決意の瞳
『激戦炸裂ホビースピリット!!』はこの下スグ!!
サイトはそのままだ!!
※この物語はフィクションであり、登場する人物、地名、団体名などはすべて架空のものです。
玩具などで叩く、投げつけるなどの行為は大変危険です。
玩具の使用は用法を守り、安全な遊びを心がけましょう。
そして、不意に教室全体に鳴り響く電子音による鐘の音。教室正面の備え付けのスピーカーから始業のチャイムが鳴り始めたのだ。教室の各所で立ち話をしている生徒たちは、皆各々各自の席に戻り始める。良囲は、しばし空珠の隣に立ち尽くすが、彼に掛けるべき言葉を何も捻り出すことが出来ず、結局自分の席へと戻っていくしかなかった。仲間として、落ち込んだ空珠をこのままにはしておけない。だがしかし、掛けるべき言葉が見当たらないが故の…、何かしなければいけないのに何もできないもどかしさが、良囲の胸中にくすぶり続けた。
教室の戸が開かれ、教師が入ってくる。
その直後、廊下の方から荒々しい足音、何者かが全力疾走しているであろう足音が高速で接近!そしてそれは、教室の前で鋭い摩擦音に変化!おそらく、足を踏ん張りブレーキをかけた際の、靴と廊下が擦れる音ォ!!
直後…
教室の戸が大きな音を響かせ勢い良く全開!開かれた戸の向こう側には、息を荒らげた1人の男子生徒。そして、男子生徒の入室と同時に、先程鳴り始めたチャイムが鳴り終わる。教室内の全視線が、たった今教室に踏み入った男子生徒に集中する。
「何をしていた火嵐。登校するのがやや遅い。そうは思わんか?」
教卓に立つ教師が、呆れた声で男子生徒に声を飛ばす。そう、始業のチャイムと同時に入室したのは火嵐琉樹である。
「ハア…ハア…、でも遅刻じゃないですよね? 教室に入ったときは、まだ8時29分だったはず…。日本の…、標準時刻では…!!」
息を荒げ弁明する琉樹を見、ため息一つ付いて教師は言葉を返す。
「昨日に続き本日も1分前登校。加え、その態度…、恐れ入る…、やや悪い意味でな!」
「いいじゃないですか、『遅刻』じゃないんだから。」
登校時間が遅いが『遅刻』ではないという事実。琉樹はいかにもな、したり顔を浮かべ、いそいそと自分の席へと向かう。 同時に、への字に開かれた教師の口から疲れた吐息が漏れた。
そのとき、ふと真奈が、急ぎ足の琉樹を小声で呼び止める。
「アンタさぁ、狙ってやってんじゃないの?『ギリギリ登校』。」
琉樹は、したり顔を崩さず真奈に顔を近づけ小さな声で話しかけた。
「…お? 分かる? 実はさ、学校に着いた後、校舎1階のトイレに隠れてんだよ。それで、始業の1分前になったら、颯爽とダッシュして教室にズバーッと入るワケ。やっぱギリギリに教室入るとサイコーに目立って気持ちいいしな。 …どうだ、スゲェだろ?」
それを聞いた真奈は、重くなった額を右手で支えた。
「…なんつーか、チョイ引く…? 」
琉樹の朝は、他の生徒とは一線を画しているのだ…。 やや悪い意味で!
