人… 朝日に集いし刻(とき)… 終極の香り
『激戦炸裂ホビースピリット!!』はこの下スグ!!
サイトはそのままだ!!
※この物語はフィクションであり、登場する人物、地名、団体名などはすべて架空のものです。
玩具などで叩く、投げつけるなどの行為は大変危険です。
玩具の使用は用法を守り、安全な遊びを心がけましょう。
多数の人間の声が飛び交う正方形の形をした広い部屋。時刻は午前8時過ぎ。部屋には30席ほどの机と椅子が均等に整列し、部屋にいる十数人の男女は皆、決まった服装をしている。男子は白い半袖のシャツに紺色の長ズボンに白靴。女子は大きな襟の付いた白いブラウスに水色のスカート、そして男子と同じく白靴。そう、ここは、どこにでも、そこらへんにでもころがってそうな、関東のどこかにある園編野町の園編野学園の1教室。現在の時刻はまだ始業前、授業が始まるちょーッと前。ある者は机に座り教科書やノートなどを整理し、ある者は立ち話をし、またある者は読書に勤しむ。何の変哲もない学園の日常風景が滞り無く流れ複雑単純なサイクルを形成する。
…そのときである。
教室に揺らめくように入室する一人の女子生徒。息を荒げ、多少の疲労感を帯びゆらゆらと教室内を歩いて行く。
頭の後ろの2箇所で束にした長い髪、眉はカーブを描きつつ柔らかくつり上がっている。人目を引くは、その頭部に被せられたバンダナ… 白と赤の2枚の布を左右、白2:赤1の割合で繋ぎあわせた独特のデザインのバンダナである。
程なくして彼女は1つの座席に倒れこむように腰掛け一呼吸、倦怠感を吐き出した。直後、彼女は隣の座席に座っていたもう1人の女子生徒に声を掛けられる。
「あっ、おはよう真奈。 今日も元気…」
…と、言いかけたところで彼女は、目の前の水乃真奈の疲労感漂う顔を見て口を止める。
「…じゃないみたいだけど、どうしたの?」
明らかにいつもとは―――、 いつもの元気さのない今日の真奈を見て、彼女は少し心配した様子で声を掛けた。
声を掛けた彼女の名は戸松巴心。前髪を頭のやや左側で左右に分けたショートカット。少し垂れ下がった眉と丸顔の輪郭がおっとりとした雰囲気を醸し出している。
その巴心の言葉を聞き、真奈は静かに呼吸を整え言葉を紡ぎ出した。
「…うん、家に忘れ物して…。登校中、学校が見えてきた頃に急に思い出して、急いで取りに戻ったんだ。 なんつーか…、家と学校の間をほぼ1往復した…。 疲労が激々ヤバい…。」
顔に張り付いた笑顔は何処か自嘲的だ。
「それは、災難だったね。一体何忘れたの?」
巴心の疑問の言葉を聞くと、真奈は学校指定のカバンから1冊の小さな本を取り出し、巴心に差し出した。
「はい、コレ。」
取り出された小さな本を見て、目を丸くする巴心。
「あっ、コレって!?」
「コレだよね?巴心が昨日読んでみたいって言ってた文庫本。ほら、今日貸したげるって約束したじゃん?アタシ、うっかり忘れててさ~・・・。」
「えっ!?もしかして・・・、『忘れ物』ってこれ? そんな、わざわざ取りに戻ってまで・・・」
真奈から差し出された本を前に困惑する巴心。だが、そんな困惑を打ち払うように真奈は言葉を続けた。
「『親しき仲には正義あり』って言うじゃん? アタシと巴心は友達だけど・・・、ううん友達だからこそ、約束は大事系でしょ?」
真奈の何気ない言葉。だが巴心は、そこに真奈の優しさを、自分の胸が暖かくなるのを感じた。自然と顔が綻び、感謝の言葉が出る。
「コレ、ありがとうね、真奈。」
そう言って、巴心は静かに本を受け取った。
「いいよ、お礼とかさ。『親しき仲には正義あり』だし。」
「『親しき仲には正義あり』… えっと…そうだね。」
(――『親しき中にも礼儀あり』だけど… まあいいか。)
