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赤い鉄壁:スターリン要塞で迎え撃て  作者: 柴 力丸


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1940年9月15日:赤き鉄壁、最終段階

【1940年9月15日・モスクワ クレムリン】


 スターリンの執務室で、シャポシュニコフは広げられた巨大な地図を指しながら、静かに報告を行っていた。地図には、バルト海沿岸のリガから、ミンスク、キエフ、さらに南下してウクライナのザポリージャ、そして黒海に面したオデッサまで、太い赤い線が力強く引かれている。それは、ソビエトが築き上げた、見えざる「赤い鉄壁」の全貌を示していた。


 シャポシュニコフ元帥は、落ち着いた声で報告した。

「同志スターリン。バルト三国併合後、リガの既存要塞群の『赤い鉄壁』計画への編入作業は、概ね完了いたしました。技術部隊と工兵部隊の迅速な作業により、地下輸送網の接続、砲台の再配置、そして偽装工作も予定通りに進捗しております。」


 スターリンは、地図上の赤い線を注意深くなぞりながら、パイプの煙をゆっくりと吐き出した。その目は、まるで未来を見据えているかのように、冷たく光っていた。

「つまり、我々の防衛線は、北方ラトビアのリガから、ドニエプル川沿いの要衝ザポリージャ、そして黒海の重要な港湾都市オデッサまで、連続した鉄の壁となった、ということだな?」


 シャポシュニコフは、確信を持って答えた。

「その通りであります、同志スターリン。ドニエプル川沿いの要塞線と、リガの強化された要塞群は、後方約20km~40kmの都市から地下鉄道網によって有機的に結びつき、迅速な兵力と物資の移動を可能にします。ザポリージャとオデッサ周辺の既存の防衛施設も、同様の思想に基づき、改修と強化が進められております。」


 彼は、地図上の各拠点を指し示しながら、その戦略的意味を説明した。

「リガ〜ミンスク間においては、バルト海からの敵の侵攻を阻止するための強固な第一線が構築されました。キエフを扼するドニエプル川中流の要塞線は、その深さと堅牢さにおいて、いかなる敵の攻勢にも耐えうるでしょう。そして、ザポリージャは、ウクライナ東部への敵の侵入を防ぐ最後の砦となり、オデッサは、黒海からの上陸を阻止し、南方の安全を確保する重要な拠点となります。」


 スターリンは、満足げに頷いた。彼の顔には、自らの戦略が着実に具現化されていくことへの深い喜びが浮かんでいた。

「良し。これで、西からのいかなる脅威に対しても、我々は強固な防壁を築き上げたことになる。敵は、この鉄の壁に血を流し、その進撃を阻まれるだろう。そして、その背後では、我が赤軍の機動戦力が、反撃の機会を虎視眈々と狙っているのだ。」


 彼は、地図から目を離し、シャポシュニコフを力強く見据えた。その目には、単なる防衛に留まらない、より大規模な戦略が秘められていることが見て取れた。

「だが、これは始まりに過ぎん。この『赤い鉄壁』は、単なる防御線ではない。それは、敵を誘い込み、疲弊させ、そして最終的に包囲殲滅するための、巨大な罠となるのだ。そのことを、決して忘れるな。」


 シャポポシュニコフは、深く頷いた。彼の目に宿る光は、もはや恐怖ではなく、来るべき戦いへの冷徹な決意を示していた。

「肝に銘じます、同志スターリン。リガからオデッサまで連なる鉄の壁は、祖国を守るための揺るぎない盾となり、同時に、敵を葬るための巨大な墓標となるでしょう。」



ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます。

只今、新しい小説を執筆中です。

近々投稿できると思いますのでその節はよろしくお願いいたします。

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