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東日本戦記  作者: 繧繝
第1章: 激動の南洋
12/26

操舵、南洋へ往こう。


※※照和17年12月27日※※


東西の時代的分断が西側東側関係なく、全国民に周知されることとなって、日本の政治体制は当面の間、連邦制となった。

北海道と本州の東側、つまり玲和から来た“日本国(通称:東日本)”と本州の西側、四国、九州、沖縄、台湾、南樺太、高麗半島、そして各占領地域からなる“日本帝国(通称:西日本)”である。

そして連邦元首は照和皇帝、博仁(ひろひと)が担うこととなり、連邦行政の最終決定権は新たに連邦首相へと就任した葉山信三が担うこととなった。

もっとも、西日本側の官僚の多くは霞ヶ関とともに消失しているので、行政のほとんどは東日本が補佐し、西日本側の仕事と言えば軍務が主であった。

要するに日本国は実質的に日本帝国を併合したのだった。

これは今後東側が国家の主導権を握るための策でもあった。


この新しい国体に東日本の住人たちはもとより、西日本の住人も混乱は少なかった。

そこには西日本側に輸出されていくこの時代では存在し得ない技術と豊かな物資、そして精神的支柱として照和皇帝の存在があった。

西日本住民はその豊かさを見てこれからの未来が明るくなると信じて()まなかった。

人間とは明日の自分の生活が今日よりも良くなると分かれば存外なんでも受け入れるものである。



対して東日本議会では戦争の話題が尽きない。

西日本側が自衛隊の派遣要請をしているためである。


南方では日本軍が今も闘っている。

このまま東側がなんの干渉もしなければ、この戦は敗けることが“歴史的に”明白だった。むしろ東側がなんの貢献もしないわけだからより悪化したとすら言える。



東は西側と無関係であることを主張し、戦争に関わらないことも手段としては考えられる。

しかしそれを連合国側が了承するかはまた別の話だった。


さらに東日本は西側に頼らなければ明日の資源さえままならないのである。

結果、東政府は西を併合したのである。


要するに西側に軍事的支援をしないことは東日本の資源を枯渇させ豊かな暮らしを捨てること、そしていずれ敗戦国として辛い日々を過ごすこととほぼ同義だった。


つまり全ての感情さえ放棄すれば、南方戦線への自衛隊派遣は東側にとっても非常に合理的なのだった。


そして南方戦線を救うために自衛隊の派遣を主張する与党と、戦争アレルギーを引起こして断固として反対を繰返す野党の姿は、転移前となんら変わらず、議会は連日紛糾していた。




そして一昨日12月25日、その議論を終わらせ、世論を大きく動かす1本の番組が放送された。


南方戦線に関する番組である。

番組は南方での日本軍の進路と推定される現在の兵力を、史実を元に忠実に再現していた。


その中で扱われたのが“ブタリタリ環礁をはじめとする南方諸島での戦死日本兵に対する死体凌辱行為”である。

死体を切断し尊厳を貶める敵兵。

頭骨を戦利品とし嬉々として本国へ持ち帰る敵兵。

番組ではあえて過激な表現を使い、連合国の蛮行を伝えた。


そして戦線が今も続いており多数の日本兵が戦死、餓死していることを、“5日後”に迫った山元重省大佐の壮絶な死を、報道した。


その南方戦線で兄を失ったという老婆は番組でこう語った。

「今自衛隊を派遣すれば私の兄を救えるかもしれない。

でも兄を救うことで多くの米兵の命を失わせることにもなると思う。

だから自衛隊の派遣が正義なのか私にはわからない。

でもこのまま兄を見殺しにすることが正義とも思えない」


「今自衛隊を派遣すれば救える命がある」

こうして世論は南方への自衛隊派遣に大義を得た。



そして翌28日、その声に応えるように、けれども平和国家としての意地を捨てないため、葉山連邦首相は2つの決定をした。


1つには、南方戦線への自衛隊派遣による日本兵の救出。

2つには、膠着状態にあった中華大陸戦線からの撤退である。

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