↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
78/200

第77話 転校児童、繋げサバキ

 夏――満月六姉妹の通う『百式高等学校』は夏休みの真っ最中だった。

 かといって、一切学校に来ないということは決してない。コーリンやマジナは部活・練習に励んでいる。


「では本日も、生徒会活動頑張りましょう」

 特にサバキは忙しかった。

 彼女は先日の選挙を勝ち抜き生徒会長となり、生徒会をまとめて庶務に勤しまなければならないのだから。


 ここで生徒会顧問の先生から連絡事項が、

「初めにですが、近所にある児童館から何名かボランティアが欲しいというお願いが届きました。それで、生徒会の皆には優先的に参加して貰いたいのです」


 児童館とは、夏休み中に両親が共働きなどで面倒が見れない子供を預ける施設のこと。

 それのボランティアといえばやはり職務内容は『面倒な子供の面倒』。

 故に生徒会役員の何人かは『やりたくないなぁ』と、いった失礼な会話をコソコソとする。


 一方、生徒会長にのし上がり、みんなを導くやる気に満ち溢れているサバキは、真っ先に尋ねる。


「先生。もう少し詳しい話をいいですか?」


「待ってました。活動日数は明後日から一週間。時間は午前十時から午後四時まで。一時間休憩ありです。なお、他の週はまた別の高校からボランティアを募るそうです」


 それを聞いて、サバキははっきり言う。

「よしわかった! ならばその一週間、シフト制で全員一日は参加するようにしよう

!」


 すると何人かは、

「「「えー!?」」」

 と、反対の意を示した。


「『えー!?』じゃない! みんなは百式高校の生徒会、この学校の模範、地域に愛される存在になるべき生徒だろうが!

 それがボランティアの一つや二つ参加しないとは……じゃあ貴様らは何がしたくて生徒会に入ったのだ!?

 これからPTA用の書類作りをするように、ホチキスをカチカチやるためだけに来たのか!?」


 サバキの気迫に圧され、反対派の生徒は、

「「「は、はい……」」」

 すんなり降伏した。


「なあに、そこまで怖がらなくてもいい。シフト制だシフト制、一人最低一日参加するだけでいい」


*


 かくて二日後、百式高校の生徒会役員数名が、近場にある児童館へ訪れた。


「よし、これで生徒会長として本格的な勤めが出来るぞ!」

 と、生徒会長、サバキは気合いを入れ、


「やる気満々だなぁ。新生徒会長さんは」

 と、情報通の青木はその様子を軽くイジり、


「サバキお姉ちゃんの言う通り、生徒会長として初の本格的な仕事だからね。これまでずっと書類作りしかしてなかったもん。ならたぎるよやる気が」

 と、ユノスは青木へ補足する。


 児童館へ入る前、サバキはユノスと青木とその他生徒会役員に向かって言う。

「ではみんな、百式高校の生徒として恥じないように、お子さんの面倒を見るように!」


 その時もサバキのやる気はすこぶる高かった。


 だが、サバキの気概は早々に打ち砕かれることを、彼女はまだ知らない。


「お待たせしました。百式高校から参りました。生徒会長、満月サバキと、その他生徒会一同です。本日はよろしくお願いします!」

「「「「「よろしくお願いします」」」」」


 児童館の職員に挨拶した後、簡単に職員と打ち合わせをして、生徒会一同は子供達と触れ合い始めた。それすなわち、サバキの苦行の始まりである。


 ある男の子がサバキに声をかける。

「あのー、青い髪のお姉ちゃん」


「おっ、来たな。お姉さんはねー、満月サバキっていうから、ね」


「ふぅん、サバキね。ねぇ、外で鬼ごっこしようよ」


(しれっと自分を呼び捨てしていないかコイツ……まぁいい。まだ子供だ、厳しくしすぎるのは成長の邪魔であるし、ここで怒ってはこちらが短気になる)


「わかった。じゃあやるぞー!」


 という訳でサバキはその男の子に連れられ、外の広場に出て、


「じゃあサバキが鬼ね。みんな逃げろー!」


 その男の子の友達四、五人から逃げられた。


「勝手に鬼にされた…まあいい、とことん追いかけるぞー!」


 サバキは逃げられた男の子の内誰かを狙って追いかける。

 すると、二人の男の子がこちらに迫ってくる。


(おっ、自ら迫ってくるか。冒険家気質な子供だ。

 ……悪い気がするが、これは鬼ごっこだということを多少わからせてやるとするか)


 サバキは二人の内どちらかをタッチしに、そちらへ駆ける。

 すると、接触間近に、片方の男の子がもう片方の男に縄跳び縄を投げ、二人は横に広がり、縄をピンと張る。


(うわっ!)


