第四十二話:九条真琴という魔術師4
※前回からの続きです。
「千暁!?」
驚く琥珀をよそに、私は高まる魔力を受け入れながら意識を集中させる。
そして、身体の熱が収まった時。私の手には金色に輝く細身の剣が握られていた。今なら勝てる。なぜだかそう確信した。
「琥珀、結界解いてくれる?」
「だが……」
心配そうに私を見つめる琥珀に、私はにっと笑って見せた。
「私を信じてよ、相棒」
その言葉に、琥珀はしっかりと頷いてから結界を解いた。
私は剣の柄を力強く握り込み、九条との間合いを一気に詰める。
「っ!?」
異変を感じ取ったのだろう。九条はすぐさま炎を使って攻撃を仕掛けてくる。しかし、私は慌てることなく剣を一振りする。すると、九条の攻撃は、魔力は、跡形もなく忽然と"消え失せた"。
「き、消えた……だと?」
九条が呆然と呟く。そう。"消えた"のだ。
私が剣を振るったことにより、攻撃であり、魔力の塊でもあるそれは、跡形もなく消え失せた。"そこにあった事実"さえ消し飛んだのだ。
「くそっ!!」
九条は懲りずに無数の雷を放ってくるが、今の私には通用しない。それを剣で受け止め、消し飛ばす。そして、勢いをつけて九条に剣を突き立てた。
「っ!?」
喉元に突きつけられた剣先を見ながら、九条は絶句する。
しかし、やがて、諦めたように呟いた。
「……俺の負けだ。早くとどめを刺せ」
私は一つ息をつき、静かに剣を下ろす。それを見た九条は怪訝そうに顔を歪めた。
「なぜだ?なぜ殺さない?」
「あなたは盛大な勘違いをしてる。一緒に来て」
九条は初めは戸惑っていたようだが、問答無用の態度を貫く私に諦めて従うことにしたようだ。もちろん、刃向かったところで私には勝てないと、理解しているが故だろう。
向かった先はもちろん、兄貴が死んだあの場所。そこに魔術陣を展開し、私は九条に真実を視せた。
一部始終を見た九条は絶句し、立ち尽くしていた。
「私には、物や人に宿る記憶を読み解く力がある。今視たことは真実よ」
「今更そこを疑ってなどいない」
力なく答えた九条はその場で両膝を地面につけ、私に向かって頭を下げた。
「俺はとんだ勘違いをしていた。謝って許されることではないことは分かっている。だが、これまでの無礼を許して欲しい……それに、お前の兄貴は……っ」
震える声で彼がそこまでいった時、私は自然と九条の肩に手を置いていた。
「あなたは騙されていただけ。あなたのせいじゃない」
九条の瞳が大きく見開かれる。
「もちろん、あなたが今までやってきたことは許されることじゃない。その償いはしなくちゃならない」
いいながら、私は立ち上がる。
「その第一歩として、あなたにはこれから、私達がやることに付き合ってもらいたい」
そう言って手を差し出すと、泣きそうな顔を浮かべながら、九条は私の手を力強く握った。
九条が立ち上がるのを見ながら、そばにいた琥珀が呆れたようにいった。
「さすがはミスお人好しだな」
「そのお人好しにとことん付き合ってくれるっていったのは誰だったっけ?」
私がにやりと笑うと、琥珀も同じように笑みを浮かべて返してくれる。
「ところで……お前のその剣は……」
どこか恐る恐るといったように言葉を発した九条の視線を受けて、私は自分の左手を見る。手には金色の剣が握られていた。
「そういえば、これなに!?」
「いや、今更かいっ!!」
夕闇が訪れそうな静かな山の中で、琥珀の声が木霊した。
※ここで二人の対決は区切りとなります。
次回更新は明日の予定です。
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