本を渡した真奈は、机の上にぐったりと突っ伏す。相当疲れているようだ。その様子を見た巴心はある疑問が浮かんだ。この学園は自宅と学園との距離が一定以上離れている場合、自転車での通学が認められる。
真奈の場合は、その一定距離に満たないため徒歩での通学となっている、そのため今朝は走って本を取りに帰ったということらしい。だが、真奈には、自転車に乗らずとも高速で…
自転車を遙かに超える速度で移動する手段があるはずなのだ。
「ねえ真奈、『アレ』は? えっと…いつもホビーファイトで使ってる、『長い距離を一気に駆け抜けるホビー技』 あれなら直ぐに家と学校を行き出来ると思うんだけど。」
「ああ、『ハイドロスラスター』ね。それが出来れば苦労しないって…。 実はさ~、風紀委員の吉律に目ェ付けられて、風紀委員の会議かなんかで『ホビー技』で登下校するの禁止されてさぁ。『風紀が乱れる』って言ってたけど…、別にいーじゃん! 速けりゃんいーじゃん!」
「うん、吉律君ってちょっと真面目過ぎるかなって思う…。この学校はもともと校則きつくないからあんなに毎日毎日、風紀のこと五月蝿く言わなくてもね。」
(――あの技で住宅地の屋根の上をピョンピョン跳び回ってたら結構迷惑だとは思うけど…。本人は気付いてないみたいだなぁ…。)
巴心は真奈と同意見を述べ吉律を批判するが、内心では吉律の言うことも間違いではないと感じていた。
「一言目には風紀、二言目は規則、それしか言うことないの? 絶対アイツ、他人注意して楽しんでるって。あンのクソ真面目ガリ勉ネクラ…、水底に沈めて口を開けなくしてやろうか…!」
頬杖をつき、しかめっ面でこのクラスの風紀委員、吉律愿冶への不平不満を並べる真奈。それを眺める巴心は苦笑いを受かべた。
「そうだ、真奈。ホビーファイトで思い出したんだけど・・・。『ホビー狩り』って聞いたことある?」
「『ホビー狩り』? …あ~、最近ちょっとした話題だよね。たしか『ホビーコレクター・洲葉』とか言うヤツだっけ? なんか隣町じゃ、ソイツがにいろんなファイターに勝負仕掛けて、負かしたファイターのホビーを奪い取ってるんだっけ。全く・・・、物騒じゃん?」
「うん。」
「それが、どうかした?」
「…真奈も気を付けてね。この園編野町でも『ホビー狩り』に遭った人がいるそうだから。」
「大丈夫。アタシはそんな巫山戯たファイターに関わったりしないって。怪しいヤツは目で分かる。アタシは人を見る目あるから!」
「だよね。 真奈は眼力ある方だよね。」
(――いや、別にそうでもないよ。真奈の眼力は中の下だよ…?)
そのとき、ふと真奈は巴心から視線を外し、教室の戸口に目を向ける。 そこには一人の男子がいた。
「あ! 空珠。 おはよう! 今日は登校遅いね? 転校したばっかだから道にでも迷った?」
真奈が声をかけた先にいる男子生徒。彼の名は藤・帝冠・空珠。頭に沿ってなだらかなカーブを描くショートヘア、少し彫りの深い顔立ちは、彼にイタリアの血が流れていることを象徴するようだった。また彼はこの学園に転校してきたばかりであるため他の生徒とは違い、以前の学園の制服を着ている。
『儲かってまっか』や『おおきに』を口癖としており、彼が以前住んでいた関西地方では、これが挨拶なのだそうだ
「…ん。 ああ、儲かってまっか…。 真奈さん、巴心さん。」
空珠は少し間を空け挨拶を返す。だがその声は何処か力が無い。空珠は元々紳士的で静かな人物、それを考えても力のない声だ。
「空珠君…何か様子がおかしい…。」
巴心はゆっくりと歩く彼の背を見ながらポツリと呟く。彼の仕草や声色から言い知れぬ違和感を感じたのだ。
「え? 空珠の様子がおかしい? うーん、言われてみればそんな気も…。 いや、でも気にしすぎだって、アイツは基本あんな感じ。」
