第2話 妖力
鬼人族には他種族にはない鬼人族のみが使用できる妖力と呼ばれる力がありそれを使用する技が妖術と呼称される。
その妖術は身体能力を強化させて近接戦闘に強い獣人族が使用する獣気と、個人魔法力が高く遠距離戦闘に強い森人族の魔力を合わせたような最強の力。
そんな最強の種族の鬼人族であるが現在は同種族同士で争っていたりするために天下からは程遠い。
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「すう〜……ふう……」
獅童は目を瞑り特殊な呼吸法と共にゆっくりと身体を動かす。まるで太極拳のようなそれは妖力の扱いが一定のレベルを超えた者が行う、身体を思い通りに動かすための"武踊と呼ばれるトレーニング。
それは寿命が約500年ある鬼人族としてはとてもわずか6歳が行うトレーニングではなく、逆に武踊を行っていることが獅童の才能の高さを証明している。
それもこれも赤ん坊の頃より妖力を操作し続けた結果の才能であり獅童が目指した赤ちゃんチートの成功だと獅童は自負している。
そんな獅童をじっと見るのが獅童の祖父である天酒麟盛。年齢が423歳であり鬼人族の寿命が約500年と考えれば普通の人間の晩年ほど。
数十年前に緋火国の当主の座を息子に譲ってからは悠々自適な暮らしをしながらも類稀なる才能を有する孫を指導している。
「(う〜む……この孫……ちょっと凄すぎるかも)」
麟盛が獅童の才に気がつき武踊を教え始めたのはつい最近のこと。にも関わらず獅童は真綿が水を吸うがごとく1を教え10を理解する。それは400年以上を生きる麟盛をして初めてだった。
「(これが……真なる才ある者ならば……儂など……)」
仮にも緋火国の当主であった麟盛はその職に劣ることのない実力者。老いた今でも麟盛に勝てるのは現当主である獅童の父親など片手ほどの極々一部のみ。そんな麟盛をしてそう言わしめている獅童はしかし自身の才には気が付かない。
「(前世でも太極拳はやったことないけど案外楽しいなこれ。いかに俺が身体をちゃんと扱えていないかがわかる)」
獅童の妖力の操作が6歳にして大人顔負けなのは確かに赤ちゃんの頃からの鍛錬のお陰。赤ちゃんチートのなせる技であるが、しかしこの武踊からわかる身体を扱う才能に関しては赤ちゃんチートは関係がない。ひとえに獅童個人の純粋な才能だった。
「よし獅童よ。ひとまず休憩じゃ」
「うん、わかった」
ちなみに2人がいる場所は麟盛の家の庭。
「はいお茶ですよ~。お煎餅も置いときますね~」
「ありがとうおばあちゃん!」
その人物は麟盛の妻である天酒桐(402歳)。この桐もまた薙刀の名手でありその実力はいくつもの戦乱を生き抜いたいまだ衰えぬ実力者。
「おばあちゃん!お茶と煎餅おいしいよ!」
「あらあら♪ありがとうねえ♪」
ニコニコの桐。お茶も煎餅も桐の自作でありその味は絶品。獅童のこれもお世辞で言っているわけではない。
「(マジでうまい。前世でも煎餅はともかくお茶は好きで高級なのも飲んだことはあるけど段違いだし。異世界特有なのかそれともおばあちゃんがすごいのかどうなんだろう?)」
内心でそれらを考えていると麟盛がため息を吐きながらつぶやく。
「はあ~……獅童は本当に賢いのう~……それに比べて最近の若いもんは……」
その何度聞いたかわからない言葉に獅童は苦笑いで桐は呆れ。
「またそれですか?おじいさん?」
「ばあさんも思うじゃろう!最近の若いもんは武踊を怠るものがほとんどじゃ!なまじ鬼人族として身体能力が高いからと!」
「(まあ確かに。これをやらないのはもったいなさがあるよな。俺も確実に強くなってるって実感してるし)」
