Ep20:卒業
――3の年が訪れた。
アンジェル高等学校に新設された校舎へ皆が招き入れられた。そこは50人という規模ですら余り余るほどの空間だ。そこではエディーヌ校長の最後の挨拶と教えが伝えられる。卒業生である俺達、皆に王国へ勤める為の助言を行う。
「卒業生となる諸君の今後の栄誉に称賛を与える」
彼等は王国側に住む民という人々との繋がりがある。よって俺のような平民区出の者には冷ややかではあるが、大体が元々の出であるから、余りその辺りは意識していない。
「王国へ勤めるにあたり、これからの課題の助言を与えよう」
“ザワザワ・・・助言?”
「私は王族の出である。だが、平民も貧しい最中、貴族として王国へ向かう者が居る。それは自らの意志だけでなく、より多くの意志を束ねた者に集約されている」
校長は生徒達に剣術大会を与えた人物でもある。それも王国からの伝達で貴族と併合した内容で起こした。より多くの意志を束ねた者・・・それはあなた意外の誰でもない。
「私から与えられるのは君達の人生の少しでしかない。その人生を王国に分け与えるのに反して、多くの知恵と約束がもたらされるだろう!だが、決して自尊心を絶やさないでくれ。己だけでない多くの自尊心を糧にしてほしい・・・」
そのようにして、卒業生への言葉を済ませたエディーヌ・サリバン校長。彼の意見は今後、新たなる貧困を生むかも知れない。ただ、俺の様な者も居れば、多くの貴族達を束ねる人物も居るだろう。卒業を満して閉幕したその儀式にも近い言葉を念にして忘れる事はない。彼も伝記に在る大いなる意志の一つとして・・・。
――夜
俺達生徒は、宿舎や食堂で世話になった事を挨拶しに出回った。そこには自由な言葉の交わりが多く在ったからだ。中には泣いて見送るような声を挙げる者も居る。皆、衣食住を共にしてきた。もう、同じ名前を呼ぶことは余り無いだろうという、意識を以って卒業にあたる。
この暗がりに灯されたランタンに導かれるように。
◆ ◆ ◆
「なァ、お前達はこれからどこへ向かう事にした?」
「ダイヴァー王国へ回ることになる。そこには富は無いが、多くの技術がある」
「私はダネルへ行くわ。宝石などの資源を持って、各地の貿易を重ねるの」
「僕はギュネズ・・・かな。少し訳ありで・・・行くかな」
皆、新天地と呼ばれているパヘクワードの世界を通じて、それぞれの道を歩もうとしている。俺はもう間もなく、召集の手紙がやって来る。そこは資源こそ多いが、計画事があるらしく、特に工学的な部門に特化している様だった。その本質は分からないが、貧困から立ち上がる一人の者として逃してはなら無い機会だろう、と皆へ告げた。
「道ねぇ・・・。そういえばライズは言ったっけ?貧困を救うとか。君も大変なんだな?」
「俺は大した理由を掲げてはいるけど、多くの教えにも恵まれたよ。思う処は残すべき課題としてだ・・・」
「ああ、違いない。だけど道を踏み誤ることの無い様、互いに気を付けたいものだな・・・」
お互い合図をして、寝床へと向かう。お互い馴れ合わない様にとの言伝を入校後に窺ってはいたが、結局、それは無かったことになる。自立を目指すうえで皆が寂しがらないような配慮を意図しての事だろう・・・。
俺達は何れ旅経つ。それが天文学と歴史にある、宇宙の掟だとするなら、それに従っても立ち上がる。その背に腕に荷物を掲げて・・・。
――明朝前
校門の前には荷馬車が着いていた。エディーヌ校長先生による連絡によってだ。
俺達はまだ幼いし、これからがあるので、人脈を築くのもそれ以降のことである。ありがたく荷馬車の主人に挨拶をし、乗り込む。外はまだ暗くて冷えている。
「やぁ、ライズ・・・また会えたね。随分と大きくなったなァ」
「お久しぶりです。俺の家族は元気にしていますか?」
「あぁ・・・、勿論だよ。時折、食材の配達にも顔を合わせている。でも少し老けていたかな?」
僅か3年間で容姿が変わるという事は滅多に無い。だが、年齢が連なる度に骨格が変わってしまうような寂しさに移り変わる。俺も年を重ねた。そして逞しく成長させてもらえたのだ・・・と。
「皆、乗ったかね?」
「はい」
「荷物も置きました」
「では、アンジェル高等学校を発つよ」
そう言って主人は皮の鞭で馬の背中を打つ。
“バシンッ”
―ヒヒヒ~~~ン―
俺達は、故郷へ戻る。戻れば、これまでの出来事、行いを伝えることも出来る。それは貴族も平民も、変わりはない。皆、自身と各学科の学問と闘ってきたからこそ、自らを伝える事もできるのだ。いい友人が居たのだと・・・。




