第六話:能力の開花1
※少し長めです。
「えっ……私、魔術師としてやっていける……?」
その日の早朝、私は水無瀬時計店の近くにある河原でしゃがみ込み、がっくりと項垂れていた。
なぜかって?今しがた、信じ難い事実を突きつけられたからだ。
店を開く前の早朝。朝食を軽く済ませた私は、祖父母に散歩をしてくると伝えるやいなや、近所の河原に足を運んだ。自分に備わっている魔術師としての能力を把握するためである。幸い、今は早朝であるし、田舎ということもあって、周囲に人はいない。今の内に自身の能力を把握しようとした訳だが。
「というか……こういう能力もあるのか……」
「言っただろう。扱える魔術には本人の素質が左右すると」
近くで成り行きを見守っていた琥珀がしれっと答える。
琥珀曰く、自身の能力を把握するための方法の一つとして、一度だけ、魔力を極限まで高めることができる陣を使った方法があるとのことだった。私にそんなことができるのかと半信半疑だったが「召喚術が使えたんだ。大丈夫だろう」という琥珀の言葉を信じて、琥珀に指示されるがままに河原の地面に陣を描いた。
その中心に入り、気持ちを整え、集中力を高めることで一時的に魔力を高めることができるそうだ。もちろん、この術にも扱える者と扱えない者がいるようだが。しかし、かなり限定的で、三分程すると効力が消えてしまうらしい。それはそうだろう。この陣による魔術が永遠に使えたのなら、皆が皆、魔力を高めようと躍起になるはずだ。この世界の魔術はやはり、どこか倫理的である。
この術は魔力が底を尽き、けれどどうしても魔力が必要になった時ーーつまりは本当に困った時に使ういわば、緊急措置のようなものらしい。
まだまだ魔術師として駆け出しの私には、それがどういう状況なのかはいまいち想像できなかったが、琥珀曰く「例えば結界が張られた領域に入ったものの、なにかしらの理由で魔力を消耗した場合、その結界を通り抜ける力はなくなる。つまりは閉じ込められる。そういう時、その陣を使えば一時的に魔力が高まり、結界を通り抜けることができる」とのこと。琥珀の例え話はかなり限定的なものだったが、使いようによっては他にも色々な使い方ができるのだろう。
そして、魔力を高めることでなにが起きるのかというと。琥珀がいうには、なにやら二つの効力があるらしい。一つは微々たるものではあるが、多少なりとも体力ーーつまりは魔力の回復ができる。そしてもう一つは、やや乱暴な方法ではあるが、極限まで魔力を高めることで潜在意識に働きかけ、眠っていた魔術師として能力を引き出すことができるという。普段は持ち合わせない多大な魔力を得て身体に負荷をかけることにより、当人に流れる魔力の回路のようなものに「多大な魔力を得ないといけない危機に瀕している」と働きかけるらしい。そう錯覚させるに過ぎないが、いうまでもなく今回の場合はもちろん、目的は後者の方だ。とはいえ、乱暴なやり方であるが故に成功するか否かはその時の運によるところもあるようだが……。早急に手を打たなければ危険である。と自身に錯覚させることによって、本能から新たな術が発現する場合があるようだ。
※続きます。
次回更新は明日になります。
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