麟盛の言葉は聞き流しながら絶品のお茶と煎餅を堪能する獅童。すると聞き流していたのが悪かったらしい。
「なにをしておるんじゃ獅童!やるぞい!」
「ん?え?」
なぜか木刀を手に庭にいる麟盛が獅童を呼んでいた。
「次は実際に戦う訓練じゃ!先ほど獅童も了承したじゃろう!」
「……そうなの?おばあちゃん?……」
「ええ、おじいさんの言葉に頷いていましたよ」
「……そうなんだ……」
獅童は聞き流していたためにその言葉を知らないし頷いていたのはお茶や煎餅を美味い美味いと頷いていただけなのだが。
「安心せい!得物は木刀じゃしな!死にはせんじゃろう!」
「(死ななきゃいいってわけでもないんだけど)」
ちなみに麟盛はかつては緋火国一の剣士として他種族からも恐れられたほどの剣豪。それは老いてなお変わらない。
獅童は断ることもできずに対峙することに。ちなみに獅童は刀を扱うよりも素手のほうが性に合っているようで刀は使用しない。
「さあ!おじいちゃんに打ち込んできなさい!獅童!」
「……ふう……」
こうなったからには腹を決めて獅童は麟盛に挑む。
ダン!
麟盛と獅童の戦いが始まった。攻めるのは獅童。はじめに妖力を身に纏い身体能力+身体強度を強化する妖躰術にて短距離高速移動術。
「(見事な妖躰術"雷"じゃ。武踊によってただ速いだけでなく洗練された動きをしおる。そこらの大人でも敵わん者もいるじゃろうな)」
そう獅童を心の中で褒める麟盛だがその動きは獅童の動きを完璧に見切り軽くあしらい続けている。
「(くっそ!?なにやっても通じねえ!?そりゃそうだろうけど!?せめてその余裕そうな表情を変えさせてやる!!)」
自身の動きが完全に読まれていることに当然と受け入れつつも一泡吹かせようと戦法を変更する。
「ほう?今度はなにを見せてくれるんじゃろうか?」
「(吠え面かきやがれ!)」
妖力には纏うことで強化される妖躰術とそのまま放つ妖擲術という遠距離攻撃もある。
ダッ!
一度麟盛から距離をとった獅童は妖力を放った。
「妖擲術”赤砲”!」
ボボボボボウ!
それは5つの赤い色をした妖力を固めたもの。その威力は現在の獅童であれば1つで木を折るほど。それが麟盛の顔面に向かって5つとも放たれた。
「なんと!?もう5つを同時に!?」
ザザザザザン!
獅童が5つ同時に赤砲を放てたことに驚きをあらわにする麟盛だったがしかしそれすらも簡単に対処。木刀で5つの赤砲を斬った。しかし獅童の本命はそれではなかった。
ダン!
「”鳴神”!!」
獅童は5つの赤砲を顔面に集中させることで一瞬だが視界から自身を消して一気に妖躰術”雷”によって急接近。そしてそのままの速度を一切落とさずに麟盛に蹴りを放った。
「なっ!?」
ザギン!!
「うわあ!?」
結果は獅童が吹き飛ばされて麟盛の勝利で幕を閉じたが驚いているのは麟盛のほうだった。
「(……才はあると思っておったが……妖躰術の奥義をあのような年齢で……)」
あまりの驚愕から獅童を見つめ続ける麟盛。倒れた獅童には桐が心配して近づいている。
「(確かにあれは形こそ拳と蹴で異なっておったが鳴神と呼べるだけの威力をあった……この儂ですら咄嗟に刀掌をしなければ危なかったかもしれん……これこそまさに……神童……)」
刀掌とは手のひらで相手を弾く妖躰術”掌”を刀の側面にて行う技。得物を持つ相手の体勢をを崩したり相手を斬ることなく弾くため傷を付けずに済む。
こうして着実に獅童は強くなっていく。
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