 そしてサバキは縄に足をわかりやすく引っ掛けつまづいた。 


「「やったあ! 引っかかった!」」


 だがこのイタズラのターゲットは、かつて異世界で魔法使いを取り締まる『断退警察』に所属し、『ケルベロス』のコードネームを持ち、魔法使いを何人も牢屋送りにしてきた歴戦のエージェント――サバキ。

 彼女はバク転の要領で転んだ勢いを我が物にし、軽やかに立って見せた。


「「す、すっご……!」」


「すっご、じゃない! 危ないでしょうがこんなことしたら! やめてよねこういうイタズラは!」

 と、子供に合わせて優しく怒るサバキ。しかし、元気盛りな子供たちのイタズラはまだまだ続く。


「そーれ、水鉄砲だー!」

「撃て撃てー!」


「ちょっと! 今のしてるのは鬼ごっこだよね!?」


 ある時は子供たちの撃つ水鉄砲を全力で避け、


「いっけー! 鬼をやっつけろー!」

「首斬れ首斬れ!」


「だからごっこ変わってるよね!? あと危ないし、言ってることが物騒だよ!?」


 ある時は子供達が振りかざしてくる枝を全力で防ぎ、


「よーし、お姉さん追いかけるぞー……ってあれ、いない!?」


 最終的には、鬼ごっこに参加していた子供たち全員が館内に入り、一人広場に置いてけぼりにされた。


*


 休憩時間。


「ユノス、お前子供受けよかったな。『お絵かき上手〜!』ってキャーキャー言われて。よかったじゃん」

 と、青木先輩はユノスを褒める。


「そりゃそうですよ。だってボク漫画書いてますもん」


 青木先輩はサバキの方を向いて、

「対して……生徒会長様。どうしてあの時、一人外で駆け回ってたんだ? こっちはみんな館内で忙しくしてたってのに」


「あれは……子供特有のイタズラにはめられたんですよ」


「えー、生徒会長様が子供のイタズラにはめられた……随分ナメられたもんだな、生徒会長様が」


 サバキはギロリと青木先輩を睨みつけて、

「……『様』をつけるのやめてくれませんか? それほど生徒会長が子供の手のひらで踊らされるのが滑稽ですか?」


「いえいえ、ちょっとクスっときただけです……さて、もうそろそろ休憩時間終わるな。これからも忙しくなるぞー」


「本当にそうだ。また子供たちからヒドイ目に合わないといいが」

 と、いうサバキのつぶやきは、杞憂で終わ……


「えいえい! くらえー!」

「最強ビーム!」


 ……らなかった。


 サバキは子供たちが提案したヒーローごっこの敵役となり、子供たちから無数のボールを投げつけられた。


「多い多い、痛い痛い! 地味に痛い! アーイタイイタイ、グワーヤラレター」

 と、子供の戦いごっこから逃れるテンプレワードを使って、サバキはこの場から逃れた。


 館内に戻ってきたサバキを見て、青木先輩は言う。

「あれ、戻ってくるの早くないか生徒会長?」


「先輩、いっぺん外出て相手してみたらどうです。そして先輩は今、何をしているんですか?」


 青木先輩は手を、周りの机に向かう子ども達を見せびらかすように開いて、

「夏休みの宿題やってる子供を見守ってる」


「やっぱり一回外出て貰っていいですかねぇ!?」


 青木先輩は、心底行きたくなさそうな目をして、外へ出ていった。


「わー、新しい怪獣だー!?」

「誰が怪獣だと〜!?」


「さて、自分は、嫌な仕事を部下に押し付けて、自分は楽しているような上司のようにならないよう、青木先輩よりはまともなことをするか」

 サバキは手当たり次第に子供に声をかけた。


