表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/17

初戦は酸っぱい?

 アルエットさんはプリンセスガードを目指して、武者修行中との事。戦闘力は申し分ないが〝貴女は世間知らず過ぎるから、旅にでも出て見分を広めなさい〟と姫様に言われたそうだ。


「それでズレーハ村に来たら、ゴブリンに苦しめられてたんすよ。騎士として見捨てておけないから、討伐を始めたんすけども、最近ゴブリンを見つけられなくて困っていたんす」

 アルエットさんには、ゴブリンのホルモンが染みついているんだと思う……今、ゴブリンは警戒中だろう。


「俺が様子を見て来ますよ。ゴブリンはどの辺に多く出ましたか?」

 剣があれば、俺でもゴブリンに勝てる筈。いざとなったら、セーフティゾーンに逃げれば良いし。


「村を出て西に行くと森があるっす。そこで良く会ったすよ」

 そこならセーフティーゾーンを展開しても逃げられる筈。陽向がズレーハ村に来たら絶対にストップを掛けられてしまう。


「異世界から来た人なら、何か原因を特定出来るかも知れないっすね。お願いするっす。アイちゃんも行くんすか?」

 後ろを見ると、風野さんが薙刀を持って待っていた……どうすれば、村に残ってもらえるんだ?


「ええ、陽向ちゃんからお兄さ……幸大さんの事を頼まれましたので。さあ、行きましょう」

 俺の方が風野さんより年上な筈。それなのに何故か主導権を握られている気がする。


「ちょっと待って下さい……確かこの辺にあった筈……さあ、行きましょう」

 車の中から、必要な物を取り出す。


「それ、お兄さんが使っているタオルですか?」

 俺が取り出したのは、まだ洗濯をしていない使用済みタオル(加齢臭付き)。


 アルエットさんに教えてもらった道を進んで行く。天気も良く風も穏やかで平和そのものだ。

 本当に魔王軍と戦争中なのだろうか?まあ、この辺は前線じゃないんだろうけど。


「あそこがアルエットちゃんの言っていた森ですね……どこに行くんですか?」

 目の前にあるのは手付かずの森。ゴブリンどころか熊とかも出そうだ。


「ちょっとだけ待っていてくれますか?」

 木陰に移動して、タオルで体を拭きまくる。流石の風野さんがいる前で股間のタオルを突っ込めない。

 後はタオルを枝にぶら下げておけばオッケー。簡易式体臭トラップの完成だ。セーフティゾーンを展開して、様子を見る。

 俺は体臭が薄い方だ。コーヒーでも飲んでゆっくり待つとしよう。


「凄い!もう来ましたよ。流石、幸大さん!」

 嘘だろと思って見ると、見た事のない動物がタオルに釘付けになっている。

鑑定結果 ゴブリン雄 状態(空腹)

 ゴブリンさん、空腹だから即反応したんだよね。それと風野さんの流石は、どっちの意味なんだろ。


「それじゃ、行ってきますね」

 唖然としている風野さんを後目に、ゴブリン目掛けて駆け出す。

 構えなんて知らないし、正しい握り方も分からない。


「グギャ!?」

 これは試合じゃなく戦い……いや、一方的な虐殺だ。驚いて固まっているゴブリン目掛けて剣を振り降ろす。

 一回、二回、三回……気付くと肉塊となったゴブリンを見おろしていた。

(さすがにきついな……俺が殺したんだ。生きゴブリンを殺したんだ)

 酸っぱい物がこみあげてくる。後ろで見ている風野こどもさんの事を思い、それを強引に飲み込む。

 見栄を張るんだ。大人だから平気だって、見栄を張れ。


「幸大さん、大丈夫ですか?……ちょっと、すいません」

 ゴブリンの死体を見た風野さんが離れた所へ走っていく。日本では動物の死体を見る事は滅多にない。

(水でも持って行くか……なんだ?こりゃ)

