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赤い鉄壁:スターリン要塞で迎え撃て  作者: 柴 力丸


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1940年4月上旬:ユーゴスラビアへの回答と連携強化への布石

【1940年4月上旬・モスクワ ソ連外務人民委員部 会議室】

 1940年4月上旬、モスクワ。ソ連外務人民委員部の会議室では、ユーゴスラビアからの最初の回答を受け、今後の対ユーゴスラビア政策が協議されていた。モロトフ人民委員は、手元の報告書に目を通しながら、冷静な口調で会議の方向性を示した。


「ユーゴスラビアからの回答は、慎重ながらも前向きな姿勢を示唆している。彼らは、ドイツの圧力と、我が国との連携による潜在的な利益との間で、慎重に天秤を量っているのだろう。」


 担当の外交官が、分析結果を報告した。

「ユーゴスラビア側は、ボーキサイトの輸出には原則として同意しているものの、政治的な承認については、国内の反共感情やドイツとの関係を考慮し、慎重な姿勢を示しています。石油製品の供給についても、長期的な安定性を懸念しているようです。」


 モロトフは、小さく頷いた。

「彼らの懸念は理解できる。我々は、彼らが抱えるであろう国内的な、そして国際的な難しさを考慮し、さらなる譲歩案を提示する必要があるだろう。ただし、それは我々にとっての譲歩ではなく、両国間のより強固な連携を築くための布石であると理解させる必要がある。」


 別の外交官が意見を述べた。

「彼らが特に懸念しているのは、ロシア革命後の白ロシア人亡命者の問題です。ユーゴスラビアには、相当数の白ロシア人が居住しており、彼らの存在は、両国関係における潜在的な火種となりかねません。」


 モロトフは、その点について、明確な指示を出した。

「白ロシア人亡命者の問題は、過去の遺物だ。現在の両国関係の発展にとって、障害となるべきではない。ユーゴスラビアに対し、ロシア革命後の白ロシア人亡命者の件については、ソビエト連邦として一切不問とする旨を明確に伝えよ。彼らの国内事情に配慮し、友好的な関係を築く上で、この問題が障壁となることを避けたい。」


 さらに、経済的な連携を強化するための提案も議論された。

「ボーキサイトと石油の貿易を基本としつつ、技術協力や文化交流など、より幅広い経済的連携の可能性を探るべきだ。ユーゴスラビアの工業化を支援し、相互に利益をもたらす関係を構築することが重要だ。彼らにとって、ドイツ一辺倒の経済からの脱却は、長期的な国益に繋がるはずだ。」


 モロトフは、会議の方向性を総括した。

「ユーゴスラビアに対し、我々は友好的な経済的連携を強く望んでいる。過去の懸念材料については不問とし、未来志向の関係を築きたいという明確なメッセージを送るのだ。彼らが抱えるであろう不安を払拭し、互いに信頼できるパートナーとなるために、必要な措置を講じよ。」


 ソ連は、ユーゴスラビアの微妙な立場を理解しつつ、戦略的な目的のために、表面的な譲歩を示唆することで、より深い経済的連携へと誘導しようとしていた。

ここまでお付き合いくださり、ありがとうございます。

次回もどうぞよろしくお願いいたします。

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