「何か宿題で困ってること無い?」


「お姉さん、ひっ算の繰り上がりってどうやるの?」


「次の位に一足すんだよー」


「あ、お姉さん! この漢字どう読むのか教えてください!」


「はい、今行くよー」


 という感じで、サバキは宿題に関して困っている子供たちに教えて回った。


「ありがとうお姉さん!」


「どういたしましてー……」


 その最中でサバキは気づく。この勉強スペースの隅で、さっきからずっと黙々と勉強している男の子がいることを。


(何だあの子は……背丈からして小学校低学年か? こう周りから避けるように勉強して、余程真面目な子供なのか?)


 その男の子が気になったサバキは、彼へ話しかける。

「君偉いね。さっきからずっと黙って勉強し……」


「話しかけないで」

 男の子は、語気を強くしてサバキを突き放した。


「あ、ごめん邪魔して……」

 その強い口調に驚き、サバキは男の子から離れる。


(どうやら、すごく真面目な子供のようだ……興味本位で話しかけるのは浅はかだったか?)

 と、軽く反省するサバキに、その様子を見ていた職員がひっそりと言う。


「あの子はショウト君って言うの。ああいう風に話しかけても、ああいう風に返してくるの。どうやら『友達を作りたくない』らしくて」


「『友達を作りたくない』? どうしてかわかりますか?」


「……これ、盗み聞きした話なんですけど、ショウト君、この夏休みが明けたら転校するらしいんですよ。

 お父さんが大きめの会社の管理職で、人事異動が頻繁にやってくるらしいからって。

 小学二年生になってから、この辺の小学校に転校して、ここに来始めたばっかりなのに……」


「それで、どうせ転校するから今思い出作った所で、意味なんて無いと思っている。という感じですか?」


「多分、そうなんでしょうね……可愛そうな話ですけど」


*


 その日の夜、夕食中にサバキはその話を持ち出した。


 それを聞いて、ピコリは言う。

「何か、ものすごい大変そうな子供ぷり」


 さらにチヨは言う。

「転勤族ね。これは」


 サバキは尋ねる。

「転勤族? 何だそれは?」


「転勤族っていうのはね、仕事の都合とかで転勤が多い人のことを言うの。だからそういう人の子供は、それについていかされて転校とか多くなるの。

 しかし壮絶ね、まだ小学二年生の子供が『どうせすぐ別れるから、友達を作りたくない』って悟るなんて……」


「改めて考えると可愛そうだな……」

 と、サバキはつぶやく。


 マジナはそれを拾って、サバキに言う。

「あ、サバキってこういうのに同情するんだ。私としては意外だなぁ。サバキなら『合理的でいいんじゃないか?』とか言うと思ったけど」


「今の自分は生徒会長だぞ。多少の人間味は身につけてると自負しているぞ。

 それに、これは自分だから同情しているんだ。ああいう幼い頃から独特の固定化された考え方を持つ子供は、周りから疎まれるからな……ここに帰ってきたばかりの自分ばかりみたいにな」


「ああ、柿の種勝手に食っただけでマジギレしてた頃みたいにぷりね。確かに、あの頃のサバキ姉さんはおっかなかったぷりね……」


「とにもかくにも、ショウト君が心配だ。自分の轍を踏ませないように、何とかしてあげないと」


*


 翌日。百式高校生徒会一同――生徒会長にして今回のボランティアの発案者であるために毎日参加が確定しているサバキと、お仕事大好きユノス含む――は、また児童館を訪れた。


(今日もいるな。ショウト君)