 ゴブリンの死体の脇に薄汚れた小石が落ちていたのだ。

鑑定結果 ゴブリンの魔石 買い取り価格100バート。

 お約束二連発で、魔物を倒すと魔石が手に入るらしい。そしてゴブリンの魔石は安いと。

 車に戻って、ミネラルウォーター入りのペットボトルと未使用のタオルを取り出す。


「大丈夫ですか?きつかったら、車の中で休んでいて下さいね」

 風野さんにペットボトルとタオルを手渡す。そのまま車に戻りスコップを取り出し、ゴブリンの死体の所へ移動。穴を掘って死体を埋める。

 これは優しさじゃない。次のゴブリンを呼び寄せやすくする為だ。

(それじゃ消臭清潔保持魔法を選択)

 淡い光が俺を包み込む。これでゴブリンのフェロモンが消えてくれたら、嬉しいんだけど。


「幸大さん、ご心配をおかけしました……もう大丈夫です」

 声がしたので、振り返ると風野さんが立っていた。少し顔が青ざめているけど、目から強い意思を感じる。やっぱり、いざとなったら女の方が強いのかも知れない。

餓鬼こうこうせいの頃の俺なら車内に逃げていただろうな)

 だったら、俺はもう風野さんを子供扱いしない。自分の意思を持った大人の女性として接する。

 でも、俺が誘惑に負けそうになったら〝風野さんは、まだ子供だ〟と自分に言い聞かせます。


「今度はセーフティゾーンから出て様子を見ます」

 これでゴブリンが来たらアルエットさんの力を借りられる。


「来ました……行きます」

 現れたのは二匹のゴブリン。風野さんはゴブリン目掛けて駆け寄っていく。

 俺も加勢しようと続く……けれども必要なかったです。

》風野さんは音もなく近付くと薙刀を一閃。首を切り落とされるゴブリン。これが格の違いってやつです。


「そろそろ陽向が来ているかも知れませんから、一回村に戻りませんか?」

 あっさり倒したとはいえ、かなりきついと思う。これが大人の配慮ってやつです。


「ちょっと待って下さい。ゴブリンの血が付いているから、薙刀を拭かないと……このタオル借りて良いですか?」

 風野さんが枝に掛けてあるタオルに手を伸ばさそうとしたので、強引にカットイン。

 俺はエロい事が好きだ。だけど、ここまで真っ直ぐな少女に汚れたタオルを持たせる趣味はない。


 さて、どうしよう。陽向ちゃんまたしても、ご機嫌斜めです。


「あーにーきー!大人しくしててって、言ったでしょ。もう、愛まで巻き込んで」

 ご立腹の陽向の隣には、アルエットさんが立っている。どうやら村の入り口で、陽向の事を待っていてくれた様だ。

 ズレーハ村に来る人は限られている。ましてや黒髪の少女なんて陽向しかいなから、簡単に特定出来たんだと思う。


「大丈夫だよ。幸大さんが守ってくれたし」

 ナイスフォロー、風野さん。後からおじさんがお菓子をあげます。


「こ、こうだいさん!?兄貴っ!愛になにしたの!」

 そこに食いつくか?いいじゃん。名前で呼んでもらう位。


「だって、私がお兄さんって呼んだら兄妹だって誤解されちゃうでしょ」

 いや、遺伝子的に無理があります……陽向と兄妹だってのも、信じてもられない事あるけど。


「そうだけどさー」

 ここは空気を変えなくては。


「ゴブリンを倒す方法を思い付いたんだ……アルエットさんにも協力してもらいますよ」

 うまく行けばかなりの数のゴブリンを倒せる筈。


 村には宿屋がなく今日も車中泊です。

ログインボーナス ノートと鉛筆

ミッション達成 ゴブリンを倒せ 1000珠

 ゴブリンで1000珠か。これはありがたい。とりあえず、今取るスキルはこれだ。

 マジックキャンセルを500珠使って、獲得。これがゴブリン戦で役立つのだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