閑話 エリーゼ 専属護衛
これが叔母様が封印した訓練ですか。
死人が出るから封印したのに、この程度です。
エリエッタ様の訓練と比べたら甘過ぎますね。
この訓練を早くやり遂げて叔母様と修行しないと離され続けてしまう。
専属護衛が本人より弱いと意味が無い。
今の実力ではエリエッタ様より早く敵を殺せない。
そしてエリエッタ様より敵が強かった場合、エリエッタ様は確実に刃を体で止める。
その時、相手に止めを刺せない様では話になりません。
最低でもエリエッタ様の思いを遂げさせる事が出来なければ護衛する資格もありません。
一度、護衛失格した身です。
本来なら既に護衛をする資格が無いのかもしれません。
同じ失敗を二度とする訳には行きません。
結局、王女と孤児で護衛対象を差別したのです。
孤児だから虐められても嫌がらせされても許した。
命が助かったのは本当に偶然だった。
叔母様は私達2人に護衛を依頼した。
役割を決めたのは私達。
私達の護衛内容が酷いから忠告までしてくれたのに気が付きもしなかった。
エリエッタ様が生きてきた過去は、人が死ぬのが当たり前で自分が死なないのは偶然。
そして、それよりも過酷な現実があったはずです。
何をされても怒らないのは、それが当たり前の環境で生きてきたから。
あの訓練を学園にいる間も行っていたのに私達は気が付かなかった。
痛いのも苦しいのも辛いのも当たり前の世界。
我慢しているとは思っていないでしょう。
普通の事なのでしょう。
訓練で立てなくなるまで鍛えるのもそれが原因だと思います。
自力で立てない状況が普通のだった為、訓練もそこまでするのが普通だと考えたと思います。
言葉では表現出来ない様な世界で生きて来た気がします。
何も無いという言葉。
自分は人間では無かったと考えているのかもしれません。
だから名前を付けてもらった時に過去を殺した。
何も無い存在から人間になる為に。
そして人間にしてくれた王女様の期待に全力で答えるのでしょう。
知っていて護衛していたら、あの様な対応をしたでしょうか?
絶対に違う対応をしたはずです。
少し頭を使えば分かる事でした。
王女様の隣を歩き続ける事すら辛い。
その状況で学園中から悪意を浴び、虐めや嫌がらせを受ける。
私は見ていただけです。
護衛すらしていないただの傍観者です。
最悪です。
結果、今の訓練に繋がったのです。
それも自分の為ではなく王女様の為です。
「お母様、本当にこの訓練が一番厳しいのですか?」
「どうしたの。これが封印されていた訓練よ」
「甘過ぎます。叔母様が子供の頃に訓練していたのも同じメニューですか?」
「それは分からないわ。私はこのメニューしか知らないから」
「分かりました。直接聞いて来ます」
「そう。親としては喜ぶべきか、悲しむべきか分からないね」
走ってお城に行きました。
一族は叔母様の部屋に入るのに条件はありません。
ですから当たり前のように入ります。
「失礼します!」
「あら。もう倒して来たの?」
「いいえ。封印されていたメニューが甘過ぎて時間が足りません。叔母様が子供の頃にやっていたメニューを教えて下さい」
「なるほど。エリーの訓練と比べたら楽過ぎるわね。でも、エリーの訓練方法は真似出来ないのはもう分かるでしょ?妹も言ったかも知れないけど、あのメニューしか無いの。ただ、私はぎりぎりまで訓練をやり続けたわ。強くなろうとすると死ぬ人が多いのは、自分で立てなくなるまで訓練すると死ぬからよ。メニューがそうでしょう?私は自分の限界を見極められたからぎりぎりまで出来ただけ。皆が私の真似して訓練して多く死ぬから封印したの。訓練の質の違いね。常に自分を把握しなければならない。強くなる為に自分を死の一歩手前まで導くの。難しいわよ?甘いと強くなれない。無理をすると死ぬ。どうするの?」