 早速サバキは、ショウト君に話しかける。

「おはようショウト君」


「何で僕の名前知ってるの……」


「ググった」


「……つまんないギャグだね」


「……ごめんなさい。お姉さんはみんなの面倒みるお手伝いしに来たからね。だからもれなく、ショウト君の面倒を見るんだよ」


「……あっそ。けどもう話しかけないで。僕、宿題とか全然困ってないか……」


「あー、あれ見てー!」

 この時サバキが指さしたのは、外の広場でドッジボールをする、元気な男の子グループである。


「ほら、みんな、楽しそうだよ! 天気もいいし、外で皆で遊ばない?」


「……やだ。今皆で遊んでも何の意味もな……」


「ううん、意味あるよ? もしいつか体育の時間でドッジボールする時の練習になるよ? 嫌でしょ、ドッジボールへたーって皆にバカにされ続けるの」


 今日のお姉さんは粘り強い。と、幼いながらもショウト君は察した。

 なのでショウト君はこれ以上『やだ』と言い続けても通じないと考え、

「……わかったよ。外で遊べばいいんでしょ? ただし、お姉さんも一緒に来てね」


「うん、いいよ」


 かくてショウト君とサバキは、外にいる男の子達に混ざり、二人別チームに別れ、ドッジボールを始めた。


(どうせここで楽しくしたって、お別れするんだ……適当に外野いって負けて、さっさと宿題に戻ろう)

 と、企むショウト君であったが、


「食らえー! ショウト君!」


「ひいっっ!?」


 籠りがちな性格が高い危機察知能力として活き、無意識に飛んでくるボールをかわしてしまう。


「あはは、面白いねーショウト君。よし、じゃあショウト君、今度は攻撃、やってみてよ」

 ある男の子がショウト君にボールを渡す。


 ショウト君はさっさと仲良しごっこを終わらせたいので、適当にボールをぶん投げる。


 するとこのボールは奇跡的に、

「しまっ、油断したうわぶっ!?」

 真っ直ぐ、勢いよく、サバキの顔面に命中した。


「わはは、やっぱりサバキ面白ーい!」

「あとすごいなーショウト君! あのサバキにボール当てるなんて。顔面だからセーフだけど」


 そう別の男の子に褒められ、ショウトは思い切り照れて、

「そ、そう……ありがと!」


(よし、少しだけだけど思い出が出来たな。ショウト君)


 それから、ショウト君は男の子グループに混ざって、楽しそうに遊んだ。

 サバキはその様子を見て、微笑むのだった。


 そして午後四時前――生徒会一同のボランティア終了時間が迫ろうとしてきた。


「先生さようならー!」

「また明日も遊ぼうねー、サバキ!」


 同時に、何人かの親が子供を迎えに来ていた。


「おい、ショウト! ショウトはどこにいる!」

 もちろんその中にはショウト君の父親がいた。


「あ、ショウト君のお父さんが迎えに来たよ!」


「はっ、まずい!」


 外の広場で遊んでいたショウト君は、大急ぎで父親の元へ行く。

 

 そしてサバキは、

(今の『まずい』……どことなく嫌なニュアンスがするな)

 ショウト君の様子がおかしい事を察知し、彼の方についていく。


「何!? ドッチボールで友達と遊んでた!? ふざけるな!」

 すると、仕立ての良いスーツを着た、エリート臭漂う男性――ショウト君の父親の怒鳴り声が聞こえてきた。


「ご、ごめんなさい。お父さん……け、けど、楽しかったよ、お友達と遊んでて」


「楽しかったから何だ!? どうせあと数週間もすれば別れるのに、余計な思い出つくるな!

 どうせ泣き虫なお前のことなんだから、引っ越し際になったら大泣きする癖に!

 わかってるだろうな、お父さんはお前を泣き止ませる時間が無いぐらい忙しいって!」


 ショウト君は父親に向かって土下座して、

「ひいっ、ご、ごめんなさい! ごめんなさい!」

 と、必死になって謝った。


「ああもう、そんなに謝るまでになるなら、最初っから友達と遊ぼうなんか考えなければよかったのに……聞いてんのか、ショウト!」


 ここが児童館であることをお構いなしに、ショウト君の父親は、児童館の職員や他の親子、生徒会一同が固まるぐらい怒鳴り散らす。

 そこへ生徒会長、サバキは重たい空気を突っ切って二人の元にやってくる。


「何だお前は!?」


「高校生ボランティアです!」


「高校生ボランティア? そんな奴が一体何をしに来たっていうんだ!?」


「お父さんに言いたいことがあって来ました! ここ数日、自分はショウト君と向き合ってきましたが、どうしてここまでショウト君を追い詰めるんですか!? たかが友達と遊んだぐらいで!?」


