第五話:魔術師の世界2
※前回からの続きです。
「ギルド?」
「魔術師に仕事を紹介する仲介業者のようなものだ。経験値を得るためには個人で依頼を受けるか、ギルドで仕事を紹介してもらうかのどちらかだ」
「なるほど……」
「ギルドから受託する依頼は御三家の一族の者、あるいは御三家の一門となった者でなければ受けられない。そもそも、そうでなければギルドに関わる資格も与えられていないからな。ただし、個人で受けた依頼に限り、依頼に関係のある人間や妖が任務に関わることが許されている。その判断もギルドが行っている。ギルドで受けられる依頼は、依頼に当たる魔術師本人の実力によって難易度が変わる。依頼を遂行すると報酬として資金と、特殊な魔術道具ーー魔力増幅装置から魔力が与えられ、一定量の魔力を得ることができるが、報酬をどれだけ貰えるかは、受託した依頼の内容によって異なる。当然のことながら、魔力を得ればその者の魔術はより強力となり、場合によっては新たな魔術を獲得することもできる」
「い、意外と複雑……」
「慣れれば問題ない」
しれっといい放つ琥珀に、私はじとりとした視線を向けた。なんか、他人事じゃない?
「ギルドは御三家のまとめ役も兼ねている。魔術師界のルール、つまりは禁術もそこで定められている」
「禁術って?」
「文字通り、禁止されている行為のことだ」
いや、それは分かる。その中身を教えてくれ。
再び、じとりとした視線を向けると、私の意図が伝わったのか、琥珀は今から説明してやるから待ってろ、となぜか大層なドヤ顔で流暢に話し出す。もったいつけるな。腹立つな。
「内容としては、同族殺し、罪のない妖の無闇な討伐、神聖な妖の討伐、魔術を利用して新たに生命を生み出すこと、といったところだ」
「どれも意外に倫理的な内容なんだね」
「お前は魔術師をなんだと思ってるんだ」
「いや、魔術師っていうから、もっとこう、ダークファンタジー的なの想像してた。魔術を駆使して戦争を引き起こすとか」
「なんだそれは」
琥珀は軽く溜息をついてから、こう続けた。
「しかし、禁術を犯した者は間違いなく処刑される。まぁ、私もいるし、お前に限ってそれは有り得ないと思うがな。気をつけろよ」
「おっと。ここにきて急にダークな展開」
「だから、なんだそれは」
やはり、魔術師などという危険な世界には過激なこともあるようだ。
「だいたいの話は分かった。それでさ、御三家って、私の一族以外にどういう魔術師がいるの?」
「他の二つは、白河家と九条家だな。白河家はバカ真面目な一族だから特に問題はないだろう。だが」
「だが?」
「九条家には用心しろ。卑劣で薄汚い一族だ。なるべく関わらない方がいいだろう」
嫌悪を示すように、琥珀の眉間には皺が寄せられる。よほどいけ好かない相手のようだ。忠告通り、なるべく関わらないようにしよう。
「まぁ、詳しいことはおいおい知っていけばいいさ。今お前がやるべきことは、自分の能力を把握し、それを使いこなすことだ。明日から特訓だな」
「特訓!?聞いてませんけど!?」
琥珀との出会いが。そしてこの先に待ち受ける様々な出会いが。思いもよらない真実を導き出すことになるなど、この時の私は知る由もなかった。
※第一章はここまでになります。
次回更新は明日です。
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