチラリチラリと見ていた。
やっぱり、年頃の男だわ。私の豊かな胸が気になるのね。
もしかすると、上手くいけば私は妾ではなく、王太子妃に、将来的には王妃になれるかもしれない。
見下していた令嬢たちの頂点に立てるんだもの。こんなチャンスを逃してはいけないわ。
私は顔見知りとなったクラウス様と毎日、学園で一緒にいるようになった。可愛らしげもないクリスティーンより愛嬌のある私の方が良いと褒めてくださる。
そのうちに、王妃様のお茶会にも招待してくれるようになった。王妃様にも愛想を振りまければ、すぐに私の事を気に入ってくださり、装飾品なども貰えるようになった。
王妃様からもこんなにも可愛がってもらえているんだもの。期待してもいいわよね。
でも、もう少しか弱い令嬢を演じるのも良いのかもしれない。
わざとクリスティーンにいじめられているように見せかけた。
教科書やノートの落書き。彼女の筆跡を真似るのは至難の業だった。綺麗な端正な字だからである。真似ても歪な字になり、迫力に欠けた。
それならばと、階段でクリスティーンとすれ違う時に階段から突き落とされたことにすればと思い、階段から転げ落ちようとしたけれど、余りの高さに体が怯む。
別に高い所から落ちなくてもいい。クリスティーンが私を突き落としたように見せかければ。
「きゃああ! クリスティーン様! 何をなさるの?」
自分が転げ落ちれる段から落ちて叫んでみたけれど、落ちた所に彼女が立っていた。周りの生徒たちは、冷ややかな目でこちらを見ていた。それは、私を見ているのかクリスティーンを見ていたのか。
けれど、その事がクラウス様の耳に入った。クリスティーンが私を突き落としたと言う事になって。
何とか、上手くいったわ。
そして数か月たった卒業パーティーの数日前にクラウス様からクリスティーンとの婚約破棄を宣言し、私を婚約者に立てると――。
跳び上がるほど喜んだ。
やっと私を馬鹿にしていた令嬢たちを見返せる。
そして裕福を通り越して、優雅な生活が待っている。
そう考えると、卒業パーティーが楽しみでしかたがなかった。
それなのに――。
卒業パーティー後にクラウス様が国王様に呼ばれ、顔色を変え戻って来た。
「クラウス様?」
「ああ、大丈夫だ。直ぐには君との婚約は無理かもしれないが、母上が味方になってくれる。取り敢えず、君は婚約者候補になる」
私はホッとした。直ぐに婚約者になれなくとも、候補になれたのだ。それに、私は王妃様とお茶会をする仲だ。
婚約者になれるのも、そう遠くない話だわ。
そう思っていたのに、卒業パーティーの3日後に第二王子のジルベール殿下が王宮を占拠した。
「どうなっているのよ?」
国王様と王妃様、そしてクラウス様までもが、囚われ地下牢に閉じ込められ、何が何だか分からない間に、クラウス様の部屋にいた私も地下牢に閉じ込められた。
「お前ら! こんな事をして後でどうなるか分かっているのか! ただじゃ済まないからな!」
少し離れた牢からクラウス様の叫び声が聞こえる。更に奥には王妃様なのか、すすり泣き声が響いてきた。
「ここから出しなさいよ! 何故よ! 何故、私まで閉じ込められなければならないのよ! 早く出しなさいよ!」
私も鉄格子を握りしめ、叫んだ。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
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次回更新は5月8日22時頃の更新予定をしております。
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