「さっきからデカイ声出して言ってただろ。ショウトが後々面倒くさくならないように!」


 サバキは義憤に駆られ、ショウトの父親に言う。

「自分からすれば、今のあなたの教育方針の方が、後々面倒くさくなるような気がしますけど!?」


「何だと!? 高校生だか何だか知らないが、大人に楯突く気か、お前!?」


「これはあくまで自分の見解ですけど! そういう風に友達を作らないで、一人ぼっちになってる子供は、コミュニケーション能力とか、性格とかに支障が出てくると思うんですよ!

 確かにあなたがこう、今、友達を作らせないようにすれば、後々めんどくさくならないとは思いますけど、その『後々』は一体、いつの日に、誰のために役に立つんですか!?

 自分は『手前勝手なあなたのため』にそう言ってるように思えるんですが!?」


「だから、それがどうした!?」


「それともう一つあなたに言いたいことがあります。『子供は大切にする』のが親の最もたる務めだと思うんですけど! あなたは果たしてそれが出来ていますか!?」


 父親はサバキを睨んで。

「高校生ボランティアの分際が大人に楯突くんじゃない! 逆にわかるのか!? 面倒くさい子供を持つ気持ちとか、大人としての責任とかを!?」


「逆の逆で、あなたがそれを尋ねる権利があるんですか!? 今のところ、親としての務めはまるで出来ておらず、大人の務めも出来ているかどうか怪しいあなたが!」


「いい加減黙りやがれ! このクソガキがぁ!」

 そう言ってショウト君の父親は、サバキに殴りかかる。

 しかしその前に、父親の顔面に思い切りボールが命中し、彼は盛大に転倒する。


「こらー! これ以上ショウト君とサバキをいじめるな!」

「ガミガミガミガミうるさいよ! おじさん!」

「サイテー! ワガママ! ジコチュー!」


 そして、さっきまでショウト君と遊んでいた子供たちが、罵声と共に、さらに父親へボールを投げつける。


「痛い痛い痛い痛い! おいガキこら、お前らが何してるのかわかってるのか! 暴力だぞ暴力! このふざけるな!」


 サバキと子供たちは、奇跡的に声を揃えて言う。

「「「「「ふざけているのはお前だろ!」」」」」


 この後、騒ぎを聞きつけた児童館の館長がやってきて、ショウト君の父親は、『本当の大人』より、徹底的に説教を食らった。


 そしてその後父親は、

「……今までごめん、ショウト」

 虐待の二字を突きつけられたがためか、まるで別人になったように態度を改め、ショウト君とともに帰っていった。


「あと、すみません。ボランティアのお姉さん。仕事の多忙が重なりストレスが溜まっていまして、あんな大人気ない怒り方してしまって」

 もちろん、サバキへの謝罪はかかさなかった。


*


 翌日。サバキは、ユノスと他生徒会一同を引き連れ三度児童館に訪れた。

 そして、サバキは真っ先に、ショウト君に会いに行った。


「昨日ね、お父さんがね、好きなだけお友達作っていいって言ったんだ。そして、お別れの時は好きなだけ泣いていいって言ってた。それが子供のお仕事だからって」


「そうか。それはよかったね」


「……昨日はありがとね。サバキお姉さん。僕の事かばってくれて」


「それはいいんだよ。お姉さんは当然の事をしたまでだから」


「あと、あの時ボールを投げてくれたみんなにもありがとう言わないと。そして、またみんなといっぱい遊ばないと!」


「うん、それが一番大事だよね!」


 かくて、父親の堅苦しい束縛から解き放たれたショウト君は、これから、いつか来るお別れの日まで、悔いの残らないように友達と遊ぶのだった。


「わー、食らえー!」

「悪者をやっつけろー!」

「ギッタギタにしてやるー!」


「だからお姉さんのことを本気で囲んで叩かないでくれない!?」

 そしてサバキお姉さんはまた、戦いごっこの悪役にされショウト君ら子供たちにボコボコにされるのだった……笑顔で。


【完】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。