真奈もすでに歩き去った空珠の背に目を移すが、彼にそれ程変化が有るようには思えなかった。
空珠が席に着いたとき、またも教室の戸が開き、1人の男児が入ってきた。他の男子生徒と明らかに異なり、丈の長い学ランに、高下駄。はっきり言って時代錯誤ともとれる、かなり渋い服装。そう、江戸っ子、豊武良囲である。
真奈は、教室に入ってきた良囲に声をかけた。
「おはよう、良囲。 昨日の琉樹とのホビーファイトどうだった?」
良囲は目を閉じ、口の端を少しだけ釣り上げた。
「へっ。昨日は俺の勝ちだ。」
おはじき使いの良囲とメンコ使いの琉樹は、親友であるとともにホビーファイトにおけるライバルでもある。2人は毎日のように、ホビーファイトで腕を競い合っているのだ。
突然、巴心が椅子から立ち上がり、良囲に近づき小さな声で喋り始めた。
「良囲君・・・。」
「ん、なんでい?」
「あのね。空珠君のことなんだけど。なんだか今日、様子がおかしいみたいで…。 何か悪い予感がする…。 良囲君は空珠君と仲が良いんだよね?だから…」
そこで、一瞬言葉が詰まる。だが見かけによらず(?)思慮深い良囲は、言葉足らずの巴心の言葉の先を理解し、頼もしく答える。
「…よっしゃ。俺に任せとけい。」
そう言うと良囲は、空珠の方へ向かって行った。江戸っ子というものは、困った人を見れば放っておけない義理人情に厚い者。少なくとも良囲はそう思っており、それを自らの理想としているのだ。
「オッス、空珠!」
良囲が空珠に近づき声をかける。
「…っあ、儲かってまっか、良囲。」
ワンテンポ遅れるようにして空珠が挨拶を返した。どこかぼうっとしていて上の空という感じ。やはり何処かおかしいようだ。良囲は空珠の隣の席に座り身体を向ける。
「空珠、何かあったってのかい? 元気がねぇぜい?」
「…いや、ワイに限ってそりゃあらへん。」
そう言うと空珠はカバンから教科書やらノートやらを取り出し始めた。空珠本人は自身の異変を否定するが、やはりどこか違和感がある。空珠の方を見ていた良囲は、ふと有ることに気付く。空珠のカバンの中に、いつもあるはずのものが入っていなかった。
「空珠、今日は独楽は持ってきてねぇのかい?。」
その言葉を聞いた空珠は、一瞬手が止まり、言葉を失った。2人の間に訪れる沈黙。明らかに何かがおかしい。
「はっ…! まさか…」
良囲は突然目を見開き、小さく驚きの声を上げた。空珠は、鞭で叩くことによって回転力を与える独楽『打ち独楽』を使うホビーファイターである。空珠も含め、多くのホビーファイターは、いつでもホビーファイトを行えるように、常にホビーを携帯していることが多い。にも関わらず、今日の空珠は独楽を携帯していない。そして『独楽』という言葉を聞いた直後の彼の反応。そして、園編野町でも活動をはじめたという隣町の『ホビーコレクター・洲葉』の存在…。 全て…、繋がる…!!
―――合点…行く。
「オメェ、まさか…、『ホビー狩り』に?」
良囲の言葉を聞き、空珠は俯き、自虐的な笑みを浮かべた。
「ハハッ。隠し事はでけへんな…。 ああ、やられたんや…。 全く敵えへんかったわ。 良囲も気を付けたほうがええ。 どんなことがあっても絶対に『ホビーコレクター・洲葉』とファイトしたらアカン。 彼は、マジかって以上に激しく激強い!」
「…ッ。」
ホビーファイトを行う上で1番大切な『相棒』となるホビーを奪われた者の気持ちは、奪われた本人にしか分からない。良囲は、それ以上掛けるべき言葉を見つけることが出来なかった。
『激戦炸裂ホビースピリット!!』
次話も見てくれよな!!
ホビーファイト… スピリット・・・
クラーーーーーッシュ!!!!