「エリエッタ様の訓練は真似出来ないです。歩いてきた道が違い過ぎて耐えられないと思いますから。一族のメニューを死の一歩手前までやり続けます。待ってて下さい。お母様はすぐに倒して来ますから」
「エリーの事をかなり把握出来てきたわね。特別にサービスをしてあげるわ。立てなくなる事を経験させてあげる。訓練場について来なさい」
私は叔母様について訓練場に行きました。
「さあ、かかって来なさい」
「では、行きます!」
「焦る気持ちは分かるのよ?エリーは異常な速度で強くなっていくからね。でも、あの訓練は人には無理なのよ。エリーだけの特別な訓練。でもセバスに勝てるようになれば止めるわ。エリーゼは最終的にエリーより強くなればいい。その為には自分を知りなさい、敵を見極めなさい。私を超える為には頭を使って訓練する必要があるわ。過去のあなたは護衛に頭を使わなかった。だから失敗したの。人の最大の武器は頭よ。エリーゼ、まだ立てるわ。無理やりでも立ちなさい」
苦しい、辛い、呼吸が出来ない、ここからまだ立つ…。
「は、はい」
「さあ、まだ足は動くはずよ。かかってきなさい」
「行きます」
「もう限界だと思うの?まだ立てるわよ。しっかり自分の体を把握しなさい」
わたし、まだたてる?
「たてます」
「かかって来なさい。立てるなら向かってくる」
「はい」
「まだ立てるわよ」
「…。は、い」
あれ、しかいがしろく…。
「ここの一歩手前を覚えなさい。体に覚えさせるのよ」
「・・・・」
「意識が戻って来たわね。あなたが倒れた状態で、さらに立ち上がるのがエリー。あなたはその一歩手前で止めなさい。体を常に意識しなさい。何となくだけど覚えているでしょう?」
「はい。何となくですが覚えています」
「今日はお城で休んでいきなさい」
「はい。ありがとうございます」
「侍女を呼んでくるから、そのまま身を任せなさい」
「はい」
侍女の方達が担架を持って訓練場に入って来ました。
「さあ、ゆっくり休んでください」
「はい。ありがとうございます」
私は侍女の方達に身を任せながら考えました。
エリエッタ様の訓練はやはり人には無理ですね。
自分の体で体験すると良く分かります。
今の私の状態でも立ち上がり向かっていく。
ほぼ無意識で立っているのでしょう。
私は意識があるギリギリの所で止めなければいけない。
叔母様は本当にサービスしてくれたのですね。
経験せずに訓練していたら死んでいました。
私は次の日も体が動きませんでした。
この状態で誰にも悟られずに動くのは不可能です。
特別ですが…。
とても悲しい特別です。
この痛みや苦しみが普通の世界なんてあってはいけない。
私がそれを続けさせてしまったのです。
必ず守り抜きます。
エリエッタ様の意志は必ず成就させてみせます。
「ただいま帰りました」
「お帰りなさい。かなりボロボロだけど?」
「叔母様に立てない状況にして頂きました」
「そう。やっぱり姉さんの様に訓練するんだね」
「はい。それが私の償いです」
「エリーは誰の責任にもしていなと思うよ?」
「だからこそ私が守り抜きます。専属護衛として必ず」
「母としての言葉はここまでだね。専属護衛なら必ず守り抜きなさい」
「はい。それが私の人生です」
叔母様の護衛ですね。
エリエッタ様が動くのでしょうか?
「エリーゼ様、エリエッタ様が孤児院に向かう様です」
「直ぐに行きます」
時間がありません、全力で走ります。
なるほど。
王女様がエリエッタ様を孤児院に誘う様ですね。
「エリーゼは一緒に孤児院に行く?」
「はい。私はエリエッタ様の護衛ですので外を見張ります」
叔母様は身内には優しいのです。
エリーも身内に入っていますし孤児院も身内枠です。




