第4話 武踊合わせ
森にやってきた獅童は熊に襲われそうになっている女の子を発見し守る。
「鳴神!」
ダン!!
これは妖躰術の奥義であり本来は妖躰術”雷”で加速しながらスピードを緩めることなくそのまま妖躰術”拳”にて拳を振りぬくもの。しかし獅童はそこを妖躰術”蹴”にてアレンジしているのだが先の麟盛との試合では刀掌を使用されはじかれて終わっている技。
「ゴガッ!?」
しかし今回は相手である熊は一切の反応ができないまま一撃で胴体を両断された。これには獅童に守られた森人族の少女も驚きだが本人が一番驚いている。
「(これって……こんなに威力強かったんだ……おじいちゃんすげえな……)」
獅童は改めて麟盛への尊敬を強めた。そこで両断された熊を見ていた獅童はハッと少女を思い出す。
「あっ!?だいじょうぶでしたか!?」
後ろを振り向くと少女もまた呆気に取られていたがその呼びかけにより正気を取り戻した。
「え、ええ……。君がいなかったら私は死んでいたかもしれないわ。命の恩人よ。本当にありがとう」
頭を下げてお礼を言う少女。獅童は初めて見る森人族に驚いていた。
「(改めてみるとすっげえ美少女だな。これが森人族か)」
少女は少しして顔を上げると場所を移動して自己紹介。
「私は翠楼国のイリシャ・ストリ・ミィリット。翠楼国の王女よ」
「王女様だったんだ。僕は天酒獅童。僕も一応緋火国の当主の息子だよ。それにしてもどうして君みたいな子供がこんな危険な森に?」
「……子供は獅童くんのほうじゃない?命を助けられておいてなんだけど……」
「え?」
確かにイリシャのほうが獅童よりも身長が高いし獅童は6歳なためイリシャがお姉さんという可能性は高い。
「私は12歳。獅童くんは?」
「僕は6歳だよ。確かにイリシャのほうがおねえさんだね」
「……6歳……」
年齢を聞いて改めて驚くイリシャ。
「鬼人族ってみんな獅童君みたいな子供でも強いの?」
「どうなんだろう?わかんないや」
なんとなくゴマかした獅童。自身が赤ちゃんチートを使っているための実力と認識しているので後ろめたさもあったのかもしれない。
「……ねえ聞いていい?」
「なにを?」
イリシャは言いにくそうにそれでも気になることなのか獅童に問うた。
「……なんで助けてくれたの?同盟国って言っても……別の種族だし……それに命の危険もあるのに……」
どうやらイリシャは助けられたことに疑問を抱いているらしい。
「(別の種族、ね……これはなにか吹き込まれてるか?)」
特に翠楼国の内情を知っているわけではない獅童だが、この世界には多くの種族がいるせいで他種族を認めない思考の持ち主がいてもおかしくないとい考えた。同盟国の森人族でもそれは同じことだろうと。
「ねえ?どうなの?」
「身体が勝手に動いただけだよ。人の命を助けるのに他種族とか同盟とか関係ないだろ?」
「それって……じゃあ獅童くんはそれが敵の国や種族でも助けるの?」
「そうなんじゃない?戦争でもない限り今の状況だと誰が相手でもそうすると思う」
「……ずいぶんなお人好しね……」
「別に普通だよ」
しかし自身の感性を普通と言う獅童だがその考えはこの戦乱の世においては異常な思考だった。それが他種族が入り乱れる世界での戦乱を意味している。
こうして獅童は定期的に森でイリシャと会うことになる。
/////
半年後
「くっ!?」
「どうした?乱れておるぞ?それに随分と苦しそうじゃ」
獅童と麟盛は現在武踊合わせをしていた。これは名の通り互いに対面となり武踊をするということ。相手の動きに合わせて動くいわば対戦形式のこの武踊合わせだが、ゆっくりな見た目に反してやっているほうは結構辛い。
「(速度は同じだというのに……こうも違う……どれだけ俺の動きに無駄が多いかがわかる……)」
同じ速度をしゆっくりと対峙する両者。しかしその滑らかさが違う。洗練さが違う。獅童は雑だからこそ体力を使うし、雑だからこそ間に合わない。防御しか出来ず攻勢に出れない。ここにはさすがの獅童であっても歴戦の実力者には敵わない。
「ハアハア……ハアハア……」
「ふむ。今日はこんなところとしようかのう」
「あ、ありがとうございました」
なんとか最後の挨拶は言えたがそれも限界だった獅童はその後にその場で倒れ込む。そこに鈴が布巾と水を持ってやってくる。
「獅童。お疲れ様。ほら水飲める?」
「あ、ありがとうおばあちゃん」
獅童の汗を拭いてやりながら水の入ったコップを獅童に手渡す。獅童はその水を一気に飲み干す。
「ぷはあー!おじいちゃん!この武踊合わせってやつ次もやりたい!」
「そのつもりじゃから安心せい」
「やったー!」
獅童は異世界にやってきて次第に強くなっていくのが楽しくなってきたのもあり、こうした辛い鍛錬も厭わなくなってきていた。
一方で麟盛はといえば・・・
「(正直……危なかったかも……。もっと早くに終わらせるつもりじゃったのに……加速度的に成長されたせいで体力が限界じゃ……)」
獅童にそれとバレないようにしかし服の下は結構な汗をかいていた。麟盛としたら獅童の才能を鑑みても軽く終えられるとふんでいた。まさか限界まで体力を使うことになるとは思っても見なかった。
「(獅童を舐めておったわけではないが……儂も鍛え直さにゃならんかも……末助のところにでも行ってみるか……)」
こうして麟盛は孫の獅童にそう簡単に負けないために、かっこいいお爺ちゃんでいるためにライバルの圭堂末助を巻き込んで獅童には内緒で鍛錬をすることにした。
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