招待
しばらく宿近くの市場をぶらぶらと散歩をしていた俺はこの国名物の土産や食べ物を幾つか買って宿へと戻った。
「み、ミア…悪かった、これあげるから許してくれぇ!」
しかし、そこにはミアの姿は無く荷物が置かれてあるのみで静寂が広がっていた。
「ミアもどっか出てったか、そうだよな…きっと別の宿を探しに行ったんだろうな…」
俺は土産や食べ物をテーブルに置き一息をついて洗面所で手を洗う事にした。
洗面所の扉に手を掛けて開くと…
「え?」
「え?」
一瞬、脳の思考が止まった。
目の前に居たのはバスローブで身を包んだミアだった、予想もしなかった光景に俺は何も喋れず固まってしまったのだ。
「出てけぇ!こんヤロー!!!」
「ぶへぇ!?」
ミアは顔を沸騰したかのような赤さで涙目で俺の事を睨み付けていた。
「ま、まさか入ってるとは思って無かったんだよ!」
「ノックくらいしろ、バカ!」
俺は思いっきり突き飛ばされて壁に叩き付けられる。
それと同時に…
「あら?鍵が開いてるわ…先程助けて頂いた者です!お礼の品を渡しに来たのですが...」
俺とミアの状況を一目見た後、そっとドアを閉じる…
「あ、お楽しみ中でし…」
「ま、ま、待ってくれぇ!誤解だぁぁ!!」
俺は慌ててさっき助けた女性シーナにことの経緯を説明をして誤解を解いてもらった。
「なるほど…そうだったのですね、私の勘違いで大変申し訳ありません…」
「いやいや、そんなに謝らないでくれ…誤解されるような事をした俺が悪いんだから」
気まずい空気をなんとか会話で打ち溶かす事に成功した。
「それで、俺に何か用があるんじゃ無いんですか?」
「はい、さっきは助けて頂いてありがとうございました。あなた達は異国から来たのですよね?ほんのお礼ですが、南聖帝国トロピキの宮殿内をご案内したいのです!」
「え?それは良いのか?俺達は異国の部外者だし…」
「でも、私の恩人なのです!それに+で何でも1つ物を提供させてください!」
風呂上がりのミアが俺の耳元で囁いた。
「ねぇ、今の私達の財布的に帰国するにはあまりにもお金が足りないわよ…」
「だよな~でも目立つのも避けたいし…」
「大丈夫ですよ!この事は私と私の家族だけの秘密なので!」
まあ、どのみちこのままだと何ヵ月かはこの国で足踏みする事になるからな、これはある意味チャンスなのかも…?
「分かったよ、そのお礼受けさせて貰おうかな」
「ありがとうございます!では、明日朝にここに迎えに来ますのでよろしくお願いしますね!」
シーナはお礼を言ってそのまま立ち去って行った。
「ルーク、わかってるわよね?」
「はい、今日は床で寝ます…」
そして、俺は硬い床に頭を打って目が覚めた。
「いってぇ…!もう朝か~」
「もしかしてルークって寝相悪いの?床で寝て床に頭を打つなんて…」
「昔からだよ…それより早く準備しないとな」
数十分後…
「お二人とも準備は出来ましたか?」
ノック音の後にシーナの声がする。
窓から宿の外を覗くと宿前に馬車が止まっていた。
「行きましょう、人集りが出来る前に乗ってください!」
俺達は馬車に乗って城まで向った、道中で市民達からチラチラ見られているのに気がついた。
「町の人達がチラチラ見てるし、この内装…豪華な馬車だな、早く教えてくれよあんた何者だ?」
「貴様、誰に向かって…!」
「良いのよ、ライベル」
「まだ言って無かったわね、私は南聖帝国17代目国王の1人娘のシーナ・トロピキよ」
「大貴族の娘かと思ったら、国王のかよ!?」
驚き過ぎて俺の心の声が駄々漏れだった。
「まさか、お嬢様言って無かったのですか!?」
「恩人を警戒させたく無かったの…」
「全く、あなたという方は…」
シーナの隣にいる執事らしき人物は額に手を当てながらやれやれと呆れている。
「お嬢様が大丈夫と仰ったから素性の分からぬお前達を通したんだぞ、感謝しておくんだな」
「何でそこまで信用してるんだよ?」
「私の天性から授けられた天眼があるからなの」
「天眼…?」
「私の一族は代々他人の本質を見抜く事が出来るの…そして、あなた達は大丈夫だってこの目が判断したの」
「初めて聞いたわ、そんな物があるなんてね…」
「そうですね…他国で私のような力を持つ者で言うなら黒豹、白猫、銀虎なんて聞いた事はあるでしょ?」
「ブフッ!!」
思わずドキッと震え声が出てしまった俺を白猫がパシッと叩いて正気を取り戻させてくれた。
「まさか、その力って継承される称号なの?」
「はい、他の人間には漏らさないようにお願いします」
「分かったわ、教えてくれてありがとうね」
「あ、まもなく到着します」
橋を渡り城の敷地へと入って馬車が止まり、2人目の執事が馬車の扉を開けて俺達を迎えた。
「ようこそお越しくださいました」
「おぉ~豪華な宮殿…さすが王族だな」
「今回は王族らしく貴殿方をおもてなしさせて貰います、食事の用意が出来てますのでさっそく行きましょう」
俺達は食堂に連れて来られて椅子に座ると沢山の量と種類の料理が運ばれて並べられた。
「初めて見る物もあるな…」
「なんだか見ているとお腹が空いてくるわね…」
俺とミアはご馳走を存分に味わった。
その後は、城のおもてなしを受けて部屋でゆっくりとしていた。
「ここ広いしなんでもあるし、充実してて凄いよ…」
「でも、明日は本格的に帰国の為に話をつけないとね。」
「だな~今日は沢山遊べて疲れたわ~」
俺は目を閉じて深い眠りに付いた。
それから何時間経っただろうか…
「…ン……ん…?」
「やべっ、俺寝てたのか…トイレ…」
俺は寝ぼけている体を起こしてトイレに向かう為に廊下に出た。
向かっている途中にある音を耳にした、雫がピタッ…ピタッ…と落ちる音、トイレとは真反対の場所からだ。俺はゆっくりと近づき音がする部屋の中を見る、良く見えず明かりを灯した。
周りがハッキリと見えた時、俺にはあり得ない光景が目に入った。
「……は?」
目の前には人がシャンデリアにぶら下げられていたのだ。その人から垂れている血の音が聞こえていた。しかし、そんな事よりもルークを驚かせたのは…
「シーナ…?」
次の投稿までしばらくお時間経ちますがご了承下さい。




