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東日本戦記  作者: 繧繝
第1章: 激動の南洋
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政治新秩序

※東京 首相官邸※


この日、民政党幹事長・二葉は酷く憤慨していた。


(━━━━近ごろ、葉山たちの官邸主導が目に余る。

もちろん、この非常時に迅速な行動を取るのは当然ではある。

しかしいつもは全て私に話を通してから物事を進めていたというのに、近頃は全て事後報告。

嗚呼、不愉快だ!!)



二葉はその資金力で与党民政党を牛耳る老翁。


その威光は首相の権威をも上回り、日本政界で逆らえるものは与野党問わず誰もいないほどの権勢を誇っていた。


“院政”を敷いている。そう形容する者も多かった。


葉山とて彼の後ろ楯で首相にまで登詰(のぼりつ)めたといっても過言ではない。


二葉は世論と離れた政策を掲げることも多かったが、議員は彼に逆らうことができず、国民は二葉を決して好いてはいなかった。




その二葉は今、官邸の一室にいる。

本来ならば二葉が葉山を呼びつけるところなのだが、葉山は忙しいといって取合わなかった。


結果、二葉は自ら官邸に赴いた。

これは彼にとってある種の屈辱を象徴する出来事だった。


(━━━嗚呼、あの若造!

私の力で総理の椅子に座っているというのに!

恩に仇で報ずるとは!!!)


二葉が部屋に通されて5分ほど経つ。


葉山を部屋で待つ間にも二葉の鬱積した感情は留まるところを知らなかった。




さらに5分ほどして葉山が登場した。


「いや、すみません。

南方戦線がどうにも気がかりで」


葉山は遅れたことを言い訳した。



葉山も転移前から二葉にあまり良い感情は持っていなかった。


それはひとえに両者の政治的信条の差異によるものだった。



「━━━私は中国の一帯一路構造に全面的に賛同する」


二葉は数年前、北京でそう発言したのである。


明確な親中派の二葉幹事長。

かの国の資金力もあって彼は与党幹事長にまで伸上(のしあ)がったのだった。



対中国政策で立場を異にする首相葉山はそれが気に食わなかった。

葉山は、そんな彼に表立って異を唱えられない自分を不甲斐なく思い、沖縄県某諸島沖で何か問題があっても彼に制止され強く出れない自分を情けなく思っていた。


(国益を考えれば中国を押さえ込むのは必要条件なのに!

二葉のせいでそれが出来ない!!)


転移前、外交で常に首相の頭を悩ませたのが彼の存在だった。



(━━━しかしもう状況は変わった!)



(二葉の地盤、和歌山県は西日本。つまり既に彼の地盤は崩れている。彼は次の選挙で衆議院議員ですらなくなるだろう。

それに中国!今はもうあの国はない!

この2つの!二葉の権力の源泉は!既に失われている!!)



政権を(ほしいまま)にできる彼の力も今は昔。


葉山は転移によって、陰の政権運営者を無視できる立場を遂に手に入れたのだった。



耄碌してそれに気づかない、━━━いや、或いは気づきつつも気づかないふりをしているのかもしれない━━━幹事長二葉は、お前は敬意が足りないとか、自分への報告が遅いとか、喚き散らす。



その彼に葉山は一言言った。


「今はもうあなたの時代ではない」




━━━既得権益が失われ、今までの政治秩序が破壊される。


独りの老翁の院政が、ここに終焉した。

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