―――そして、その日の放課後
『放課後』、それは授業が全て終了した時間。ある者は数人のグループを作って下校し、ある者は野球部などのクラブ活動に勤しみ、またある者は図書室で読書を行う時間。傾きかけた太陽の優しい光が真っ直ぐ差し込む教室から、次々と出て行く生徒達。
「良囲ー! 帰ろうぜー!」
その中で、琉樹は良囲に向かって声を上げた。だが、良囲は、それに耳を貸そうともせず、いそいそと1人、教室を後にし歩き去る。いや、その様子は『いそいそと』というものではない、明らかに『急いで』いる。何らかの目的のために…。
「良囲!? おい、良囲ぃ!? …聞こえてねぇのかな?」
良囲の姿は、下校のため廊下を歩く生徒達の人ごみに埋もれ、見えなくなっていく。良囲を誘いそこねた琉樹は、もう1人の友人、空珠の方へと向かった。
「空珠ー! 一緒に帰るかー?」
「…あ、琉樹…。」
「なんか良囲の奴、1人でピューッと帰っちまいやがってさぁ。一体どうしたんだろうなアイツ?」
良囲が去っていった廊下の方へ目線を移す琉樹。直後、空珠は目を見開き、そして、みるみる顔を曇らせる。
「まさか、良囲…。隣町の学校に…。 アカン…、良囲でもアイツには敵わへん!」
「空珠…、どした~?」
琉樹は、俯く空珠の顔を覗き込んだ。すると、空珠は緊迫した顔で琉樹の目を直視し叫ぶ!
「良囲を止めなアカン!! 敵のヤバさを知るワイが、止めなアカン!!」
風に棚引く黒い学ラン。ポケットに両腕を突っ込み俯き加減で歩く男児。瞳の奥に静かに輝くは決意の炎…。
「見えてきたぜい。聞いた話じゃあ、あの学校に『ホビーコレクター洲葉徹』がいるらしいが…。」
良囲が見つめる先には、茶色い煉瓦造りの校舎。洋風な雰囲気を醸す、高級感あるデザインだ。この学園に通っている男子生徒、洲葉徹。彼こそ多くのホビーファイターからホビーを、空珠の独楽を奪い取ったホビーファイターである。
「うああぁあッ!!」
突然、何者かの叫び声が良囲の直ぐ側の細い路地から飛び出した!その声に打たれる様に良囲は路地へと走る!路地の奥へと急いだ良囲の目に飛び込んできたもの、それは倒れた1人の男子と、彼の腕を革靴で踏みつけるもう1人の男子の姿であった!
良囲は…、 直感した!
「まさか、アイツがホビーコレクター洲葉徹か!?」
足で踏みつけた少年の手から、強引に『けん玉』を奪いとる黒いマントを羽織った1人の男子。そう、正に今、ホビーコレクターが他のホビーファイターからホビーを奪い取っているのである!
良囲は直ぐ様、洲葉徹と思われる人物の方へ駆ける。そのとき、その男子が口を開いた。
「貴様のホビー、この私、『美のホビーコレクター洲葉徹』が貰い受ける。このホビーもまた、貴様の手にあるより、私の所有物となったほうが、より美しくなること・・・確実!」
「くそっ…、返せ…俺のけん玉…!」
倒れた男子が途切れそうな声を搾り出し、奪われたけん玉に手を伸ばす。
だが…
「シィッ!!」
「ぐぁッ!!」
ホビーコレクターは伸ばされたその手を、手に持ったトランプで目の前に漂う埃を打ち払うかのように素早く、冷酷になぎ払う!
「執着…、醜い…この上なく…醜い。このホビー、既に…私の所有物!」
そのとき良囲が後ろからホビーコレクターの腕を強く掴んだ。
「オメエが最近噂のホビーコレクター洲葉徹だな? それをアイツに返すんでい!」
良囲の目付きは鋭い。ホビーコレクターは良囲の方へゆっくりと振り向く。白い半袖のシャツに大きな黒いマントを羽織り、頭にはシルクハット。その立ち姿、例えるならばそう…、怪盗と言う言葉で表現するのが最も近いであろう…!
「如何にも、私の名…洲葉徹! 貴様…何者? このホビー、既に、私の物となってる。ホビーは、醜き敗北者の下にあるよりも、美しき我が手の中に有る方が…、輝きを増す!」
洲葉徹の口元はうれしそうにつり上がっている。それを見た良囲は強く言葉を発した。
「俺の言った事が聞こえねぇのかい? 何度も言わせるじゃねぇでい。それをアイツにを返すんでい…!!」
「否、拒否、断固拒否、断る、以上。」
歪む口元からリズミカルに発せられた言葉は、良囲の神経を逆撫でた。良囲の手は徹の襟元に伸び、掴みかかる!
「オメエなあ、巫山戯てんのかッ!! 言うとおりにいろい!! こんなことして… ホビーファイターとして恥ずかしくねぇのかい!!」
だが洲葉は表情一つ変えず、マイペースに言葉を返す。
「そこまで言うなら、貴様が私を倒し、私から…、このホビーを奪い返せばいい。 …それだけのこと。」
良囲は一つ舌打ちを飛ばし、徹を突き放す。
「てやんでぃ!! 言われなくてもそのつもりでい! 俺がオメェを倒したらそのホビーと・・・、空珠から奪った打ち独楽を返してもらうぜい!!」
「空珠・・・、打ち独楽・・・?」
「おうよ! 俺はもともと、空珠って奴の打ち独楽を取り返しに遥々(はるばる)ここまでやって来たんでい!」
徹は目を見開き、口元から歯を覗かせる。そして迫力ある言葉を発した。
「面白い! いわばそれ、正しく…、敵討ちといった所! 美しき友情! いいだろう、その勝負…、受けて立つ! 時刻は今日の午後8時00分!! 場所はこの学園の裏側にそびえる廃ビルの屋上!!向かい側のコインランドリーが目印だ!! 以上ゥ!!」
…荒い息遣い。ある目的地へ直走るは2人のホビーファイター。
「ハア、ハアッ。見えてきたで、あそこや! 良囲はあの学園に向かったハズや!」
息を荒げ、走りながら説明する空珠。後ろには琉樹が続く。
「あそこにホビーコレクター、洲葉徹が・・・!」
その時である。2人の前方より、一人の男児が静かに歩いてきた。
「良囲!?」
空珠はその男児、良囲を見て声をかける。良囲は2人を見ると足を止めた。
「おう、空珠に琉樹じゃねぇかい。どうしたぃ? そんな慌ててよお。」
良囲は軽い声を二人に掛けた。
「良囲! まさかもう…!?」
「………。」
空珠の問いに良囲は無言を返した。
「ホビーコレクター洲葉徹に…?」
「…おうよ。」
良囲の肯定を意味する一言。その一言で琉樹、空珠は全ての状況を理解した。珍しく空珠の表情が険しくなり、声を荒げた。
「何考えてるんや! アイツに負けたらホビー奪われんねんで!? ワイの独楽を取り返すためなんか? ワイが独楽を奪われたのはワイの失態、ワイの問題や! それやのに良囲が…」
「違げぇよ…!」
良囲の一言が空珠の言葉を塗りつぶした。
「オメエの独楽を取り戻すって目的もある。でも、それだけじゃねぇ…。俺はよう、俺個人として1人のホビーファイターとして、あの野郎のやってることが…、他のファイター達のホビーを奪うっていう行為が気に入らねぇんでい…!」
ここで琉樹が空珠の前に出て良囲に迫る。
「でもさ、ソイツって空珠が全く歯が立たない程の奴なんだろ? お前でも勝てねぇんじゃねぇのか?」
そう、琉樹、良囲、空珠の3人は同程度の実力。つまり空珠が歯が立たなかった相手には、他の2人が戦っても勝てない可能性が高いのだ。その事実を率直に述べる琉樹。
「だからどうしたってんでい!? 俺はあの野郎が気に入らねぇ。だからぶっ飛ばしてぇ。それだけでぃ…!!」
そう言うと良囲は2人を振りきり去っていった。その背には、それ以上の言葉を許さない鋼鉄の壁の如き威圧感が浮き出ていた…。
『激戦炸裂ホビースピリット!!』
次話も見てくれよな!!
ホビーファイト… スピリット・・・
クラーーーーーッシュ!!!!




